国会審議の論点整理【衆議院】
    その一:経済政策、補正予算案

    ■経済政策

    ◆GDP(国内総生産)

    【1/8 枝野幸男(民主・維新・無所属クラブ)】

    枝野: 内閣府の計算によると、GDP(国内総生産)は民主党政権の3年3か月で5.7%増加(伸び率1.7%)。安倍政権は2年9か月で2.4%増加(伸び率0.9%)。家計消費は、民主党政権では東日本大震災の落ち込みがあったにもかかわらず4.9%増。安倍政権で0.0%減。多くの国民が感じている生活実感は実証的数字にも表れている。安倍政権が示す派手な数字と安倍総理の自分に都合の良い数字だけをならべる言葉にまどわされるのをやめよう。

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    <ドル換算で伸び悩むGDP>

    井坂:政府与党は名目経済指標の上昇をいい、野党は実質経済指標を指摘するので、いつまでも平行線だ。金融緩和すれば物価が上がり(名目上昇)、賃金が追い付かない(実質低下)のは当然だ。日本経済をドルで見ると別の面が見える。

    井坂:(パネル)日米独仏英の6年間の比較。日本以外の各国はドルでも伸びている。日本は明らかに下落している。

    安倍:ドルで給料をもらっている人はいない。名目円で判断するべきだ。為替変化の中で減少があっても気にする必要はない。

    ◆賃金

    【1/8 枝野幸男(民主・維新・無所属クラブ)】

    厚生労働大臣:第二次安倍政権発足時は99.0だった実質賃金は、2015年の7-9月期には95.1に下がっている。

    枝野:円安によって輸入物価が上がり、全体物価も上がった。賃金は上がって当然だが、物価との対比でみなければならな い。安倍政権発足3年で実質賃金(名目賃金を消費者物価指数で割った賃金。実際上の購買力に換算したときの賃金。)が大幅に下がっている。雇用数は非正規 しか増えていない。これは実体経済の悪化を表している。実質賃金が上昇し非正規から正規への移行が明確に出てこなければ好転とはいいがたい。

    安倍:倒産件数が民主党政権時よりも2割減少した。我々は働く場所を作っている。平均2%以上の賃上げを行っている。ゼ ロの人が働き始めれば平均賃金は下がっていく。安倍政権はゼロの人が働き始める状況を作った。その結果一人当たり平均賃金が減少した。基本給を示す所定内 給与は9か月連続増加。パートを除くと19か月連続プラス。パート自給は3年連続で増加。地方の求人倍率は高知県など7県において過去最高。

    枝野:都合の良い数字だけを出してきている。

    >>14年所定内給与に「減少ショック」、15年度所得増の期待下振れ
    >>実質賃金、5カ月ぶり減=給与総額は横ばい―15年11月

    【1/8 山井和則(民主・維新・無所属クラブ)】

    山井:実質賃金は、民主党政権−1.4%、安倍政権−3.7%。実質最低賃金の増加率は、民主党政権6.2%、安倍政権1.6%。実質賃金は安倍政権になって減少。現役世代はアベノミクスの恩恵を全く受けていない。

    安倍:雇用が増加する過程においてパートが増える。このとき一人当たり平均賃金が低くなる。例えば安倍家において、妻は働いていなかったが景気が良くなってきているからと働き始めた。妻25万円と私50万円で家の収入は75万円に増えるが、二人で割れば平均は下がる。75万円が正確な安倍家の収入だが2で割って平均はいくらだという考え方自体が経済実態を正確に表していることにはならない。平均値でいえば民主党政権時と安倍政権では同水準だ。

    【1/12 西村智奈美(民主・維新・無所属クラブ) 】

    西村:安倍総理はパート平均月収がどのくらいだと思っているか。女性が急に働き始め手取りで月に25万円得るとすれば企業は月35万程度払い時給1900円ほどの計算になる。そういう仕事はどこにあるか。

    安倍:妻が25万円といったのは総雇用者所得と実質賃金の関係を示すための、単なる例である。

    西村:例とはいえ男性で月収50万円得られる仕事はどこにあるか。安倍総理の感覚がずれている。

    ◆物価

    【1/8 枝野幸男(民主・維新・無所属クラブ)】

    総務大臣:コアの消費者物価指数:7月(0.0%)、8月(-0.1%)、9月(-0.1%)、10月(-0.1%)、11月(+0.1%)

    黒田総裁:日本銀行は消費者物価総合指数で2%の物価安定目標をもっている。しかしまだまだ0%近傍を動いている状況だ。

    枝野:2015年はマイナスまたはゼロ近傍を推移している状況でなぜ「もはやデフレではない」というのはおかしい。

    安倍:表はコアの数字(生鮮食品抜き)。近年は大幅に下落している。しかしコアコア指数(食料とエネルギー抜き)で見るとプラス0.8%とプラスでありデフレから脱却した状況にある。GDPデフレータ(国内総生産の実質的価値を表す物価指数)もプラスになり、名目GDPは28兆円プラスになっている。給与も連続2%超えで増えている。

    枝野:2013年からのコアCPIの上昇は急激な円安による輸入物価の高騰によるものだ。日銀総裁は、2013.3.11日参議院の議院運営委員会で所信を述べられたとき、物価安定目標に掲げる指標はコアコアではなくコアのCPIで見ると述べた。

    日銀総裁:物価安定目標は総合消費者物価指数で前年比2%。趨勢判断の場合はコアで見るのも重要、原油価格が大幅下落する場合はコアコアで見るという議論もある。総合指数は日本も欧米もほとんどゼロ。欧米とも、コアコアでは1%強い。総合的に見る必要がある。

    枝野:黒田日銀総裁は参議院の所信と異なることを言い都合の良い数字を引っ張り出している。

    ◆雇用

    【1/8 枝野幸男(民主・維新・無所属クラブ)】

    枝野:2012年、10-12月期、雇用総数は130万人近く増えている。その正規・非正規の内訳は?

