安保法案に関する論点整理【衆議院】その1

    国会でいったい何が話し合われているのか、政府はなにをやろうとしているのか、
    野党は何に反対しているのか、法案が通ったら日本はこれからどうなるのか、
    知るための一助となるよう、ここに安保法案の論点を整理し、テーマごとにまとめました。

    「平和安全法政」の法案に関する論点整理

    1.自衛隊法

    自衛隊員の身分

    • 自衛隊発足時、警察予備隊(通常の警察の実力を超える危険が来たときに押し返す第二警察)としてつくられたので、いまだに警察法の体系で、警察比例の原則という、諸国の軍隊ではあり得ない縛りがかかっている。そのため、警察を外に出して使おうにも、これは軍隊でないので、相手側から見ればそれは海賊や山賊になってしまうし、仮に免責したとしても、非常に働きにくい状態になる。(6/22、小林参考人)

    • 自衛隊は国家国民を守るために自らリスクを負う組織であるにもかかわらず、憲法下では解釈によって合憲とされている存在で、軍でも警察でもない。名誉や処遇もまだ真剣に議論されていない。自衛官やその家族に対する福利厚生も全く不十分。軍人と同じ責務を自衛官に課しておきながら、自衛隊が軍隊ではないと見せるために、その矛盾を自衛官に押し付けてきた。この事実が自衛官や家族にとってのストレスでありリスクである。(7/1、勝沼)

    • 父親が自衛隊員の女子高生。お父さんは他国の人を殺すために自衛隊員になったのではない、「戦争でお父さんを殺さないで」。若い自衛隊員が反対請願に署名。日本が攻撃をうけていないのに武力を行使するのはおかしい。自分は不正義の戦争で命を落としたくない。(6/11、田村)

    自衛隊員の自殺

    • 自衛隊のイラク派兵では、陸上自衛隊の宿営地が少なくとも14回、23発のロケット弾や迫撃砲弾による攻撃を受けました。車列が群衆に取り囲まれ、ミラーが壊されることもありました。航空自衛隊のC130輸送機はバグダッド空港などに米軍の兵員や物資を輸送する活動を行ったが、バグダッドの上空で携帯ミサイルで狙われていることを示す赤ランプが点灯し、警報が鳴り、攻撃を避けるための回避行動を頻繁にとっていたことが報じられています。自衛隊が活動する場所が戦闘現場になる可能性があるというのがイラクの経験が示したことだったと私は考えます。(7/10、穀田)

    • 当時、私が人事局長をやっておりますときから隊員の自殺は大体年に七、八十人。イラクの場合は、今まで一万人に対して二十九人と言われている。イラク派遣期間は3〜4ヶ月、メンタルに問題のない人を選別して派遣した。私が申し上げてきたのは、平均的に言うと、日本人全体では人口十万当たり約二十人、イラクの自衛隊では母数を同じにすれば二百九十人ということになる、そして一般の自衛隊員は実は年間七百人ぐらいになっちゃう、こういう話で、いずれも深刻な話ではあるんです。(自衛隊をイラク派遣した当時の防衛庁人事局長・裄V)

    • 【米軍の場合】イラクやアフガンの帰還兵の証言をまとめた「冬の兵士」という本では、米兵が、キル、キル、殺せ、殺せ、こういう言葉を連呼しながら訓練を行い、事態が泥沼化するにつれて交戦規則は次第に緩くなっていき、相手が民間人であろうと、動く者は全て殺りくした、動くな、動いたら殺すと言って、もう交戦規則も何もあったものじゃない状態に米軍は陥っていたと。(7/13、赤嶺)

    • 【米軍の場合】昨年の十一月十一日の日に、米国のベテランズデーという復員軍人の日に合わせて反戦イラク帰還兵の会が発表した、復員軍人における自殺者数に関して、戦死者が大体六千八百人ぐらいのところ、自殺者数は八千人ぐらい。(6/15、初鹿)

    • 派遣された自衛隊員が今まで以上に厳しい現場を見るわけですよね。目の前で人が殺される、場合によっては自分が武力攻撃をして相手を殺すこともあり得る、そういう行動をこれから自衛隊員にしてもらおうというのがこの法案なわけです。帰還した自衛隊員がPTSDを発症する、もしくはその結果として自殺をする、その可能性が高まるんじゃないですか。派遣をされている間にメンタル上の問題が生じた隊員は帰還(帰国)をさせますか。(6/15、初鹿) → メンタルヘルスケアについては十分留意をして実施させます。(中谷)

    「在外邦人等の保護措置」、いわゆる「邦人輸送」に関すること

    過去事例

    • 1994年、イエメンの内戦で96名の日本人観光客が孤立したとき、ドイツ、フランス、イタリアの軍隊が救助に当たった。2000年からだけでも、総計238名の日本人が11カ国の軍用機や艦船などで救出されてきた。1985年、イラン・イラク戦争でイランの首都のテヘランが危機になり、日本人215名が孤立した際、日本の民間航空機は、危険だからとテヘランまで飛ばなかった。トルコ政府が、テヘランに派遣した二機の救出機のうちの一機を日本人救出に当て、そのために乗れなくなってしまった何百人かのトルコ人は陸路で脱出させた。日本では報道されなかったが、2004年4月、日本の三十万トンタンカーのTAKASUZUがイラクのバスラ港沖で原油を積んでいた際に、自爆テロボートに襲われた。そのときに身を挺して守ってくれたのは、アメリカの三名の海軍軍人と沿岸警備隊員だった。彼らは日本のタンカーを守って死に、本国には幼い子供たちを抱えた家族が残された。(7/13、岡本公述人)

    問題点

    • 朝鮮半島において在留邦人の保護あるいは退避が必要になった場合を想定して、平素から関係省庁間の連携のもと、対応の方策を検討している。仮に、朝鮮半島有事において邦人等の退避を必要とする事態に至った場合は、まずは、民間定期便が利用可能なうちに出国または安全な地域への移動を勧める。そして、民間定期便での出国等が困難になった場合には、個別具体的な状況に応じて、政府のチャーター機あるいは船舶の派遣、さらには、米国を初めとする友好国との協力の可能性、こういったことも検討しながら、最も迅速かつ安全な手段を活用し、邦人の退避支援に最大限努める。ここまでは現状でもできる部分であります。(7/10、岸田、【この部分は民主党も賛成】

