国会審議の論点整理【衆議院】
    その二 制度改革、人脈・金脈、TPP協定

    ■制度改革

    ◆年金運用

    【1/8 山井和則(民主・維新・無所属クラブ)】

    山井:この4日連続、株価が下落(1/8時点)。昨年7月から9月に7.9兆円という過去最高の年金積立金運用損が出たが、今の4日間の株価下落で、約4兆円くらいの年金が運用損になっている可能性がある。

    安倍:短期的なもの(株価)を見て、日本経済の実態に当てはめるのは間違いだ。2015年度の第2.4四半期の運用状況は、収益率はマイナス約5.6パーセント、収益額は約マイナス7.9兆円となった。その要因は、中国の景気減速懸念などによる、短期的な内外株式市場の悪化や円高によるもの。この時期のマイナスが大きいことは事実だが、年金積立金の運用は、長期的な観点から、安定、安全かつ効率的な運用を行っていくことが重要だ。

    山井: 1日あたり1兆円の運用損を小さいこと(短期的)というのか。年金積立金を10兆円も株に投資していけばもちろん株は上がる。これを官製相場という。暴落リスクを負う。昨年の10月から低格付債、ジャンク債、ハイリスクハイリターンの、低格付債のリスクの高いものに、年金積立金を投資することになった。国民が知らないあいだにギリシャ国債、アルゼンチン国債、中国国債などハイリスクハイリターンなものに、年金を投資するのは問題だ。

    安倍:そんな細かいことばっかり。

    塩崎:GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が決めた分散投資だ。平成27年11月30日時点でGPIFがギリシャ国債での運用をしていない旨を明らかにした。GPIFが適切なリスク管理のもとで運用をしていると理解している。

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    井坂:日経平均は6日連続で1800円も下落。この1週間で年金積立金が5兆円目減りしたおそれがある。総理は安倍政権になって年金積立金が33兆円も増えたというが、それは国債で手堅く年金運用していた時期の含み益であり、株式運用割合を増やした2015年1月以降は、2.4兆円、負け越し、年金が減っている。 塩崎厚生労働大臣:年金積立金運用は株式などへの分散投資をすすめる厚生年金保険法に基づくもの。市場の影響による一時的な損益のブレが大きくなったことは確かだが、長期的に見れば年金目減りのリスクは少なくなった。

    安倍:短期間だけ見てはだめ、長いスパンで見ることが大切だ。デフレ脱却すると国内債券だけで年金給付を確保することが困難になる。

    井坂:国債運用していたころは勝ち越し、株式運用に変えたのち負け越し、は事実だ。

    ◆選挙制度

    【1/6 穀田恵二(日本共産党)】

    穀田:2012年の総選挙で自民党は全有権者の17%の支持で290議席を獲得した。これが正当な代表といえるか。国会の議席と民意のかい離を改めるべく、国民の代表の選び方について国民的議論をすべきだ。国民の民意を反映しない現行小選挙区制は廃止すべきだ。企業団体献金の全面禁止、政党助成金の廃止を求める。

    安倍:選挙制度は各党各会派でしっかり議論すべきもの。献金の在り方は長年にわたり種々の改革が行われてきた。

    【1/13 長妻昭(民主・維新・無所属クラブ)】

    長妻:株式会社にフルタイム勤務であっても経営者の方針(厚生年金は年金・医療とも事業主が半額負担、国民年金は事業主負担なし)で国民年金に入っている人がいる。その実態は。

    塩崎厚生労働大臣:H26国民年金被保険者実態調査で、1805万人の就業者のうち200万人ほどが、厚生年金に入るべきところ国民年金に入っていると見込まれる。

    長妻:国民年金は個人の保険料負担が大きい。200万人のうち6割は40歳未満。老後に無年金、低年金になる恐れがある。緊急対策宣言し注意喚起し、一気に200万人を厚生年金に入れる必要がある。

    塩崎:厚生年金適用の可能性のある79万事業所に日本年金機構から注意喚起する。

    長妻:従来通りのペースではその作業に17年かかる。国保は社保より負担が大きい。国保保険料未納による差し押さえが25万件、2000年から6倍に増えた。25万の差し押さえの中に、本来社保で負担軽減できる人も含まれる、至急調査が必要だ。