    総務大臣:
    正規・非正規の内訳
    2012年、10-12月期 正規:3330万人 非正規:1843万人
    2015年、7-9期 正規:3329万人 非正規: 1972万人
    前年比 2012と2015の7-9月期
    正規:2万人増加 非正規:42万人増加

    枝野:昨年、非正規比率が4割を超えた。雇用増加の大部分が非正規だ。

    【1/13 水戸将史(民主・維新・無所属クラブ)】

    水戸:地方の経済状況は東京よりさらにきびしいのではないかという質問に対し、安倍総理は、7つの県では有効求人倍率が非常に高くなるなど地方の雇用情勢はバブル期を超えると答えた。人口動態をみると地方で人口が減少。労働力人口、求職者が減少した結果、有効求人倍率が高くなるのは当然だ。青森県の有効求人倍率は昨年秋、0.98倍と過去3年間で最高であるが、 少子高齢化、人口減少で求職者が減少している。分母が減った結果、有効求人倍率が高くなった。

    安倍:就業者の絶対数は2009.7−9〜2012.10−12の3万人減少、2012.10-12〜2015.7-9を見れば117万人増加。パイが縮小していても地方税収が6兆円増加している。つまり労働市場がよくなっているからだ。地方においても企業が最高収益を上げている。

    水戸:有効求人倍率上昇の原因は、人口減少や高齢化に伴う労働力人口減少であり、むしろ地域経済は縮小している。雇用情勢改善したとは言えない。青森の地方紙には「アベノミクスの効果は遠い」と書かれている。都合の良い数字ばかりでなく実態を見なければならない。

    水戸:2003年から続く「地域活性化策」は、地域の特性を踏まえた自治体提案の町おこし施策を各省庁が補助金や規制緩和で支援する仕組み。会計監査院は2005−2014年の10年間につき、「国が支援措置した計画中の3428目標のうち達成は35%、不明14%」と報告。計画のおよそ半数は未達。政策の実効性が上がっていない。

    石破:会計検査院の指摘を真摯に受け止める。地域再生計画の使い勝手が悪いうえ、自治体への周知徹底が不十分。自治体担当者にわかりやすく説明しなければならない。

    水戸:中央集権体制のまま人口減少対策をすすめるのではなく地方分権改革を進めるべきである。

    石破:国の補助金メニュー以外にも、自治体がやりたいものに使える交付金を準備した。これが地方分権だ。

    水戸:政府は、権限、財源は中央省庁に集中のまま地方に省庁移転をすすめようとしている。環境庁、文化庁は中央省庁から猛反発をうけ移転が持ち越された。担当大臣は「国会や省庁との対面業務が必要なので移転すると機能維持は困難」と後ろ向き。閣内不一致だ。

    石破:省庁間の調整や国会議員の根回しよりも、行政が現場に近い感覚を持つことが大事。

    水戸:上から目線の改革ではなく、地方に権限、財源、人を移し、地方分権、地域主権を率先してすすめてほしい。

    ◆法人税減税

    【1/6 穀田恵二(日本共産党)】

    穀田:安倍政権は大企業がもうければ国民も潤うという経済政策。大企業の経常利益は6割以上増加、史上最高の大儲けで内部留保300兆円突破。他方、国民の所得と消費は、実質で見れば3年前を下回ったまま回復していない。生活保護の受給者数は過去最高を更新し、ワーキングプアは1100万人を超えるなど、アベノミクスが深刻な格差拡大と貧困をもたらした。安倍政権は経団連の意向を受け税制改正大綱に「稼ぐ力のある企業等の税負担を軽減する」と明記し、大企業に対する優遇税制を拡大し、17年以降法人税率を20%台にしようとしている。しかも減税の財源にあてるため赤字企業や中堅企業への課税を強化しようするもの。赤字企業に増税し、それを財源として内部留保をため込んでいる大企業に減税などとんでもない。稼ぐ企業にこそ応分の負担をもとめるべきだ。

    安倍:格差が固定化しないよう最低賃金を3年連続で引き上げ、パートと正社員との均衡待遇を推進するなど取り組んだ。就業者数は110万人以上増加、有効求人倍率は高水準、パート時給は過去最高と雇用環境に大きな改善が見られた。生活保護世帯の増加ペースは鈍化している。

    穀田:H17 .4の消費税10%は、新たに4.5兆円、一世帯当たり4万円を国民におしつける大増税。消費税10%引き上げは低所得者ほど負担割合が高い逆進性がますますすすむ。そのうえ来年度は、年金給付引き下げ、入院給食費の負担増、福祉給付金の半減、診療報酬減額などの改悪をしようとしている。総務省や厚労省の調査でもすべての年齢層で社会保険料負担が増え、所得が少ない人ほど負担割合は増加している。社会保険料と消費税が二重三重に国民の家庭に負担を押し付け苦しめている。

    安倍:法人税改革は、企業が収益力を高めより積極的に賃上げや設備投資に取り組むよう促す観点から行うもの。我が国では一部企業に税負担が偏っているとの指摘もあることから、そうした状況を改善し広く負担を分かち合う構造としていくことも必要だ。消費税の増収分は全額社会保障に充てる。低所得者に対しては国民健康保険料等の保険料軽減の拡充等を講じている。10%引き上げにあたっては軽減税率の導入により、所得の低い人ほど負担が増えるという逆進性の緩和を図る。消費税収入は安定しており、年々増加する社会保障費の財源としてふさわしい。

    【1/8 枝野幸男(民主・維新・無所属クラブ)】

    麻生:企業収益が好調で内部留保が増えているわりに配当、賃金、設備投資が伸びていない。この状況で法人課税をより広く負担を分かち合う構造改革をすべきだ。稼ぐ力のある企業の税負担を軽減すると同時に収益力拡大にむけた設備投資、継続的な賃上げ体質への転換を促す。法人実効税率20%台の実現をうけて経済界は、事業環境の整備、投資拡大、賃金引上げへの取り組みを表明している。法人税減税により純益が増えれば、その分が賃金、配当、設備投資にまわしやすくなる。減税には財源確保が必要。課税ベースの拡大によって税収を確保する。

    枝野:最近3年間、大企業の利益は賃金や設備投資にはまわされず自社株買いなどの内部留保にまわされている。設備投資を促したいのならば設備投資減税をすべきではないか。

    麻生:この3年間、設備投資減税も賃上げ減税も実施したが、現実には企業が対応しないため労働分配率が下がっている。この問題についてこの1年間企業と対話を続けている。

    枝野:設備投資減税でも設備投資が増えないのに、法人税減税するのは方向性が逆である。

    ◆景気

    【1/8 柿沢未途(民主・維新・無所属クラブ)】

    柿沢:世論調査では8割が景気回復の実感がないと回答。大企業と富裕層に恩恵が集中し、下の方は置き去りにされている。

    安倍:各企業が空前の利益を上げている。給与も2年連続2%以上上昇、雇用は2割+10%増加、倒産件数が減少、有効求人倍率は青森、秋田、徳島、高知、福岡、熊本、沖縄などで過去最高になっている。地方税収も6兆円増加、最低賃金の3年連続引き上げ、パート賃金は過去22年で最高水準、非正規比率は低下。