    • その上で、今回の平和安全法制は、自衛隊が、邦人の輸送のみならず、警護や救出等を含む保護措置を実施することを可能とする自衛隊法の改正案が含まれている。存立危機事態に至った場合は、自衛隊による、邦人退避に使用されている船舶の防護活動も実施可能になる。(7/10、岸田)

    • 我が国近隣で武力攻撃が発生し、米国船舶が公海上で武力攻撃を受けている、攻撃国の言動から我が国にも武力攻撃が行われかねない、このような状況においては、取り残されている多数の在留邦人を我が国に輸送することが急務になる、そのような中、在留邦人を乗せた米国船舶が武力攻撃を受ける明白な危険がある場合は、状況を総合的に判断して存立危機事態に当たり得るということでございます。(7/3、安倍) → 日本がミサイル等で攻撃される兆候がない状態でも、日本は米国の敵対国に対し攻撃できるのか。 → (日本側からの先制攻撃は)ありうる(安倍)

    「米軍等の部隊の武器等の防護」、いわゆる「武器等防護」に関すること

    従来の自衛隊法第95条

    • 自衛官は、自衛隊の武器、弾薬、火薬、船舶、航空機、車両、有線電気通信設備、無線設備又は液体燃料を職務上警護するに当たり、人又は武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。

    自衛隊法第95条2(追加改正案)

    • 自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動に現に従事している米軍等の部隊の武器等であれば、当該武器等を防護するための武器の使用を自衛官が行うことができるようにする。(第95条の2)

    政府の主張

    • 自衛隊が武器を使用して防護する対象を外国軍隊まで拡大する。我が国の防衛に資する活動としては、例えば、輸送、補給、情報収集、警戒監視、共同訓練などが考えられる。(宮本、6/10)

    • 地理的には、特定の地域を念頭に置いているものではない(黒江、6/10)→地理的限定なし。

    問題点

    • 九十五条でできる自衛官の武器使用とは、まず、あらかじめ守ろうとしている武器等を隠すとか退避させるとかということで、できるだけ事前に回避する。二つ目に、もし壊されたり、それから奪い去られたりした場合には、追撃してこれを奪い返すとか、あるいは報復のために武器を使うということもいけない。このような極めて受動的、限定的な武器使用なので、それで武力行使に当たらない、とされていた。改正案の九十五条の二では、米軍等の武器等も我が国の物的な防衛手段に該当するというのが非常にわかりにくい説明であるだけではなくて、もし本当にそれが同じような趣旨であるならば、米軍そのものが、攻撃にさらされている武器等や艦船や航空機をまずは隠すとか退避するとかいう義務をしてもらわないと要件に当てはまらない。壊されたり運び去られたりした場合に、追撃して奪い返すとか、それを報復するとかいうことはしません、という協定を結ぶ必要がある。自衛隊だけがそのつもりだというのは通じない。(6/22、宮崎参考人)

    「平時における米軍に対する物品役務の提供の拡大」に関すること

    法案制定経緯

    • 現行の周辺事態法制定時におきましては、米軍からニーズがなかったために、弾薬の提供、そして戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機への給油、整備につきましては支援内容から除いておりました。また、物品、役務の提供は、公海及びその上空で行われる輸送を除き、我が国の領域において行われるものとしたわけでございます。しかし、その後、日米で防衛協力の協議を行いまして、ガイドラインの見直しが進められた協議の中で、米側から、これらを含む幅広い後方支援への期待が示されております。・・・この重要影響事態という事態をつくりまして、・・・弾薬の提供、発進準備中の航空機への給油、整備、外国領域などに限られない後方支援活動について実施するよう措置するという対応をしたということでございます。(6/26、中谷)

    8月5日、参議院質疑より

    • 「大量破壊兵器など、この世にあるすべての兵器や弾薬は、この法律で運べるということか」との問いに中谷答弁「法律上は特定の物品の輸送を排除する規定はない。」「手りゅう弾、クラスター爆弾、劣化ウラン弾、大砲弾、ミサイル弾は武器でないから米軍に運搬」「現に戦闘を行っている現場でなければ、武器を輸送・運搬しても、弾薬を提供したとしても武力行使とは一体化しない」「核兵器の運搬も法文上は排除していない」

    • 核兵器が輸送のみ可能な「武器」に当たるのか、輸送だけではなく提供も出来る「弾薬」に当たるのかについて、中谷防衛相は、「核兵器は核弾頭を持っており、分類は弾薬に当たる」と述べた。

    • 「憲法上核兵器は保有できる」(横畠法制局長官)

    • 「輸送のつど自衛隊として主体的に実施の可否を判断する。核兵器の運搬、防護については「想定していない」「要請があっても拒否する」非核三原則に従う。→非核三原則は法律ではなくただの施政方針。新たな閣議決定で容易に撤回できる。

    法案「国外犯処罰規定」に関すること

    • 国外において、上官命令への多数共同での反抗や部隊の不法な指揮、そして防衛出動命令を受けた者による上官命令への反抗、不服従等の罰則に係る国外犯処罰規定を設けたわけでございます。(6/10、中谷)

    • 国外犯処罰規定では防衛出動命令違反に対し七年以下の懲役または禁錮となっているが、軍法会議も軍刑法もない。仕組みづくりが先ではないか。(7/10、松波) → 現時点において、(仕組みを)設置する必要があるというふうには我々は考えていない(中谷)

    2.国際平和協力法/国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律

    PKO

    従来の法律

    • 武力介入という強制措置でありながら、紛争当事者全ての合意がある。内戦があって、停戦し、双方が中立的な存在となったところにPKOが割って入る。PKOの主要任務は停戦監視。PKOの軍事部門は国連平和維持軍PKF。PKFは自動小銃など軽武装で、できるだけ大世帯で行く。現場を確保して停戦が破られないよう抑止力として働く。(7/1、伊勢崎)

    • PKO参加5原則(国連統括型) (1)紛争当事者間の停戦合意の成立 (2)紛争当事者のPKO派遣への同意 (3)PKOの中立性の確保 (4)(1)〜(3)のいずれかが満たされない場合には、部隊を撤収 (5)武器の使用は、要員の生命防護のための必要最小限度のものを基本