    安倍:国保の保険料滞納者の就業状況を確認するなど工夫するよう担当大臣に検討させる。国保の保険料未納による差し押さえを行うもののうち、どの程度が健康保険未加入かを担当大臣に検討させる。

    長妻:人・モノ・カネをかけて短期間で実行してほしい。

    塩崎:手間がかかる。手紙を出して注意喚起、日本年金機構が訪問など行う。

    長妻:その方法では17年かかる。

    安倍:そう簡単には解決しない。

    ◆議員定数削減

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    井坂:増税の前にやるべきことがある。来年の消費増税より前に議員定数の大幅削減を実施してほしい。

    安倍:定数是正は第三者機関で議論されており、各党各会派とも議論し早期に結論を出したい。消費増税は約束通り実施する。

    ◆公務員制度改革

    【1/12 井坂信彦(民主・維新・無所属クラブ)】

    井坂:人事院勧告制度で人事院が公務員の賃金を勧告する。人事院勧告は国の財政赤字とは関係なく、公務員給与を民間給与にぴったり合わせるという制度だ。しかし民間で残業代や各種手当てを合算した金額を公務員の基本給としている。公務員側に手当てをのせて比べたら、公務員給与の方が圧倒的に高い。

    官民の給与比較には3つの不公平がある(パネル)。

    その一:黒字と赤字。
    人事院勧告が対象にしているのは従業員50人以上の大企業で、存続しているからにはもちろん黒字企業だ。一方、小規模企業(従業員50人未満)の7割は赤字企業。人事院勧告は黒字企業と公務員組織を比較し、黒字企業にあわせた賃金を公務員に出している(公務員組織は常時赤字にもかかわらず)。国の財政が赤字の間は、赤字企業の平均給与と官民比較してのよいのではないか。

    その二:係長の数が違いすぎる。

    井坂:国家公務員は、係長クラスが8万人、平社員クラスが8900人。係長だらけの霞が関。部下なしの係長も多い。見るからにおかしな組織だ。人事院は、官民の係長同士を同じ給与にしている。これが公務員の給与を押し上げる原因になっている。

    その三:事業所規模の違い。
    賃金比較対象の民間側は一事業所50人以上。役所の方は一事業者がほんの数人が多い。役所は小規模、比較対象の民間は大規模。この両者に同じ給料を払うのは不公平だ。

    社会一般の情勢、国の危機的財政状況も考慮すべきだ。一昨年増税、去年と今公務員年給与UP、また来年増税、というのは理解されない。ドイツのように経済、財政状況を考慮するとすべきではないか。政府の公務員改革に対する姿勢が問われる。

    河野:人事院勧告は第三者機関であり、調査比較の方法は人事院が独自に決定する。行政府からは何も言えない。

    井坂:国会での議論を反映して人事院が制度を決定している。国会で議論することが唯一の方法だ。

    河野:今日の井坂氏の意見に対して人事院が何か考えるかもしれない。行政府からは何も言えない。いずれ全体的な構造改革は必要だろう。

    【1/13 足立康史(おおさか維新の会)】

    足立:人事院は、民間企業のうち規模の大きい方1%の事業所(事業所規模50人以上)を母集団としてサンプリング調査をし、公務員給与をそれにあわせよう(民間準拠)としている。今回の給与法は2000億円を超える税金を使って公務員に年末ボーナスを配るもの。認められない。

    >>国家公務員の給与など引き上げ 改正給与法が成立

    ■人脈・金脈

    ◆ワタミ会長の自民党公認

    【1/8 山井和則(民主・維新・無所属クラブ)】

    山井:自民党は7月の参議院比例区候補としてワタミの会長、渡邉美樹氏を擁立すると聞いている。渡辺会長(2008年社長就任時)に関しては、居酒屋「和民」で働いていた女性従業員が入社2か月後に過労死自殺した件で、労働局はH12.2.14ワタミフードサービスにおける業務上労災死を決定した。月140時間以上の時間外労働、労働安全衛生法違反、常態化した長時間深夜労働、短い休憩時間、閉店後の拘束、休日出勤、強制的ボランティア活動、早朝研修、社訓の暗記、レポート書き、残業代未払い・・。入社2か月でたった二日間しか休みがなく、疲労困憊し自ら命を絶った。このような事件を起こした人を党の公認とするのはおかしい。ワタミは70件も労働問題の是正勧告、指導を受けている。なぜ安倍総理はブラック企業の批判を受けている人を党の公認にしたのか。ブラック企業が栄える仕組みを総理は作りたいのか。