    柿沢:国民の多くが景況感を感じることができない理由はなにか。

    安倍:今と過去を比較する必要があるが、過去には「景気回復を実感しているか」という質問をマスコミもしたことがなかった。景気を実感しにくいのは当然だ。

    柿沢:アベノミクスの成功シナリオは、金融の量的緩和を実行し物価上昇、円安、その結果賃金上昇、景気回復、というもの。しかし誤算は、1)円安にもかかわらず輸出数量が増えない。輸出が多いTOYOTAなどの大企業だけは潤う。中小零細企業は原材料を海外から輸入して国内市場に販売するから円安で収支が悪化する。中小零細企業は賃上げどころか人件費切り下げでしのいでいる。法人税減税の恩恵を受けるのは大企業のみ。

    安倍:H26国民生活基礎調査では62.4%が苦しいと回答している。消費税引き上げおよび年金をデフレスライドで下げた時の調査なのでそういう結果が出たのだ。国民生活に関する世論調査では、現状満足、不満65.6 →70.5、不安は33.4→28.5%と改善した。 2012年秋以降、為替が円安方向に推移し、国内設備投資を増やす国内回帰の動きもみられる。

    >>今の若者は幸せ? 20代の70.5%が現在の生活に「満足」と答える

    柿沢:TOYOTAのような輸出中心の大企業では賃上げ、ボーナス増がある。愛知県の中小企業アンケートでは冬のボーナス平均は326,500円、経団連加入企業の三分の一程度。しかも調査対象企業の三分の一は冬のボーナス支給なし。大企業と中小企業の格差が広がっている。

    甘利:官民対話で賃上げ要求、下請け改善要求をしている。規制緩和もやる。法人税をはじめとする企業が日本に立地しやすい環境を作る。大企業に要請を受け止めるよう促している。

    柿沢:大企業業績が上がっても経済のすそ野まで下りて行かない。株価上昇で1億円以上の資産家が1.7倍に増え、富裕層はますます富裕になる。平均的世帯収入はこの10年間下がり続け、2014年は528万円、10年間で51万円も下がった。庶民の生活実感は過去最高苦しい。トリクルダウンが起きていない。

    甘利:物価を上げて、それを追いかけるように賃金を上げる。徐々にそれが実現してきている。

    柿沢:物価上昇に賃金上昇が追い付いていないことを認めたことだ。物価上昇が下がったから実質賃金が上がっている。事業所5名以上の賃金指数は下がっている。その要因はボーナスが下がったこと。

    ◆消費税

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    井坂:来年4月の消費税10%を実施する前にやるべきことがある。前提は必要な政策にお金が足りない、無駄を削っても足りないから、最後の手段として国民にお願いするのが増税だ。しかし補正予算でも相変わらずバラマキ、無駄遣いが批判されている。総理はアベノミクスの果実として20.8兆円の税収増をあげているが、その半分近くにあたる9兆円は消費増税(5%→8%)による増収だ。一昨年、消費税が8%に増税され地域経済は大きなダメージを受けた。増税による税収増をバラマキ、また来年、お金が足りないからと10%に増税する。この悪循環はおかしい。

    安倍:増収21兆円のうち8兆円は消費増税による。13兆円は果実だ。消費増税による収入8兆円だって景気がよくなったから生まれたものだ。

    【1/13 宮本徹(日本共産党) 】

    宮本:来年4月の消費税増税後の一人当たり増税(負担)額は。

    麻生:機械的計算では、総所帯消費税負担額は、1世帯当たり46000円/一人当たり19000円。軽減税率導入なら一世帯当たり35000円/一人当たり14000円。

    宮本:一昨年8%に引き上げられて以来個人消費はずっと落ち込んでいる。内閣府の年末の発表には支出の改善に遅れと書かれている。増税したら暮らしに深刻な打撃。低所得者ほど逆進性がある。収入に占める税負担率は現行の8%と比べてどうか。

    麻生:二人以上世帯の年間消費税負担割合:年収200−250世帯では、現行負担割合6.4%、軽減税率なし7.2%、軽減税率あり7.4%。年収1500万円以上世帯では、収入に占める消費税割合が、現行2%、軽減税率なし2.5%、軽減税率あり2.4%になる。

    宮本:収入200万世帯では増税で収入の1%が消える。激痛だ。収入2000万世帯では新たな支出は0.4%程度。軽減税率を導入しても低所得者ほど税負担が増える。

    ◆低い労働生産性

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    井坂:アベノミクスのもと、日本は労働生産性でも伸び悩んでいる。昨年末のニュースによると、日本の労働生産性が実質−1.6%と5年ぶりに減少。OECD34か国中21位、先進7か国で最低、製造業の生産性は米国の約7割、非製造業は米国の5割にしかなっていない。飲食は特に低く米国の27%、卸小売業は米国の43%しか生産性がない。補正予算には「生産性革命2401億円」が計上されているが、それら四つの政策のどこが生産性UPにつながるのか。

    ○ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金〔1,021億円〕
    ○中小企業等の省エネ・生産性革命投資促進補助金〔442億円〕
    ○住宅省エネリノベーション促進事業〔100億円〕
    ○国・自治体・独法等のサイバーセキュリティ強化〔520億円〕

    林経済産業大臣:機械装置設備およびソフトウエアの導入も支援対象になっている。人材育成としてはOB人材を指導者として育成派遣。中小企業技術向上のための研修受講支援。

    井坂:私が事前に担当者に聞いた話では、単なる設備投資、省エネ設備投資補助金だった。日本経済の弱点であるサービス業の生産性向上に向けた政策はないのか。

    甘利:IT投資、好事例の横展開、トラック運送の荷主が協力して空荷を減らす等。昨年6.18、サービス業、製造業関係者300社を集めて官邸で好事例の発表会をやった。これを続ける。

    安倍:例えば旅館の中居さんの動きをどう短くするか、どういう配置がいいか、どう自動化するかなどを横展開する等。日本はサービス業の生産性が低いことを認識し、製造業で出ている成果をサービス業にも活かしていきたい。

    井坂:設備投資を政策で後押ししたのと同じぐらいストレートに、非設備、非IT、無形投資とよばれる形のない投資を正面から支援すべきだ。

    井坂:(パネル)IT投資は生産性向上に多少効果がある(左上図)。無形IT投資は仕事のやり方、人材育成、デザイン、ブランドづくり、知的財産への投資であり、これらを政策で正面から後押しするべきだ(左下図)。 林:補正予算案の「ものづくり・商業・サービス新展開支援補助金」でソフトウエア導入を支援。ブランド、知的財産等の関連経費補助。昨年「中小モノづくり高度化法」にデザイン関連を追加した。人材育成では、OB人材を指導者として派遣、研修受講支援。 それらは無形投資とは関係がない。いろいろやっているが不十分で結果がまったく出ていない。非IT、無形投資に正面から取り組んでほしい。