    改正案

    • 「非国連統括型」として、5原則を満たした上で、関連機関が行う決議、要請、当該地域の国からの要請のいずれかが存在する場合を新設。

    • 武器使用権限の見直し:いわゆる安全確保業務、いわゆる駆け付け警護の実施に当たっては、いわゆる任務遂行のための武器使用を認める。

    専門家の意見および問題点

    • 自衛隊が、過去、PKO、二十二年以上海外で勤務し、それ以外に、海賊対処、インド洋の給油、現在は南スーダンPKOなど多数の隊員が活動して、高い国際評価を受けてきた。一発も撃たずに一発も撃たれずにすんできた。国会の歯止めもあるし、自衛隊員の管理能力、自覚、任務意識がトータルでそれを実現させてきた。(6/22、森本)

    • カンボジア以来、国連PKOで自衛隊が頑張ってきたが、一発も撃たずに済んだ。その理由は、「自衛隊は撃てない」こと。どんな危険に会おうと自衛隊員は撃てない。サマワでは一発撃ったら何発返ってくるんだ、という世界だから、撃たないことで、現地の住民から敵視されずに来た。今度は進んで武器を使う任務を与える、ということであれば、犠牲者が出ることは当然覚悟しなければいけない。(7/1、伊勢崎)

    • 自衛隊の海外派遣当初は、駐屯地の地域住民から批判的なまなざしを向けられていた。その後、各基地、駐屯地が地域社会との共生に励み、二度の大災害における献身的な災害救助活動もあり、今や自衛隊に期待する現地の国民の割合は90%を超えている。地域社会の一員として努力し、災害救助するなど、非軍事的な自衛隊の活動に対する賛辞が多い。自衛隊の活動に軍事的な行動を感じると一般社会は敏感に反応する。国内でも政府と世論のずれがあり、これは隊員や家族のストレスになる。(7/1、勝沼)

    • 「昔と違って、停戦合意が破られたからといって撤退することはできません。そんなんだったら、最初から来るなということです。」「住民に銃口が向けられているというふうに目撃したら、たとえその銃口が自衛隊員に向けられていなくても、自衛隊員はこれに対して応戦しなければなりません。」(7/1、伊勢崎参考人)

    重要影響事態安全確保法に変更/重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律

    重要影響事態

    • 重要影響事態は、我が国に重要な影響を与える事態ということで、認定されれば、活動している他国の軍隊に対して後方支援ができる。後方支援の内容としては、補給、輸送、修理・整備、医療、通信、航空・港湾業務、基地業務、宿泊、保管、施設の利用、訓練業務等の活動。(7/3、安倍)

    • 事態認定は政府が行う。実際に武力紛争が発生しまたは差し迫っている等の事態において個別具体的な状況に即して、当事者の意志、能力、場所、対応などを判断する。我が国に戦禍が及ぶ可能性、国民が受ける被害の重要性を客観的に判断する。

    • 原則は国会承認(緊急時は閣議決定のみ)だが、事態認定の前提となった事実に特定秘密が含まれる場合は、特定秘密を隠した形で国会や国民に事実認定の根拠を示す。

    • 重要影響事態に際して、我が国の平和と安全を確かなものにしていくという観点から、日米安保条約の目的の達成に寄与する活動を行う米軍以外であっても、国連憲章の目的達成に寄与し、かつ当該事態の拡大を抑制し、またはその収拾を図るための活動を行う外国軍隊等に対しては、我が国として、必要な後方支援活動を行うことができるようにしてまいります。(7/3、安倍)

    問題点

    • 全世界の範囲で米軍その他の軍の後方支援が可能となる。(7/10、岡田)

    • 「世界の平和と安定なくして我が国の平和と安定はなし」という首相の論法に従えばほとんどの事態が重要影響事態になる。(7/10、岡田)

    • 弾薬提供、発進準備中の航空機への燃料補給等、武力行使と認められる活動(英語では「兵站」を意味するロジスティックス)を「後方支援」という名のもとに行う。

    • 重要影響事態となれば外国軍に対する後方支援を国連決議や国会承認なし(緊急時)に閣議決定だけで実施できる。

    • 重要影響事態のときに公海上で後方支援をしている自衛隊の艦船がミサイルなどで爆撃されてしまったら、これは日本への武力攻撃事態になる。これが戦争に巻き込まれるということ。

      集団的自衛権

    一般的な、国際的に通用する、政府が言うフルサイズの集団的自衛権

    • 集団的自衛権は自国が直接攻撃を受けていないにもかかわらず自国と密接な関係にある他国に加えられた武力攻撃に対し自ら武力をもってこれを阻止排除する国際法上の権利だ。本質は他国防衛。(6/22、宮崎参考人)

    • 過去の集団的自衛権の行使を国連の安保理事会に報告したケースを見ると、大体、行使国は大国のアメリカ、ソビエト、イギリス、フランス。行使国の都合で武力行使をしている。(7/13、横路)

    • 米ソ冷戦時、アメリカは、ニカラグア革命後のニカラグアに対して、親ソ勢力排除を目的とした介入をおこなった。ニカラグアが国際司法裁判所に提訴し、アメリカは損害賠償を命じられたが、アメリカは履行しなかった。ニカラグア判決は、第三国が自らの状況に基づいて勝手に集団的自衛権を行使してはいけない、という意味を持つ。

    安保法案による日本独自の集団的自衛権

    • 我が国で、昨年7月までは集団的自衛権といえば他国防衛目的の権利であり憲法上許されなかった。今回、新3要件のもとで許されるのは、国際法上は集団的自衛権のカテゴリーに入るが、その目的は自国防衛であり、その行使に当たっては、新3要件(深刻重要影響、やむをえない、必要最小限)の限定がある。

    • 【限定的集団的自衛権による武力行使が認められるための条件】新三要件(密接関係国、存立危機、必要最小限)に該当することに加え、国際法上求められている要件、武力攻撃を受けた国からの要請・同意がなければならない武力攻撃を受けたからの要請と同意がなければ集団的自衛権を行使できないというのが国際司法裁判所の判決。
      (わかりにくいので解説:武力攻撃を受けた国が日本に支援を「要請する」のは理解できるが、「同意」を誰から誰に与えるか、について、衆議院審議中、最後まで議論が深まらなかった。 与党の答弁から勘案するに、支援要請を受けた日本が「同意」するのではなく、米国等が「日本が支援をしたいならやってもいいよ」と日本に「同意を与える」ことのようだ。)