    安倍:個別の事案については回答を控える。議員については職責をしっかり果たしてほしい。政府は過労死や労働問題に対する対応の強化を図り企業の監視指導に努めている。

    山井:政府は今回、労働基準法改正(改悪)法案、残業代ゼロ法案を提出し成立させようとしている。残業代を出さずに長時間労働を可能とし過労死が増える法案だ。裁量労働制は撤回すべきだ。

    塩崎:休暇の義務づけ、割増賃金の中小企業へのあてはめ、裁量労働制、高度プロフェッショナル制度の創設は長時間労働を防ぐための新しい規制など、労働者にとってプラスになるものだ。

    山井:過労死遺族が労働基準法の改悪をやめるよう要望している。

    >>ワタミ過労死裁判 全国津々浦々の店舗で労基法破り
    >>労働基準法等の一部を改正する法律案

    ◆就学支援金の不正受給問題

    【1/12 大西健介(民主・維新・無所属クラブ)】

    大西:東京地検特捜部は12/8、三重県内の株式会社が運営する「ウィッツ青山学園高校」を詐欺容疑で捜索。この高校は2005年に教育特区制度を利用して開校。通信制生徒約1200人、全国40以上のサポート校をもつ。サポート校の一つである四谷キャンパスはワンルームマンションの一室で高校の実態をなしていない。学生は、年2回学校前で写真をとれば卒業資格がとれる。紹介者には紹介料。学生一人当たり最大30万円の就学支援金が国から支払われる。ウィッツは受給資格のない高卒者等を勧誘して入学させ、国から支援金を受給していた。 馳文科大臣:捜査と並行して本制度のあり方について議論する必要がある。年度内に方向性をとりまとめる。

    大西:ウィッツ青山学院の創立者、森本一氏は、前文科大臣下村博文氏に政治献金を行い、後援会組織「博友会」の会長でもある。ウィッツの教育特区の認定時、下村氏は文科省の政務官であり、教育特区の認定に同意を与える立場にあった。これは「あっせん利得処罰法(公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律)」に抵触するのではないか。

    安倍:特定の事件についてのコメントは控える。

    >>就学支援金不正受給校の創立者/下村前文科相と親密/後援会長・会社から献金 >>「就学支援金」不正受給か 詐欺容疑で三重の高校など捜索 東京地検特捜部

    ■TPP協定

    ◆公約違反

    【1/6 岡田克也(民主・維新・無所属クラブ)】

    岡田:TPP協定交渉の大筋合意を受け関連予算3403億円も計上されている。協定交渉の具体的内容について臨時国会も開催されず、政府はほとんど説明していない。TPP協定の是非が国会で議論されないまま国会承認を前提とした補正予算が先行することに強い違和感を覚える。前例がない。

    安倍:昨年11月に総合的なTPP関連政策大綱をとりまとめ緊急に実施すべき対策について補正予算に計上した。これまでにも国際約束の国会審議に先立って関連予算を計上し国会で審議された例はある。TPPは署名後速やかに国会に提出し、十分審議してほしい。

    岡田:「はたして農業が続けられるのか・・・」不安を訴える農業者の声が多い。2012年の衆議院選挙で自民党の多くはTPP絶対反対と叫び、自民党は「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」TPP交渉参加反対とポスターを全国にはった。全国の農業者は公約違反と不誠実さに怒っている。自民党総裁として国民に謝罪すべきだ。

    >>自民党ポスター「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」の結果

    安倍:「聖域なき関税撤廃は認めない」が交渉参加の前提であった。交渉の結果、コメなどの重要品目については関税撤廃の例外を確保した。牛肉等の輸入が急増した場合は緊急輸入制限ができる政府ガード措置を設けることも認められた。日本が交渉を積極的にリードすることで国益にかなう最善の結果を得ることができた。その結果、自民党がTPP交渉参加に先立って掲げた国民との約束はしっかり守ることができた。