    井坂:諸外国は生産性が上がれば実質賃金が上がる。日本は生産性が上がっても非正規の問題があり実質賃金が上がらない。生産性向上と賃上げをセットでやるよう補助金を設定すべきだ。

    安倍:総雇用者所得の実質賃金は上がってきている。賃金を上げるかどうかは経営者の判断。これまでの仕組みで賃金が上がった経験を生かして生産性が上がれば賃金が上がるようにしたい。

    井坂:世界から見て高く買ってもらえる生産性を上げることが重要。名目賃金の上昇だけでは日本の強さにはならない。サービス業の生産性を集中してあげていってほしい。

    >>日本の生産性の動向2015年版

    ◆長時間労働規制

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    井坂:GDP600兆円、出生率1.8、介護離職ゼロはアベノミクスの目標(的)だ。その目標を射抜く手段(矢)は何か。秋の国会で私は、長時間労働規制が出生率1.8、会議離職ゼロに効果があると主張した。このグラフを見ると労働時間が短い国ほど生産性が高く、はっきりとした相関がある。長時間労働規制はGDP600兆円にも効く。なぜ長時間労働規制をしないか。

    安倍:多様で柔軟な働き方を進めることが新三本の的を射抜くことにつながる。一億総活躍社会プランに向けて長時間労働是正、テレワークやフレックスワークなど多様で柔軟な働き方改革の推進を盛り込んだ。

    井坂:流動化の前に外枠の規制が必要だ。正面から長時間労働を規制する法律を作るべきだ。

    ◆格差

    【1/8 柿沢未途(民主・維新・無所属クラブ)】

    柿沢:30代、40代、子育て世代で非正規雇用の年収が正規雇用の年収の半分になっている。働いても収入が低くて結婚も出産もできない。子供の貧困率は16.3%で先進国最低レベル、6人に一人。ひとり親世帯の54.6%が貧困世帯。教育への公的支出は先進国最低レベル。4年制大学への進学は年収400万円世帯の3割、2000万円以上の世帯は6割。教育資金の生前贈与を1500万まで非課税とする制度の利用は1兆円を超えて、持っているものが恩恵を受けている。親の収入格差が子供の教育格差になって格差の固定化、貧困の連鎖の悪循環が起きている。アベノミクスの3年間で進行し拡大している。

    安倍:アベノミクスが進めているマクロ政策は間違っていない。ひとり親家庭支援、児童扶養手当加算、無利子奨学金の貸与枠の拡大、保育士を目指す学生の返還免除などやっている。

    【1/13 長妻昭(民主・維新・無所属クラブ)】

    安倍:格差は固定化されず、人々の許容範囲であることが大切。ジニ係数はおおむね横ばい。相対的貧困率はゆるやかに上昇、高齢者増が影響している。生活の程度に関する質問で「中の中」と認識すると回答した人の割合は、H13は55.7%。安倍政権では56.5%。民主党政権3年間では55.1%。基本的に横ばいだ。

    長妻:実感と違う。「所得の格差が広がっているか」という問いに対し、
    朝日新聞調査(5月)で76%
    産経FNN調査(2月)で78%
    共同通信調査(2月)で77%
    毎日新聞調査(1月)で70%
    が「格差が広がっている」と回答。能力の発揮をはばむ格差の壁が希望を奪い経済成長も阻んでいる。
    教育格差の壁:年収400万以下の家庭の大学進学率3割、県別所得と大学進学率がリンク、生まれた県によって大学進学が決まるような状況。子供の6人に一人が貧困状態(生活保護世帯並み)。生活保護世帯の子供の4人に一人が大人になっても生活保護を抜けられない。日本は世界一教育自己負担が高い。能力と意欲があればだれでも大学に行ける社会を作らなければならない。
    就労格差の壁:正社員と非正規。男女の労働格差。労働時間は世界一長時間労働。同一労働同一賃金を取り入れるべきだ。
    年金格差の壁:年金の受給額に7倍も格差がある。女性の一人暮らしの45%が貧困、約半分が生活保護世帯並み。老後破産。格差拡大を放置して子供や若者をつぶしてどうして経済成長ができるか。人への投資なくして持続的経済成長はない。

    ■補正予算案

    ◆全体

    【1/6 岡田克也(民主・維新・無所属クラブ)】

    岡田:総理は経済最優先だと明言している。経済成長のための1億総活躍か。GDP600兆円達成のための担い手不足解消手段として希望出生率1.8、介護離職ゼロを掲げているように見える。経済成長は一人一人の幸福実現のための手段であって目的ではない。日本は日本の将来や生活に直結する、乗り越えなければならない多くの課題を抱えている。しかし安倍総理は国民に正直に説明することなく、本当の解決を先送りし、ただただばらまきの政治を行っている。

    岡田:1.9兆の税収上振れ分をアベノミクスの果実だから自由に使ってよいとばかりにまさしくばらまくものだ。今は円安株高もあって税収が増えているが、税収見通しは上振れも下振れもある。楽観的な見通しに立って財政健全化への取り組みが先送りされている。バラまき体質を見直し将来に備えて国債を思い切って減額すべきだ。

    安倍:補正予算案は1億総活躍社会の実現やTPP関連政策大綱の実現などのために必要性、緊急性の高い施策を実施するものでありばらまきとは考えていない。補正予算では財政健全化目標を堅持しているし、国債発行額の減額を2年連続で実施している。

    【1/6 松野頼久(民主・維新・無所属クラブ)】

    松野:H27年度補正予算は3兆3213億円、H28年度の本予算は一般会計総額が96兆7218億円、4年連続で過去最大を更新。両予算を合計すると100兆円規模の歳出になる。補正予算では税収の上振れ分と余剰金を合わせて4兆円強の余剰財源を計上している。 税収57兆台に対し政府の債務残高は1200兆、GDPの2.3倍と主要先進国中最悪水準、歴史的に見ても先の大戦末期を超える水準だ。今回の補正予算案ではせっかくの税収上振れ分を借金返済ではなく歳出に充当している。 OECD加盟国の中で、増税よりも国会公務員の人件費と補助金等の歳出削減に力を入れた国は財政再建に成功し、逆に、増税を先行した国は財政再建に失敗している。政府は、議員定数の削減、国家公務員の総人件費の削減などの歳出削減に手を付けず消費税を引き上げようとしている。諸外国の成功例とは反対の方向に向かっている。 自民党政策集には国会議員3割削減と明記されているが約束が果たされていない。安倍総裁は議員定数をいくつ削減するつもりか。