    問題点

    • 集団的自衛権による武力行使容認という政府の憲法解釈変更は、基本的な論理の枠内、法的安定性の保持、のいずれの点でも大いに欠陥があり、従来の政府の基本的な論理の中におさまっていない。変更の結果、どこまで武力行使がゆるされるようになるのかも不明確で法的安定性も保たれていない。立憲主義にもとる。(6/4、長谷部)

    • 我が国の存立の危機に、明白な危険があるにもかかわらず、他国の要請・同意がない限りは対応ができないという奇妙な状態が生じる。 → 存立危機なのに要請がないと座して死を待つしかないということだ。ありとあらゆる外交手段を通じて対処する。国際法上の正当性がないと対応できない。(6/15、中谷)

    • 日本が武力攻撃を受けない場合、受けるようなおそれが全くない場合でも新三要件に合致すれば武力行使が可能になる。武力攻撃事態でも切迫事態でも予測事態でもないときに自衛隊を出動させるということは、アメリカを守る、アメリカの艦艇でも何でも、他国防衛以外の何物でもないのではありませんか。(7/13、横路)→新三要件に該当すればできる(中谷)

    • 後方支援について、今まで、インド洋における給油、それからイラク、サマワでの活動は人道支援に近いと思いますが、バグダッドにおける航空自衛隊の輸送、これが後方支援に近い概念だというふうに思うわけです。その具体的内容は情報公開されていない。(7/10、岡田)

    リスクは高まるか

    • もし、武力紛争にかかわっているアメリカ軍があれば、沖縄にあるアメリカ軍基地が攻撃される可能性、リスクは格段に高まる。アメリカだけではなくて、重要影響事態法によって日本自身もその戦闘参加にかかわっていくことになる。重要影響事態法では後方支援と言っているが、英語はロジスティック、国際社会から見れば兵たん支援として戦闘参加しているとみなされる。後方支援をしている日本自体も、その重要な拠点である沖縄も攻撃の対象になるリスクが非常に高い。(7/13、小澤)

    • この法案が成立すれば、自衛隊の海外派遣要件が拡大され、自衛隊と米軍が一体となって軍事行動を展開することになる。結果として、我が国が他国の紛争に巻き込まれるリスクが高まります。もしそうなったら、米軍基地が集中する沖縄がイの一番に狙われ、標的にされる可能性は大であります。(7/6、稲峰、沖縄参考人質疑)

    • イラク戦争終結後の米軍の治安維持活動および非戦闘行為に従事したアメリカ兵は、民間人を装った自爆テロや、車に仕掛けられた爆弾、輸送中のヘリの撃墜などの犠牲になって、930人が命を落としています。これは、イラク戦争の戦闘で死亡した139人を大きく上回る数字です。いつ、どこで狙われるかわからない不安の中で、自殺したり精神的な疾患になった米兵はさらに多いです。アフガニスタンの国際治安支援部隊の活動で、治安維持活動等に当たったドイツ軍やイタリア軍の兵士の犠牲者が数百人規模に上っています。自爆テロやあるいは車爆弾、また輸送中のヘリの撃墜、こうしたリスクを伴う治安維持活動に自衛隊を派遣し得るようにするのが今回の安保法制です。これのどこが自衛隊のリスクは増大しないということになるんですか。(5/27、柿沢) → 今回は新たな任務として、確かに(リスクが)ふえる部分がございますが、これにおいても安全についての規定なども設けておりまして、実際やるかやらないか、 この段階で本当にやって大丈夫なのか、そしてそれが任務達成できるのか、そういうのを判断して実施するわけでございますので、リスクに対しましても十二分に配慮をしながらやっていくということでございます。(中谷)

    捕虜

    • 後方支援で出動している軍人が敵国に拘束された場合、ジュネーブ条約上の捕虜となる。軍人ではない自衛隊員にはジュネーブ条約が適用されず、自衛隊員の身が危険にさらされる。(7/1、辻本) → 自衛隊員が捕らえられるような事態が発生したとしても、まず我が国は、法的な立場として、こうした身柄の拘束そのものを容認することができないという立場にあります。ですから、当該要員がどのような待遇を受けるか以前の問題として、身柄の即時解放を強く求めていく、こういったことになります。(岸田外務大臣)

    • 「武力行使をしない、つまり軍人ではない」という前提で後方支援をすれば、海外に派遣された自衛隊員は国際的にみて「海賊、山賊」とみなされてしまう。

    • 「米軍の後方支援として、武器等防護、物品役務提供(武器弾薬の提供、運搬、防護)を行う」「軽装備で戦闘地帯に入って捜索救難活動を行う」、などの任務遂行中に敵対国の標的にされ、自衛隊員が拘束される危険性は非常に高まる。捕虜としての身分がなければどんな目に合うかわからない。

    4.船舶検査活動法/重要影響事態等に際して実施する船舶検査活動に関する法律

    (審議なし)

    5.事態対処法/武力攻撃事態等及び存立危機事態における我が国の平和及び独立並びに国及び国民の安全の確保に関する法律

    事態対処法(個別的自衛権)

    • 現状におきましては、個別的自衛権のみ我が国の憲法で容認されているわけでございまして、我が国に対する武力攻撃が発生しない限り、米艦、他国の艦艇等を防衛するということはできないということでございます。(7/3、中谷)

    • 我が国が武力行使を行う(新)三要件、この(新)三要件に当てはまったときに、まさに存立危機事態として、我々は武力を行使することが、日本人の命や平和な暮らしを守るために武力行使を行うことができる、こういうことでございます。(7/1、安倍)

    新三要件

    「新三要件」の下で、「武力行使」を可能にする。
    ※旧三要件(黒字部分)に、密接関係国への攻撃(赤字部分)が追加された。
    第一要件:
    わが国に対する武力攻撃が発生したこと(定義は明白、ただし危険の恐れも含むと不明確)
    またはわが国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し
    これにより我が国の存立が脅かされ(不明確)
    国民の生命、自由および幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること(不明確)
    第二要件:
    これを排除し(不明確、限度不明)
    わが国の存立を全うし(不明確、限度不明)
    国民を守るために他に適当な手段がないこと(不明確、恣意的判断ありうる)
    第三要件:
    必要最小限度の実力行使にとどまるべきこと(不明確)