    【1/12 福島伸享(民主・維新・無所属クラブ)】

    <2012年12月の選挙公約違反>

    日本農業新聞のアンケート(1月4日報道)。
    TPP交渉の大筋合意で政府は重要品目の再生産を確保する国会決議を守ったと説明しているがどう思うか。⇒ 91.6%、守られていない
    TPPで農業に影響が出ると思うか。⇒ 影響がある97%。
    農業政策 評価7%、評価しない91%

    福島:9割以上が公約違反と考え、農業政策を評価していない。

    安倍:「聖域なき関税撤廃を前提としない限り交渉に参加しない」の公約を守ったと思っている。

    福島:関税がないなら交渉の意味がない。関税があるから当然交渉するわけでその公約は空論だ。先の選挙で農業従事者は、自民党のポスター「ウソつかない。TPP断固反対。ブレない。」を見て、自民党がTPPに反対すると信じて自民党に投票した。今回のTPP大筋合意はこの公約違反だ。

    <国会決議違反>

    福島:2013.4衆議院の農業水産委員会で「米、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物等の農林水産物重要5品目について、ひきつづき再生産可能となるよう除外または再協議の対象とすること。それが確保できないと判断した場合は、脱退も辞さない。」と決議した。今回の合意はこの国会決議違反だ。森山大臣は2013、JAグループ鹿児島の新聞に「安倍総理の前のめりの感は否めない、重要5品目は除外または再協議の対象として戦う。」と書いている。

    甘利:我々が協議に入るときにはすべて関税撤廃の方向であった。しかし強い交渉をして関税を勝ち取った。5品目について精一杯関税を守る等いろいろな手当てを講じた。最終判断は国会にゆだねる。

    福島:与党の議員は批准のときに反対するか。

    森山:批准に際しては改めて議論があるだろう。

    福島:TPPを日本が批准するかどうかは全くわからないということか。

    森山:今回の大筋合意について与党は党内手続きを経て結論を出しているので、それにそった判断がされるだろう。

    【1/13 畠山和也(日本共産党)】

    畠山:政府はTPPが決まったかのようにしているが、まだ最終文書サイン、国会批准もまだだ。米国でも反対や慎重の声が出ている。農家からはTPPへの不安とともに安倍政権の農政に対する不満の声。1/4日本農業新聞、JA組合長へのアンケート結果で、TPP国会決議を守れていないと答えた組合長は92%。農業関係者から国会決議違反を指摘されてどう思うか。

    安倍:そのアンケートは総合的TPP関連政策大綱を出す前のもの。安心して再生産できるよう説明していきたい。

    ◆TPP関連予算

    【1/6 松野頼久(民主・維新・無所属クラブ)  

    松野:TPP関連予算で「攻めの農業農林水産業への転換」に3122億円が計上されている。しかしその内容内訳は、昔ながらの公共事業と補助金が中心で、農業農林農村整備事業(土地改良公共事業)に940億円、農産物農地パワーアップ事業(農業機械の導入補助等)に505億円。せっかくの余剰財源をなぜ公共事業や効率の薄い補助金に費やすのか。選挙目当てのばらまきだ。税収の上振れ分は、公共事業や給付金にまわして使い切ってしまうのではなく、借金の返済に充てるべきだ。

    安倍総理:農業農林農村整備事業では、生産基盤の整理(意欲ある担い手への農地集積、集約化を加速し生産コストを大幅削減するための農地の大企画課)に特化して支援。農産物農地パワーアップ事業では地域一丸となった高収益な作物や栽培体系への転換など収益力強化に資する取り組みを支援する。

    【1/12 福島伸享(民主・維新・無所属クラブ)】

    福島:TPP対策予算の内容にも問題がある。例えば、
    ●担い手確保・経営強化支援事業53億円---農家が借金で機械を買った場合の半額を補助。
    ●産地パワーアップ事業505億円---機械購入や施設整備の半額を補助。
    ●畜産クラスターを後押しする草地整備の推進164億円---農機具会社が補助金欲しさに名目だけのクラスターを形成して申請書を出しているのが現実。
    農家に借金させて機械を買わせる従来型の対策で、今まで効果がなかったものばかりだ。