    安倍:第三者機関「衆議院選挙制度に関する調査会」で議論され、今月答申がだされる予定だ。各党各会派で十分議論し早期に結論を得たい。

    【1/3 大串博志(民主・維新・無所属クラブ)】

    大串:税収上振れ(増収)分を安定財源として6000億円の穴埋めに使うことはあるか。

    甘利:上振れ分を財政健全化に充てれば経済成長に寄与しない。一時的または長期的に補正予算として使うかどうかを諮問会議で議論する。

    麻生:上振れ分は下振れもあるので安定財源とは言えないが、その上振れ分をどう使うかは財政諮問会議で検討する。1年以上先の話なので今の段階で答えは言えない。

    安倍:連続で巨額の上振れが出て21兆円税収増になっている。8兆円は消費増税による。それ以外はアベノミクスの果実だ。その使い道は諮問会議で議論している。

    【1/3 緒方林太郎(民主・維新・無所属クラブ)】

    民主・維新・無所属クラブ 政府提案のH27補正予算2案の撤回と編成替えを求める動議

    項目問題点提案
    補正予算我が国は長年の自民党政権の放漫財政運営により大量の借金を抱えている。アベノミクスは日本銀行による財政ファイナンスに依存している。一度市場が逆回転を始めれば財政は破綻に向かう。 税収上振れ分は最大限国債発行にあてるべき。補正予算の歳出案から下記1〜4に当たる8008億円を削減し、国債発行額を同額削減する。
    1.年金生活者等支援臨時福祉給付金投票率の高い高齢者に限った一回きりの給付は選挙目当て。子育て世代への給付金を削減するなど、将来世代への支出を削減。 皆減(事業廃止、事業費ゼロ)
    2.TPP関連予算TPP関連条約を国会で議論も承認もしていない。削減
    3.保育介護等施設整備基金ニーズ把握ないまま数年先の施設整備に一挙に投資する必要はない。人材確保が課題なのになぜ箱モノに巨費を投じるか。皆減
    4.婚活、三世代同居関係支出婚活、同居のありかたに行政が口と金を出すのは価値観の押し付けだ。削減

    ◆年金生活者等への臨時給付金

    【1/6 岡田克也(民主・維新・無所属クラブ)】

    岡田:年金生活者等臨時給付金3600億円を1100人の高齢者に一人当たり3万円を配る目的は何か。困っているのは働く世代も同じだ。市町村民税非課税世帯を対象にするのであれば、働く世代と年金者を区別する理由はない。なぜ年金生活者に限ったのか。公明党が熱心に取り組んできた子育て世帯臨時特例給付金をなぜ廃止したのか。一人3万円、総額3600億円は参議院選挙直前の5,6月に配られる。国民の税金を使った選挙対策のばらまきは断固やめるべきだ。

    安倍:現役世代は賃上げの恩恵を受けるが高齢者にはそれがない。一昨年の総選挙で「経済を成長させていけば経済は上振れする。その果実は社会保障分野に投入する」と約束した。今回の給付金は今年前半の個人消費の下支えの観点や実務上の対応可能性をふまえ、年金生活者支援給付金の対応よりも幅広い方に対し一回限りの措置として支給するもの。ばらまきではない。選挙対策ではない。

    【1/8 枝野幸男(民主・維新・無所属クラブ)】

    枝野:消費税10%引き上げに合わせて、2017.4より年金生活者支援給付金(恒久的な制度)を導入することが決まっている。それを7か月前倒しするのなら話がわかる。しかし今回のは、給付対象者もその制度とは異なる方法で、1回限りばらまくもの。 厚生労働大臣(塩崎):今回のは今年前半の個人消費の下支えと、実務上の対応可能性を踏まえたもの。どうやって今年前半にお届けして消費を喚起するかを考えた結果、年金機構と市町村の手続きが可能な規模が住民税非課税世帯600万人であった。 自公民で考えた恒久的な措置とこれは異なる。

    枝野:現役子育て世代の中にも市町村税非課税世帯は多い。彼らがアベノミクスの恩恵を受けて収入が増えているとはいえない。市町村税非課税世帯に支払われていた子育て世帯臨時特例給付金をやめて、高齢者への給付金を行う。高齢者も後ろめたいだろう。高齢者にとって必要なのは恒久的な仕組みづくりだ。

    安倍:3万円給付も本質は同じだ。住民税非課税世帯への給付は簡易に実施できるということで対象が広がったにすぎない。マクロ政策、ミクロ政策からいってもこれは正しい政策だ。

    【1/8 山井和則(民主・維新・無所属クラブ)】

    山井:子育て世代の投票率は低い、高齢者の投票率は高い、だから選挙前の5月、6月に3600億円を投入。事務費だけでも200億円かかる。若い人から見ると自分たちが働いて収めた税金が選挙前のばらまき、選挙対策で使われる。これではもう税金を払うのが嫌だという声もある。

    【1/8 柿沢未途(民主・維新・無所属クラブ)】

    柿沢:収入が少なく貯蓄が多いのが高齢者世帯の特徴。高齢者は将来に不安があるから貯蓄をため込んでいる。医療や福祉の自己負担額に上限を設ける総合合算制度の方が高齢者の不安解消になる。3万円一発配布と総合合算制度の財源は同程度の4000億。3万円一発配るよりは総合合算をやった方がいい。

    安倍:給付付き税額控除、総合合算制度、軽減税率の中から選ぶことになっていて、結果、軽減税率を選んだ。

    ◆待機児童・保育士処遇

    【1/13 山尾志桜里(民主・維新・無所属クラブ)】

    山尾:待機児童の数は、2010-14年まで連続して減少したが、2015年、増加に転じた。総理は、増加の原因は、安倍政権発足以来、女性の就業者が90万人以上増えたからだと説明。しかし25〜44歳の働く女性の数の推移を見ると、2010年から2015年にかけてのこの六年間ほぼ横ばい。しかも、2014〜15年にかけては減っている。25歳から44歳というのは、大体、子供を保育園に預けているママの年齢層だが、そこは女性の就業者数はほとんど増減がない。総理は受け皿(施設)を二倍に増やすと言っているが、待機児童が増えた背景には保育士不足がある。保育士不足の最大の理由は、保育士になっても給料が安過ぎるから続けられないということ。保育士の平均給与は全産業平均は29万9600より九万円少ない月額20万9800円。上げてほしい。

    安倍:この補正予算また本予算等において、保育士の処遇改善、勤務環境の改善等(資格試験を年に二回にする、保育士を目指す学生に奨学金制度をつくる、再就職準備金をつくる)を行って いる。また、資料作成等の事務を簡略化して保育士が専門性の高いサービスに専念できるように、ICTの活用による業務の効率化を推進している。