    存立危機事態

    • 存立危機事態というのは、ある国が日本と密接な関係にある国に対して武力攻撃を行う一方で、日本に対する武力攻撃は発生していない状況で、新三要件に当てはまったときに、武力行使ができる。(7/3、安倍)

    • 新三要件を総合的に判断して決める。攻撃国の我が国を攻撃する意思が認定できない場合であっても存立危機事態に認定し得る。(7/13、中谷)

    • 存立危機事態を排除することができる武力行使で、必要最小限は、敵国の領土領海への攻撃が必要になる。(7/3、長島) → (敵国の領土領海への攻撃は)何もできないというのが現在の状況であります。同盟国である米国の米艦等の防護はできますが、海外派兵は一般に認められないという原則は変わらないわけでありますから、できることには限度がある。とはいえ、ここまでできるということになれば、さまざまなオペレーションにおいて協力が十分に可能になってくるということになる(安倍)

    • 存立危機事態を排除できない、他国の領域に行かなければ排除できないような事態の場合は、日本はあくまでも公海上に原則とどまって、他国の領域については、ほかの国、アメリカとかあるいはほかの国にお任せをして、そちらはそういう形で役割分担をする、基本的な考え方はそういうことですか。(長妻) → 存立危機事態における武力行使の場合はそのとおりです。(安倍)

    問題点

    • 存立危機事態というふうに言われている事態のかなり多くの部分というものは、従来の個別的自衛権の行使ということで対応が十分可能なのではないかというふうに考えております。(7/6、落合、参考人質疑)

    • 三人の憲法学者の違憲見解に対し、政府の反論は、集団的自衛権行使の容認について、我が国を取り巻く安全保障環境が根本的に変容し、変化し続けていることを唯一の根拠として、新三要件の上で海外で武力行使ができるというものだが、明白な危険の判断基準は何もなく、政府の一方的判断でできるとしているもので、参考人の指摘に対する反論にも説明にもなっていません。(6/11、赤嶺)

    ホルムズ海峡の機雷封鎖

    • ホルムズの変容で安全保障環境が変わったから憲法解釈変更が必要だ。外国の領土領海領空に行っての武力行使は憲法で原則禁止されているが、例外として、ホルムズ海峡に機雷が敷設されてそれを掃海する活動は、受動的、限定的だから新三要件にあてはまる。(7/8、中谷)

    • 石油の8割、LNGの25%がホルムズを通ってきている。夏のピーク時の燃料の四分の一がホルムズを通っている。夏にホルムズ封鎖が起きたら電力の四分の三しか使えない。LNGは輸入先の多様化を行っている。2016にはアメリカのシュールガス輸入予定。その他からの輸入も増やし、LNGのホルムズ依存度は1割前後になる見込み。備蓄は170日分。不足した場合は、石油需給適正化法という法律に従って需給調整する。備蓄を100日分増やすとすれば、5兆円という非常に大きな予算がかかる。(6/29、宮沢国務大臣)

    • ホルムズの例では、石油エネルギー源供給が滞るという経済的影響のみならず、生活物資不足、電力不足、ライフライン止まるなど、国民生活に深刻な影響がおよぶかどうかを総合的に判断し存立危機事態を認定する。(5/19、中谷)

    • 機雷掃海艦艇というものは木製あるいはプラスチック製でできております。そして、自己防護用の装備すら持っておりません。これをもって「受動的、限定的」と言っているのは我が国の考え方であります。(7/10、岸田)

    • イラン政府がホルムズを封鎖するような事態は起こりえない、自分の首を絞めることになる。(6/15、赤嶺)

    • 機雷掃海は武力行使である。機雷を敷設した国はその相手国をいわばやっつけようと機雷を敷設しているわけで、その機雷を除去する行為はそれに対する敵対行為とみなされるということになる(7/14、穀田)。 → 武力行使の一環だと認識しております。(中谷)

    • 米軍では、機雷戦を攻撃的機雷作戦と防御的機雷作戦の二つに分類し、これらをともに法的な戦争行為と位置づけている。(米軍規定)

    • 日米新ガイドラインには機雷掃海が各所に記載されている。ガイドラインでは日本が機雷掃海の役割をすることが明記されている。日本の掃海部隊は近代的かつ有能な対機雷戦部隊を保有している。一方、米軍の掃海戦装備はぜい弱。(6/15、赤嶺)→米海軍は機雷掃海艇を11隻。日本は27隻。(6/15、黒江政府参考人)

    政府の主張の変化・・・

    • ISILを巡って、米国とイランの関係が接近しているのではないか。 → イラン核問題が存在する。核不拡散が6月末にむけて協議されている。イランと米国、関係国の間で交渉が進められている。日本はイランと伝統的な友好関係がある。(6/17、岸田) → イランと欧米など6か国の核協議が最終合意に至り、イランは核開発を制限し、軍事施設に対する査察も受け入れることとなった。(7/14、報道)

    • ホルムズは事例の一つ。もはや脅威が世界中のどの地域において発生しても我が国の平和と安全に影響を及ぼす。世界の安全保障の変化が直ちにホルムズ海峡に機雷が設置されるような危険性があるというわけではないが、仮にホルムズに機雷が設置された場合は、我が国に深刻な影響を及ぼす。(6/15、岸田) この答弁により、「安全保障環境が変わったから憲法解釈変更が必要」という根拠を失い、本法案の提案理由もなくなった。

    密接な関係にある他国

    • 共同対処の意志を持つ国。個別具体的、総合的に判断する。あらかじめ国を限定しているものではない。(6/10、岸田)

    • 同盟国である米国はあてはまる。それ以外の外国が該当する可能性は現実には相当限定されるが個別具体的状況に即して判断される。北朝鮮は対象外。(6/15、岸田)

    • 国際法上、自衛権を行使するのは国。国家が対象。未承認国、分裂国も入る。その範囲内で密接な関係にある他国を考える。(6/15、岸田)

    • 北朝鮮は対象外。台湾は説明に慎重を要する(台湾の法的地位にたいして独自の認定を行う立場にない)。(6/15、岸田)

    他に手段がない

    • 1991年にペルシャ湾へ掃海艇を派遣したとき、3月3日に事実上の停戦、4月11日に正式な停戦、それから準備指示をして、一カ月かかってドバイに到着。現行法ではこのように、事実上の停戦で掃海艇を派遣し、正式停戦直後には現地に到着できた。しかし、存立危機事態でやる場合は、事態認定の後、対処基本方針を作り、国会承認を得る、となり、逆に遅くなっちゃう。その間に他の国々が機雷掃海を始めている。これで他に手段がないと言えるのか。(6/29、後藤) 