    森山:現場では、機械導入によるコスト低減、生産量増加を考慮したうえで申請されているはずだ。そういう農家が増えつつあることは喜ばしいことだ。

    福島:ウルグアイラウンド対策の時と同じ。農家に借金を背負わせるものだ。

    福島:土地改良公共事業に900億円、そのうち370億円は農地の大区画化・汎用化。中間管理機構を通じた農地の集約、機械や施設への補助。これは米価9600円をめざす農家を対象とするもの。現在、米価は1万円前後で、米価9600円をめざしてやる人はいない。利益を確保できないコストダウンに手を上げる農家はいない。 安倍政権は、価格低下を前提に、借金の1/2補助、しかも条件付き。民主党政権の時に出した戸別所得補償度は費用の直接払いで「ばらまき4K」と批判されもしたが、中長期的に見て生産者が利益を予測でき、自主的に機械や農地拡大、雇用などを調整できるので、その基盤を作ろうとするものであった。

    ◆経済効果試算

    【1/12 福島伸享(民主・維新・無所属クラブ)】

    福島:2013年、関税撤廃した場合の農林水産物の国内生産物の減少額は3.0兆円と試算。今回合意後の2015年の試算では農林水産物の国内生産減少額は1300〜2100億円。実質GPDは2013年資産0.66%増から2015年資産で2.6%増と5倍近く膨らんだ。(被害を小さく利益を大きく)あまりにも盛りすぎだ。なぜ農林水産物の減少額がこんなに減ったのか。

    森山:関税撤廃の例外を獲得しセーフガード等を措置した。体質強化対策、経営安定策など国内対策を集中的に講ずることとした結果、生産減少額が減少した。

    福島:例えば鶏卵。関税撤廃の場合の試算(2013)では国内生産減少額1100億円。期間(13年)はあるにしても関税はいずれ撤廃される。にもかかわらず2015年試算での減少額は26〜53億円と少額になった。「輸入実績が少量であること、用途が限定されていること、体質強化策」などの理由で「国内生産量が維持されると見込む」となっているが、見込みがおかしいのではないか。

    森山:鶏卵は関税撤廃まで13年という期間を獲得できた。この期間において特色ある付加価値鶏卵の生産拡大や生産面での効率化が十分可能であると見込んだうえでの試算だ。飼料米を餌にした鶏卵は生産拡大の見込み。揚げ物やハンバーグ等に使われる鶏卵は国内生産を維持するが価格は関税削減相当分だけ低下すると見込む。オムレツ、卵焼き、コンビニ弁当などの卵は国内生産を維持するが価格は関税削減相当分だけの半分相当低下すると見込む。加工用、オムレツ、高級仕出し弁当などの卵は国産鶏卵を維持し、価格は維持できると見込む。

    福島:生産減少額を減らすために理屈をこねている。補正予算に3122億のTPP関連予算が計上され、おそらく当初予算でその額は増えるだろう。関税撤廃による被害額を評価しなければ予算が適切かどうかも評価できない。 鶏卵生産は限界まで効率化され、これ以上の削減ができないとされているから物価の優等生と言われている。補正予算にTPP関連対策費を出す前に、対策を講じない場合の被害額を正直に試算し、その結果をうけて対策に必要な額を補正予算に出すべきではないか。 TPPにはプラスもマイナスもある。マイナスの被害を受ける人たちは大いに不安だ。その人たちに対して全体の被害額は少ないと説明したところで誰も信じない。

    森山:TPP対策予算を決めたしTPP政策大綱も決めたので、対策を前提としない試算は考慮しない。

    >>補正予算で4008億円確保TPP関連対策3122億円

    福島:TPPを実施し、関税撤廃による輸出増、規制改革、成長メカニズムが働いて実質GDPが2.6%になるという試算。効果はやってみないとわからない。政府の試算は、被害額を小さく、効果を大きく見積もるもので不誠実だ。

    安倍:TPP総合政策大綱をまとめ、多くの農協の方々に納得されていると思う。

    福島:試算も対策もあいまい。TPP批准の前に、協定の内容、効果、国会決議違反かどうか、政策をどするかを議論すべきだ。

    安倍:農家の皆さんに個別に説明していきたい。

    福島:安倍総理のホームページの写真「美しい国、日本」。安倍総理が地元のおばあちゃんに挨拶している。TPPやったらこういうおばあちゃんは農業が続けられなくなるのではないか。