    山尾:保育士の処遇改善の予算は2.8兆円の枠外にあり、これは削るかもしれないと言われている。

    安倍:我々は、消費税を引き上げたときに改善を行っているし、人事院勧告に従って保育士の待遇の改善を行っている。

    山尾:一回限り三万円、3600億円配って、子育て世帯臨時給付金600億円はやめる。主婦パート25万発言。景気がよくなったから働こうという発言(現実は生活苦だから働く)とか。働く女性が増えて待機児童も増えてうれしい悲鳴だ、という発言。やはり一般の女性、主婦、子育て世代の感覚と本当にずれまくっている。外交報告で、11月中旬にG20、APEC、ASEANなどを訪問し、この三本の矢について詳しく説明し各国首脳の理解と支持を得ましたと言っているが、新たな考えを打ち出すときには、海外より国内の理解を得ることを先行させてほしい。やはりしっかり臨時国会を開いて、国民の理解を得る努力をしてほしい。臨時国会を開かなかったことは、憲法を無視し、国民を軽視した行為だ。

    安倍:まさに枝葉末節な議論はもうやめた方がいいんだろう。

    ◆軽減税率(据え置き税率)

    【1/6 岡田克也(民主・維新・無所属クラブ)】

    岡田:外食を除く飲食料品及び定期購読の新聞の消費税を8%に据え置く「軽減税率、または据え置き税率」には1兆円の財源が必要となった。この財源確保のために「総合合算制度」の導入が見送られる。総合合算制度は、医療・介護・保育・障碍者支援などで所得に応じた自己負担額に上限を設けるという、所得の少ない人のためになくてはならない制度。高所得者ほど恩恵を受ける軽減税率のためになぜ、自公民が三党合意したこの意義ある総合合算制度の導入を断念するのか。1兆円の財源手当てのために、赤字国債か、年金・医療・介護のどこをどう削減するかが不明確。1兆円の財源をただちに明らかにする責任がある。

    安倍:三党合意を得て決定した総合合算制度は検討課題の一つであった。買い物の都度、痛税関の緩和を実感できることが重要であるとの判断で軽減税率制度の導入が決定された。総合合算制度の見送りにより生じる財源は軽減税率制度の導入の財源となる。消費税の軽減税率制度導入に必要な財源は、H28年度末までに法制上の措置を講じる。政府与党でしっかり検討する。

    【1/8 枝野幸男(民主・維新・無所属クラブ)】

    枝野:「据え置き税率」によって受ける恩恵

    財務省試算:
    年収200万未満所帯 約8千円
    年収1500万超所帯 約19000円

    高額所得者ほど多く買い物するから恩恵をうける。 1兆円財源のうち年収300万未満所帯のために使われるのは11%。年収500万円未満は全体の43%、5000億円は年収500万以上に恩恵。 これは低所得者対策ではない。「据え置き税率」は新聞の定期購読にも適用される。電力、ガス、灯油、ガソリン料金は据え置かれるか。

    麻生:新聞の購読料にかかる消費税負担は逆進的であることを総合勘案して新聞を適用対象とした。水道、電気、ガス料金等の消費税負担も逆進的であるが、それらは公定料金、認可料金であり、多くの市町村で低所得者向けに水道料金の軽減を行っている。

    枝野:水道は聞いていない。ガソリンはどうか、ガソリンは二重課税だ。新聞とガソリン、どちらが生活に必要か。若い人や低所得者は新聞を取る余裕もない。なぜ恣意的に新聞だけが据え置き対象となっているのか。

    【1/8 山井和則(民主・維新・無所属クラブ)】

    安倍:軽減税率を導入した場合、年収200未満の2人世帯については一日当たり10円程度、年間3600円。年収1500万円以上の世帯では14円、一年当たり5100円。2人以上世帯では12円、4300円程度。軽減税率を導入した場合、消費税の負担軽減額は高所得者ほど大きいが、収入に対する消費税負担の割合は、年収1500万円以上の世帯では0.1%減少、年収200万円未満の世帯では0.5%減少で、低所得者の消費税負担の割合を高所得者より大きくしてあげることができ、消費税の逆進性の緩和につながる。

    山井:高所得者は一人一日14円、低所得者は一人一日10円で痛税関の緩和するというが、そのために年間1兆円かかる。現場の店では大混乱し、レジの改修などで1000億円予算が組まれている。これで痛税関の緩和になるか。

    安倍:1000円のものを買うとき1080円になるか1100円になるかは考えるから、関係はある。

    【1/8 柿沢未途(民主・維新・無所属クラブ)】

    (パネル)軽減税率の導入を懸念するアカデミア有志による声明。

    柿沢:税、財政、経済の専門家の9割が軽減税率は望ましくないと述べている。「軽減税率は理屈ならしない方がいい」「税制を政権維持の玩具にしてはならない」「軽減税率よりも給付性税額控除で対象者を絞って的確にやった方がいい」。

    麻生:軽減税率への賛否はいろいろある。軽減税率は国際標準だ。対象品目を幅広くすることは低所得者対策。逆進性緩和、景気の腰折れを防ぐ。

    【1/12 玉木雄一郎(民主・維新・無所属クラブ)】

    玉木:TV番組で安倍総理は「軽減税率の財源1兆円のために社会保障費を切ることはない」と述べた。消費税を10%上げる際に2.8兆円の社会保障拡充を実施する予定だ。軽減税率で社会保障を切らない、というのは、2.8兆円からということか、それとも社会保障全体からということか。

    安倍:4000億円は総合合算制度を実施しないことで捻出できる。6000億円のねん出が問題だ。一方、社会保障の合理化は必要だ。社会保障は聖域ではないので、効率化をはかる。

    玉木:先日のTVでの発言は、社会保障にはビタ一文も触れないと受け取れる内容だった。

    安倍:社会保障の削減、適正化、合理化は軽減税率のいかんにかかわらずやらなければならない。安倍政権3年間で21兆円税収が増えた。安定財源をどうするか、税収増をどうするか(税収上振れ分を軽減税率の安定財源として充てる)は専門家とともに議論を続ける。

    玉木:日本の借金1000兆円、利払いが10兆円(防衛費の2倍)、その後始末を優先すべきだ。

    玉木:軽減税率の問題は、1兆円の財源を使ってどの世帯を支援するかだ。軽減税率の11%が年収300万未満の世帯に、軽減税率の32%が年収300〜500万未満の世帯に、軽減税率の42%が年収500〜1000万未満の世帯に使われる。年収500〜1000万円の人、本来低所得者対策対象となるべきでない人のために使われるのは、ちょうど財源が決まっていない6000億円分に相当する。民主党が主張している給付付き税額控除は、真に支援を必要とする人に絞って支援を及ぼすことができより効率的で効果的だ。合理化と称して社会保障の財源を削ってまで、所得の高い人を支援するような制度は問題だ。支援を低所得者に限定する方法を考えるべきだ。