    • 自衛隊の機雷掃海能力が高い。一日も早くというか一刻も早く処理しなければならない。他国にやってもらえばいい、というものではない。(6/29、横畠) 

    • 存立危機事態が発生した段階で、我が国として何も対応しないということはまず考えられません。機雷の掃海に当たっても、他国と同時に我が国が対応する、これが当然のことだと思います。特に、我が国の掃海能力、これは国際的にも大変高いわけですので、我が国がその時点で何も対応しない、他国に任せる、それは考えられないと考えます。(6/29、岸田)

    • 過去に、アフガン戦争やイラク戦争時に、日本は米軍から、ショー・ザ・フラッグ(日の丸を見せろ)とかブーツ・オン・ザ・グラウンド(地上に部隊を)と強く迫られたことがございました。そのときは、憲法が海外での武力行使を禁じているとの判断がありました。しかし、今回は違います。前述のような、日米同盟に傷がつくなどと米国から強い要請があれば、政府の(他に手段がないという)判断により、戦闘地域への自衛隊派遣が可能となるということでございます。(7/8、稲峰参考人)

    必要最小限度

    • 存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。排除をするまで必要最小限度はかかり続けるということでございます。(7/8、中谷)

    • 自衛隊が武力行使を目的として、かつての湾岸戦争とか地上戦とか、敵を撃破したり、海上優勢、航空優勢を確保するために大規模な空爆、砲撃を加えたり敵地に攻め入るような行為に参加することは必要最小限度の自衛の措置の範囲を超えるものであって憲法上認められていないということで、航空優勢とか海上優勢を確保するために行動するということは新三要件を満たさないということでございます。(7/8、中谷)

    • 第一要件である我が国に対する急迫不正の侵害がある、これを排除するための必要最小限度。その必要最小限では、我が国が武力攻撃を受けているときですら、まさに本格的な戦闘(他国の領域での戦闘行為、空爆)まではいたしません、」という御答弁をされているんです。(7/8、横畠)

    • 火の粉を払う的な、攻めてきた者を追い払うというところでとどめるというのが第三要件の働き方なのでございます。(7/8、横畠)

    問題点

    • 他国への武力攻撃があってというのはファクトとしてわかるとしても、それがどういう因果関係で我が国の存立を脅かすようになるのかは一義的な定義ができない。どのたとえをとってみても、存立が脅かされるというところまでいく因果関係が納得できない。近場ならば個別的自衛権の話になる。(7/1、裄V参考人)

    • 交戦権がない結果として、外国が攻めてきたときでも、大国の侵略行為を排除するための必要最小限度の実力行使しかできない。敵の攻撃が止まった後も追いかけていって外国の領土、領海に入る、敵を殲滅する、ということは許されない。(6/22、阪田)

    • 「速やかに終結」とはつまり戦争に勝つこと。そのための最大限の実力行使をしなければならないだろう。「必要最小限度」とはいったい何のための必要最小限度なのか?(6/22、阪田)

    先制攻撃

    • 米国が(国際法上、違法な)先制攻撃の戦争を行った場合でも、武力行使の新三要件を満たしていると判断すれば集団的自衛権を発動するのか(5/28、志位) → 新3要件を満たしていると判断すればそうだ(集団的自衛権を発動)。

    • 我が国に対する直接の武力攻撃の危険がないケースであっても、単なる幸福追求が覆される明白な危険という、もっと広い概念で武力行使ができる。昭和47年見解(武力攻撃を受けた場合に限定)とずれている。(7/3、枝野)。 →「根底からくつがえされるという」というところは、「という」というに、そのまま放置すればそうなってしまうという意味が込められているわけでございます。「密接な関係にある他国に対する武力攻撃」の発生というものを契機として、それによって我が国「国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される」というようなことになる「明白な危険がある」というような場合もあり得るんだということで、今回、要件としては、単に他国に対する武力攻撃の発生ではなくて、まさに要件として、我が国の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から脅かされる明白な危険ということを明記して、要件として書き加えるということによって、その結果、昭和四十七年政府見解の二の部分の事態とまさに符合するということになっているわけでございます。(7/3、横畠) ypa〜!

    • 日本を攻撃していない国に対して日本から武力行使を行うということになれば、その国との間で武力抗争状態を新たに発生させることになります。これはまさに、憲法九条一項で禁止された、国際紛争を解決する手段として武力を行使することにほかなりません。また、集団的自衛権を認めて、まさに他国防衛となる海外派兵を可能とし、他国防衛のための軍事的実力を持つことが、憲法九条二項に反することも明らかです。(6/11、赤嶺)

    武力攻撃の着手

    • 武力攻撃の着手があれば、我が国が攻撃された、とみなし、反撃することができる。着手とは:我が国を攻撃するということを明示し、攻撃のためのミサイルに燃料の注入その他の準備を始めた場合。東京を火の海にしてやる、灰じんに帰してやるといったような表明をして、かつ弾道ミサイルに燃料注入を開始しまたは起立をさせた場合。(6/29、中谷)

    • 「我が国を防衛するために出動して公海上にある米国軍艦に対する攻撃が発生した状況」、これも「状況によっては」武力攻撃の着手と判断されることがありうる。(6/29、中谷)

    • 「我が国の国民の権利が根底から覆される明白な危険」が具体的にどういう危険なのかが非常に漠としていて、閣僚の答弁も二転三転している。攻撃国に日本を侵害する意図、意思がない場合、あるいは日本に戦火が及ぶ可能性がない場合でも集団的自衛権が認められることがあり得るか。(7/15、長妻)→武力行使の三要件にあてはまれば武力行使もありうる。(安倍)

    • 従前の、いわゆる宣戦布告というような手続が昔あった戦争法、それの若干名残のような要素もあると思いますが、まさに明示された意図があれば、それは我が国に対する武力攻撃の発生と認定することは当然できるであろう。ただし、その意図が明示されていないからといってそのような認定ができないわけではない、まさに具体的な行為、行動によって認定するということもあり得るということだろうと思います。(6/29、横畠)

    問題点

    • 日本側からの先制攻撃は、敵国または米国の敵対国に、日本領土を攻撃する大義名分を与える。国民を守るというよりは、進んで国民を危険にさらすという結果しかもたらさない。(阪田参考人)。