    安倍:中山間地の棚田でも様々な工夫が始まり観光、いっしょに田植え、ファッションショーなどやって六次産業化している。ブランド化し一俵当たりの値段を上げている。多面的機能を果たしている。

    福島:米価9600円ではほとんどの農家がやめるだろう。棚田のように大きくできない田んぼは借り手がなく、私の地元ではイノシシの運動場になり、イノシシ駆除のために自衛隊派遣の依頼を受けているのが現実だ。そういう現実を正直に見て対策を講じるべきだ。

    【1/13 畠山和也(日本共産党)】

    畠山:農産物の関税撤廃は8割、1885品目に及ぶ。重要5品目は除外・再協議とされていたのに3品目は関税撤廃。野菜、果実、果樹は最大11年で撤廃だが、米国、豪州5カ国とは7年目の再協議。農産物の輸入増加は確実で、これまでも農産物輸入増加に合わせて食料自給率は下がった。

    安倍:食料自給率は、H26、カロリーベース39%、金額ベース64%。

    畠山:39%、つまり約6割は外国に依存。全世界の人口の1.8%を占める日本が、全世界の小麦3.7%、トウモロコシ12.6%を輸入。日本は穀物輸入量が世界一。異常だ。

    森山:穀物輸入が最大のトウモロコシは主に飼料用で1140万トン。しっかり対応していく。

    畠山:TPPで食料自給率悪化が懸念される。

    安倍:政府は昨年3月の閣議決定で、H37の食料自給率をカロリーベースで45%、金額ベースで73%とする目標を設定した。食料自給力指標として、食用とならない花やカロリーの少ない野菜のかわりに米やイモを作付けした場合に供給可能な食料自給力のパターンをいくつか示した。

    畠山:TPPにより食料輸入が増え自給率が下がるという不安がある。FPA、EPAを結んだ国々からの食料輸入が増加している。加えてTPPで豪州、ニュージーランド、米国の農業大陸が加われば、これまで以上に輸入が増えるのは明らか。自給率目標45%をどうやって上げるのか。

    森山:EPA締結後の輸入額の変化は、輸出国の関係、為替レートの関係があり、増えたかどうかの評価が難しい。

    畠山:ウルグアイラウンドの後の4年間でも農地集約、付加価値向上、スケールメリット畑作経営展開などの対策をしたが、食料自給率が4%下がった。TPPでも同じ対策をしても自給率が下がるのは当然だ。

    畠山:政府は、農家の体質強化対策をとって外国にも売れるようにすれば農家の所得も増えるとして、2020年度農林水産物輸出額1兆円を目標にしている。

    昨年の農業生産物の輸出。水産物を除く輸出上位三品目は、
    1)みそ・しょうゆ、2)清涼飲料水・菓子(チョコレート、キャンディ)、3)健康食・レトルト・加工品。
    その中で純然たる農産物である米、牛肉、青果物、お茶の輸出は、
    H27.1月から11月まで重要品目では、
    青果物186億円(前年比41.6%増)、米加工品181億、牛肉96億円、緑茶90億円、柿68億円。

    畠山:政府は昨年の農林水産物輸出額額が7000億円まで到達しそうだと誇っているが、農産物を全部足せば621億円、輸出額の9.28%で1割にも満たない。輸出1兆円目標で農家の所得が増えるというのは幻想だ。安い農産物の輸入が拡大し国産農産物の価格低下で生産費もまかなえなくなったところにさらにTPP。政府が発表した経済効果分析でも「関税削減等の影響で価格低下による生産額の低下が生じ、生産額1300〜1100億円の減少」と出ている。仮に1兆円の1割輸出なら1000億円。生産額の減少分さえ輸出でまかなえない。輸出で稼いで農家に生き残れと言っても、農家は生き残れない。

    安倍:総合TPP関連政策大綱をしっかり進める。しっかり輸出ルートを作って皆が意欲を持っていけば大きく増える可能性もある。

    畠山:生乳生産量日本一を誇る北海道別海町、人口の4割が酪農。主体は数十頭規模の家族経営。乳価が5円下がれば生活が失われる。離農が波を打っておしよせる。



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