    安倍:政府は財政健全化をしっかり行っている。

    玉木:補正予算によってプライマリーバランスを悪化させている。財政再建に対する認識が薄すぎる。低所得者に限定する方法を考えるべきだ。

    【1/12 西村智奈美(民主・維新・無所属クラブ) 】

    西村:安倍総理は、安定財源として税収上振れ分を見込むという答弁をたびたびしている。麻生財務大臣は、税収は経済状況によって上振れも下振れもあるので安定財源とはいえない、と答弁している。閣内不一致だ。統一見解を求める。

    安倍:税収は3年間ずっと上振れている。どう解釈するかは軽財政諮問会議で議論する。財務大臣は財務省の考えを述べている。ひきつづき議論をしていく。

    西村:給付付き税額控除の復活を望む。

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    井坂:年収350万円未満の世帯の年間の新聞代は平均1万3千円。新聞は月3000円ぐらいなので、四軒に一軒しか新聞を買っていない。新聞の軽減税率がなぜ低所得者対策か。

    麻生:新聞は情報媒体として全国均一、幅広い層に読まれている。購読料にかかる消費税負担は逆進的なので軽減税率を適用する。

    井坂:低所得世帯は新聞を購読することすらできていない。

    【1/13 長妻昭(民主・維新・無所属クラブ)】

    長妻:軽減税率の財源について統一見解を。

    安倍:軽減税率の導入に必要な財源は、安定的恒久財源を確保する観点から、H28末までに法制上の措置を講じる。その際、税収の上振れ分は安定的恒久財源とはいえないが、経済財政諮問会議において議論していく。現時点では具体的措置内容はないが、与党とも相談しつつ歳入歳出をしっかり検討する。2.8兆円程度の社会保障の充実に必要な財源は確保する。

    長妻:6000億円の財源として社会保障の年金、医療が削られる心配がある。選挙の後で削ると言われても困る。参議院選挙前までに財源のめどを出すべきだ。財源のめどはあるか。

    安倍:しっかり検討する。

    【1/13 足立康史(おおさか維新の会)】

    足立:秋に臨時国会を開かずに、(その間)TPPや韓国との交渉を行ったことに敬意を表する。民主党のやり方(プラカード、暴力)は55年体制だ。おおさか維新の会と与党で新しい政治を作りたい。

    安倍:建設的な意見だ。

    足立:民主党は三党合意で軽減税率、総合合算制度等を検討することについて同意していた。政権がその三つを検討して一つに決めたのだから従うべきだ。軽減税率が導入されているヨーロッパ諸国は高税率だ。日本が軽減税率をやろうとしているのは、高負担高税率にするための布石ではないか。

    石井:10%引き上げと、導入時の軽減税率は三党合意に基づくものだ。それ以上の引き上げは承知していない。

    足立:大阪維新の会は軽減税率に断固反対だ。高税率への扉を開く制度である。

    【1/13 重徳和彦(改革結集の会)】

    重徳:外食は軽減税率の対象外のため、外食産業はテイクアウト、出前配達に力を入れるようになる。消費行動への影響、経済活動への影響、自由競争に相当ゆがみが出てくる。

    麻生:消費税負担の逆進性が問題となっているが、外食については逆進的とはいえない。諸外国でも外食を軽減税率の対象外にしている。

    重徳:身近なところでグレーな事例が増える。ショッピングセンターのフードコートで食べるのはテイクアウトか外食か。線引きがあいまいで損得が出てくる。

    麻生:運用にあたって混乱が生じないように準備する。個別に判断していく。

    >>軽減税率導入 社会保障や中小業者の犠牲の上に

    【1/13 大串博志(民主・維新・無所属クラブ)】

    大串:当初の社会保障税一体改革案には、総合合算制度4000万円が充実の中身として入っていた。総合合算制度をやめることは社会保障の削減だ。消費増税に伴う約束の社会保障2.8兆円には手を付けないと言っているが、通常の社会保障予算30兆円を削減することがあるか。

    安倍:社会保障費の伸びを毎年5000億円以内におさえる努力をする。社会保障費も聖域ではない(から合理化の対象とする)。

    大串:「今のところ」社会保障費の伸びを5000億に抑えると言ったが、後になって5000億円以上抑える場合もありうるのか。

    安倍:(約10分間のグダグダ答弁。しかし質問に対する回答なし。) 

    大串:2.8兆の社会保障の充実の内容を具体的に示してほしい。

    塩崎:今後の予算編成過程で決定する。その内容を今答えることは難しい。

    安倍:(読み上げ不要のやじの中、資料棒読み)

    大串:総理は2.8兆の約束分は社会保障でやると言っているが、いつ、何を、いくらでやるのかが決まっていないのでは話にならない。

    ◆一億総活躍社会

    【1/6 岡田克也(民主・維新・無所属クラブ)】

    岡田:1億総活躍社会の具体策として、認可保育所等の整備(人員)を10万人分、介護施設等の整備(人員)を12万人分、前倒し上乗せが決定、その大部分が補正予算案に計上されている。問題は人手が足りるかどうか。保育、介護の人手不足が深刻、最大の原因は低賃金。「保育、介護の仕事は好きだが低賃金で結婚もできない」との悲鳴が上がっている。しかし補正予算案、来年度予算案にはこの問題に対する根本的対策がない。安倍総理には保育・介護の現場で働く230万人の処遇改善を実現する覚悟があるか。 保育・介護の施設整備のための予算は、安心子供基金に501億円、都道府県の地域医療介護総合確保基金に921億円という極めて大きい金額を積み増すことになっている。介護施設12万人分の整備は2020年代初頭が目標で、5年以上先だ。5年先にどのような介護施設が各都道府県にどの程度が必要かについて現時点で把握できているとは考えられない。具体的ニーズの把握がないままのばらまき・無駄遣いに終わることを強く懸念する。5年以上先の施設整備予算をなぜ、補正予算として計上し、一挙に各都道府県に配分する要があるのか。