    • 自国防衛と称して、攻撃を受けていないのに武力行使をするのは、違法とされる先制攻撃そのものだ。(宮崎参考人)

      米軍オペレーションの検証

      • 2002年に当時のアメリカのブッシュ大統領が一般教書演説で、北朝鮮、イラク、イランを悪の枢軸呼ばわりし、必要なら先制攻撃も辞さないという戦略を明確にし、翌年には、大量破壊兵器を口実にして、イラクに対する軍事攻撃に踏み切った。イランや北朝鮮の核開発の背景の一つには、この悪の枢軸発言があったことが指摘されている。アメリカの悪の枢軸発言、どういう検証を行っているか。(6/29、赤嶺) → どんな理由にせよ核開発は認めるわけにはいかない(岸田)

      • 過去にイラク戦争の際に、米軍が主張していた大量破壊兵器があるから二兆円の拠出金を出すんだということで、これは国会の承認が得られた。でも、終わって、大量破壊兵器があるかと調べてみたらなかったという話。ではその二兆円は何だったのか。過去の米軍の軍事オペレーションに対して日本は独自の検証を行っているのか。(6/19、鈴木) → 他国の行動や対応について我が国として何か情報収集しそして分析をする、という立場にはない。(岸田)

      6.米軍等行動関連措置法/武力攻撃事態等及び存立危機事態におけるアメリカ合衆国等の軍隊の行動に伴い我が国が実施する措置に関する法律

      (審議なし)

      7.特定公共施設利用法/武力攻撃事態等における特定公共施設等の利用に関する法律

    • 日米安全保障条約及びその関連取極に従い、必要に応じて、民間の空港及び港湾を含む施設を一時的な使用に供する。

    • 米軍による使用が想定される空港は、全国で九十五カ所、主な空港としては、航空輸送の拠点となる空港として、成田国際空港、東京国際空港、中部国際空港、関西国際空港及び大阪国際空港などが規定をされている。沖縄県に関しては、12空港(久米島空港・・・)。これ以外にも、都営の調布飛行場や県営の名古屋飛行場など七空港、防衛省が設置、管理する千歳飛行場など六空港が列記されている。(6/1、岸田)

    • 特定公共施設利用法では、これら全国九十五カ所の空港について、総理大臣が、空港施設の管理者に施設の全部または一部を米軍、自衛隊に優先的に利用できるように要請できるほか、要請に従った利用が図られない場合は、総理大臣による指示や国交大臣を指揮し代執行する、航空機の機長等に対して航空機の移動を命じさせることもできる仕組みになっている。(6/1、岸田)

    • 米軍以外の外国軍隊を利用調整の対象にするとなっている。この外国軍隊とはどこを指しているんですか。(6/1、穀田) → 武力攻撃事態等で我が国を支援する国でございまして、米軍以外の外国軍隊ということでございます。(岸本)

    問題点

    • 民間空港だとか港湾だとか、それこそ自衛隊と米軍が一時的に使用するという形で、結局、住民全体をいわば軍事基地化に招いていきかねない、そういう事態になるということが一つの重大な問題だと思うんですね。また、この問題は、単なる民間空港の利用というんじゃなくて、排除の権限もある、総理大臣の権限もある、という中で起きている、国民全体にこの問題が大きなかかわりを持ってくるということだ。(6/1、穀田)

    8.海上輸送規制法/武力攻撃事態及び存立危機事態における外国軍用品等の海上輸送の規制に関する法律

     (審議なし)

    9.捕虜取扱い法/武力攻撃事態及び存立危機事態における捕虜等の取扱いに関する法律

     (審議なし)

    10.国家安全保障会議(NSC)設置法

    国家安全保障局は、昨年一月七日に発足。それ以降、総理、副総理、官房長官等の閣僚の御意向を体し、外交、安全保障に関する諸課題について、関係省庁間の縦割りを排し、政策に関する企画立案、総合調整を戦略的な視点から遂行するという業務を行っている。具体的には、装備移転三原則の策定、昨年七月一日の安全保障法制の整備に関する閣議決定に基づき今国会に提出した平和安全法制の法案策定等の安全保障に関する制度面の整備について、調整役としての役割を担っている。 五月二十五日時点で、国家安全保障局には七十三名の職員が勤務。与えられた人員の中で課せられた役割を果たすべく、日々努力をしている。国民の御期待に応え、国家安全保障局が与えられた任務を遂行していくために、体制が常に整備されていくことが重要であり、今後も必要に応じ、体制整備を検討していきたい。全保障会議設置法等の一部を改正する法律の施行に伴い必要な経費十一億六百四十八万円は、国家安全保障局の設置等に要する費用の不足を補うもの。(5/25、山崎政府参考人)

    11.国際平和支援法/国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律

    非戦闘地域

    これまでの自衛隊の活動地域(非戦闘地域)

    • かつての非戦闘地域につきましては、いわば自衛隊がそこに所在する間は戦闘行為が行われない、例えばサマワでは半年という期間、というふうに認定した。しかし、実際は、さまざまな場所で活動する。サマワの中でも一定の地域で活動する場合、そこで二週間活動する場合は、その二週間を通じて戦闘現場とならないということが見込まれる、というのが今回の考え方。(7/10、安倍)

    • イラク特措法は、自衛隊の活動地域を非戦闘地域に限定し、戦闘が行われるに至った場合や戦闘行為が予測される場合には、現地部隊の指揮官が活動を一時休止し、避難すると規定していた。正当防衛または緊急避難に該当する場合には人に対して危害を与える射撃を行うということで、自己保存型の武器使用ができる。(7/10、中谷)

    • 訓練では、「至近距離射撃と制圧射撃(隊員が連射で一定時間、複数または単数の目標に対して射撃を行うこと)を重点的に練成して、射撃に対する自信を付与した。「多くの指揮官に共通して、最初の武器使用が精神的にハードルが高いのではないかとの危惧があった。」「最終的には「危ないと思ったら撃て」との指導をした指揮官が多かった。(7/10、穀田、中谷)