    安倍:
    ◎保育の人材確保策
    ・保育士を目指す学生に返済を免除する奨学金制度の拡充
    ・いったん仕事を離れた人が再び仕事に就く場合の再就職準備金の創設
    ・保育士の勤務環境改善に取り組む事業者に対し保育補助者の雇用支援の仕組みの創設
    ◎介護の人材確保策
    ・介護福祉士を目指す学生に返済を免除する奨学金制度の拡充
    ・いったん仕事を離れた人が再び仕事に就く場合の再就職準備金の創設
    ・介護ロボットの活用促進
    ・ICTを活用した生産性向上の推進
    ◎保育
    ・介護現場で働いている人の処遇改善
    ・保育人材については、H27当初予算で、3%相当の処遇改善を実施した。
    ・介護人材については、H27度の介護報酬改定において一人当たり月額12000円相当の処遇改善加算拡充を図った。

    【1/8 大串博志(民主・維新・無所属クラブ)】

    大串: 1億総活躍の1兆1600億円の内訳をみると、3万円の低所得高齢者向け給付金を除けば、8割が既存予算の焼き直し。つまり去年、今年、来年の本予算に入っているものと同じものが補正で予算付けされている。 1億総活躍のどこが新しいのか。

    加藤一億総活躍担当大臣:従来の政策に加え、保育補助者の雇い入れ支援、潜在保育士の就業支援、子供の貧困対策のための地方自治体を通じた支援、都市部における国有地の活用による介護施設の整備、介護人材の確保などを盛り込んでいる。

    安倍:GDP600兆円を達成するためには皆が活躍する社会を作らなければならない。女性、高齢者、障碍者、難病患者も働ける社会を作る。

    ◆羽ばたく女性支援人材バンク事業

    【1/12 玉木雄一郎(民主・維新・無所属クラブ)】

    玉木:「羽ばたく女性支援人材バンク事業」は女性の活躍を応援する制度。国の審議会等の女性委員をデータベース化し民間企業の女性役員登用に活用しようとするもの。2015年4月からの運用だが現時点でマッチング実績ゼロ。ホームページの月間アクセス500件。看板倒れだ。このような予算の使い方をしていたのでは一億総活躍も一億総ばらまきになる。

    ◆三世帯同居

    【1/12 玉木雄一郎(民主・維新・無所属クラブ)】

    玉木:補正予算で計上されている事業で補正予算に組み込まれた「三世代の同居に対応した新築住宅取得促進支援事業」は、三世代同居を補助の要件としていない。なぜか。

    石井:この事業は地域の工務店と連携し三世代同居対応木造住宅建設を建設する場合に助成するもの。対象は、キッチン、浴室、トイレ、玄関のいずれか2つ以上が複数となる工事。どういう人が居住するかを確認して実施するものではない(三世代かどうかは関係ない)。

    玉木:三世代同居を要件にしていない。要件は玄関台所浴室トイレのうち2つが2か所以上、つまり豪華な住宅を作れば補助が受けられる。しかも木造に限定。なぜ木造だと出生率が上がって鉄筋だと上がらないのか。これは子育て支援に名を借りた豪華住宅建築支援、高所得者にお金が流れていく高所得者支援だ。要件、運用の見直し、または補正予算から外すなどの見直しを行ってほしい。

    【1/12 西村智奈美(民主・維新・無所属クラブ)】

    西村:三世代同居を進めれば出生率は上がるか。その論拠はなにか。

    加藤一億総活躍担当大臣:内閣府調査で、理想家族は祖父母と近居(3割が希望)・同居(2割が希望)であった。

    西村:三世代同居を希望する人が2割いるから、というのは根拠としてあいまいだ。伝統的家族について、夫方の親と同居すると出生率高まるが、妻方の親と同居すると出生率は下がるという資料もある。三世代同居で出生率が下がることもある。

    加藤:三世代同居を勧めるのではなく、同居を希望する人がその夢を実現できる状況を作る政策である。

    西村:内閣府の資料には、三世代同居が子育てを支援し、介護費用も安くできると書かれている。嫁や妻が家事・介護・育児に縛られていた時代に戻すものだ。同居世帯ほど介護離職率が高いというデータもある。三世帯同居支援には反対だ。

    >>国交省、2016年度当初予算案でも三世代同居対応の支援を強化

    ◆婚活

    【1/12 玉木雄一郎(民主・維新・無所属クラブ)】

    玉木:H25から「地域少子化対策重点推進交付金」婚活事業に対する補助が実施されている。H28年の概算要求は25億円だったが、「秋のレビュー」で河野行革大臣は「全額補助は見直すべき」と指摘し、H28年度の当初予算案は5億円まで減少した。ところがH27 補正で25億復活し、H27と28を足すと30億となり、概算要求よりも増えている。まったく行革が進んでいない。

    河野:レビューで少子化対策を減らせといったのではない。効果が出ているものに集中する。H28の当初予算で補助率は下げられている。

    玉木:H28当初予算は補助率を下げているが補正予算はレビューに反して10分の10のままで25億円。まったく行政改革が進んでいない。

    ◆オリンピック予算

    【1/12 玉木雄一郎(民主・維新・無所属クラブ)】

    玉木:昨年4月、2020年東京オリンピック・パラリンピック(以下、オリ・パラ)の経費について、組織委員会の森喜朗会長は、最終的に2兆円を超すかもと述べた。昨年12月、森会長は、1兆8000億円となり当初見込み(3013億円)の6倍になるかもと報道された。立候補ファイルには、大会組織委員会が資金不足の場合は東京都が補てん、東京都が補てんしきれない場合は日本国政府が補てんすると書かれている。現時点で、オリ・パラにかかる総経費をどのぐらいと見積もっているか。

    遠藤:2020年オリ・パラについては、現在、大会組織委員会が業務洗い出しをしている最中であり、最終的な総経費については、組織委員会でも正確に把握していないし政府も把握していない。

    玉木:立候補ファイルには「大会組織委員会は全体予算を月単位で厳しく監視する」と書かれている。月次監視をしているのになぜわからないのか。国民負担になる可能性があるのになぜ担当大臣が把握していないのか。H27補正予算、H28当初予算にオリ・パラ関連予算は総額いくら入っているか。

    遠藤:H27補正予算にはオリ・パラ予算は計上されていない。H28予算は省庁と調整中。

    玉木:概算要求のときに各省庁がオリ・パラ予算を要求していた。政府案も決定して国会審議が始まったというのに、オリ・パラ関連予算がいくらになるかオリンピック担当大臣も財務大臣も知らないのか(麻生財務大臣:知らない)。予算の膨張を招く。ロンドンオリンピック時のイギリス政府に習い、オリンピック・デリバリー・オーソリティを作って、予算の総額管理、プロセス管理を徹底する仕組みを作ってほしい。

    >>森氏、五輪は「2兆円超すかも」
    >>五輪・パラリンピックに「3兆円は必要」 都知事が言及
    >>東京オリンピックの運営費、当初見込みの6倍で財源1兆円不足 「民間なら"クビ"レベル」怒りの声続々



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