    新法案の非戦闘地域

    • 今回の安保法制は、自衛隊による米軍への補給や輸送など軍事支援活動について、これまでの非戦闘地域という枠組みを撤廃して、現に戦闘が行われている現場でなければ支援活動を実施できるとしています。(7/10、穀田)
      (分かりにくいので解説)非戦闘地域以外でも現に戦闘が行われていない現場=戦闘地域の中で、その時点でたまたま戦闘が行われていな場所。

    • 派遣地域は防衛大臣が指定する。指定の際に「円滑、安全に活動できる場所」とする(から安全は確保される)。(6/15、中谷)

    • そして、非戦闘地域の枠組みを変更したことにつきましては、これは昨年の七月の閣議決定におきまして、自衛隊の活動の実体験や国連の措置の実態等を勘案して、憲法との関係では、他国が現に戦闘行為を行っている現場ではない場所で実施をする補給、輸送などの我が国の支援活動については、他国の武力の行使と一体化するものではない、その判断に至りました。 これを受けて、非戦闘地域といった枠組みを設けずに、現に戦闘行為が行われている現場では活動しないということといたしました。これまでと今回の違いにつきましては、まず、戦闘地域との考え方では、「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」との法律上の規定を厳格に解して、一たび指定すると柔軟な活動ができないおそれがありました。 それを機動的に設定するということで、活動をする区域を実施区域というふうに決めまして、「そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる」という要件がなくても、防衛大臣が、自衛隊の部隊等が活動を円滑かつ安全に実施することができるようにということにしたわけでございまして、これは、常に情勢等を踏まえた判断が行われて、 安全確保が図られるとともに、機動的に実施区域を指定することによって柔軟な活動が可能となるというふうにするためでございます。(6/29、中谷)

    問題点

    • 戦闘行為が行われないと見込まれる場所を指定しても、現にイラクでは、非戦闘地域とされた自衛隊の宿営地に対する攻撃が繰り返され、そして、そのことを実際何の検証もしないで当時と同じような説明を繰り返している(7/10、穀田)

    • 今回の法案審議でも、危なくなったら活動を休止し避難する、武器の使用は正当防衛、緊急避難に限られると説明しています。しかし、今回の法案は、非戦闘地域の枠組みをなくし、戦闘現場以外での米軍への兵たん支援を可能とするものであります。しかも、治安維持活動まで実施可能とし、自己保存にとどまらず、任務遂行のための武器使用まで認めている。こうなりますと、殺し殺される状況になる危険は明白だ。(7/10、穀田)

    • 非戦闘現場であれば支援が可能なんだということになりつつあるようですけれども、非戦闘現場というものが突如として戦闘現場になるということもあり得ることも考えられますし、従来のようにあらかじめ安全な実施区域を定めておくという制度に比べて、日本が戦闘に巻き込まれていく、そういう危険性というものがかなり大きくなってきているのではないか、ここは危惧されるところであります。(7/6、落合、参考人質疑)

    「一体化」の回避

    政府の主張

    • 新法では、自衛隊の活動範囲が拡大し、戦闘行為と一体不可分である兵站活動、米軍の武器等防護、他国領域内での敵基地攻撃が可能となる。

    • 戦闘現場でなければ輸送艦も空母も防護しうる。空母の艦載機が爆弾ミサイルを搭載して戦闘現場に飛び立っていく場合も空母が戦闘現場になければ自衛隊はこの空母を防護できる。

    問題点

    • 今度の法案で、非戦闘地域という概念を取り払い、自衛隊の活動範囲が拡大をし、そこで戦闘行為と一体不可分である兵たん活動を行う、また、米軍等の部隊の武器等防護、こうした武器使用の権限が拡大すること、そして、集団的自衛権行使による他国領域内での敵基地攻撃についても憲法解釈上は可能だとなっているが、これらは憲法九条の一項、二項に反していると考える。(6/4、大平)

    • 『弾薬も提供する』とか、『発進中の航空機の給油もする』とか言われますが、常識的に考えれば一体化してます。(木村)→人を殺傷したり物を破壊したり等行為が行われる現場でなければよいと評価した。(黒江)

    • 自衛隊は他国の軍隊の指揮命令を受けるものでなく、我が国の法令に従って自ら判断し活動するものだから、一体化ではない、という言い訳がある。しかし、99年の議論で佐藤防衛局長は、発進準備中の戦闘機に対する給油、整備については実際のオペレーションは非常に専門的で秘密もある。整備員がクルーと一体になって運用するのが軍事上の常識、と答弁している。アメリカ軍の発進準備命令のもとでアメリカ軍と一体となって給油、整備をやるということではないか。(7/1、木村)→我が国が主体的に判断して実施することが可能と認識している。米側の作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油、整備も含めて幅広い後方支援が期待されており、ニーズは確認しているが、あくまでも運用は主体的に行う。(中谷)

    • 戦闘機がより多くの弾薬や兵器を乗せて出撃できるよう、離陸時の油を少なくして離陸し、空中で空中給油機か給油する。空中給油機は攻撃能力や戦闘能力を強化するためのものだ。米軍が作戦を作り、米軍の出撃命令のもと、個々の戦闘機に対して空中給油を行って攻撃能力を強化する、これが武力行使と一体でないとなぜいえる。(7/1、木村)

    • アメリカの部隊が最前線でドンパチやって、日本が後ろであらゆる手伝いをする。露骨な戦争法案である。(6/4、小林)

    • 兵站が軍事攻撃の標的になる、軍事の常識だ。自衛隊が兵站をやっている場所が戦場になる。(6/17、志位)→だからこそ安全な場所を選び、奪われない場所を選んで後方支援する。(安倍)

    • 兵站なしに武力行使はできないから武力行使と一体化だ。後方支援と呼ぶ活動は国際的には兵站ロジステックで、それは武力行使と一体であることが世界の常識だ。(6/17、志位)→一体化論は国際法上の概念ではなく、憲法が禁止する武力の行使にあたらない後方支援である。(安倍)

    • 弾薬提供ですとか、あるいは戦闘作戦行動のための発進準備中の航空機に対する給油や整備も可能、そういう内容になっておるようですけれども、まさにこれについては、武力行使との一体化と大きくつながっていく。武力行使と一体化しているような存在に対しては、攻撃が加えられるということも当然十分あり得るわけですから、我が国がやはり戦闘に巻き込まれていくという危険性が大きくなってくるであろうというふうに危惧されるものであります。(7/6、落合参考人)

    • 今回の法案によって、こうした軍事掃討作戦を行う米軍に対して弾薬を提供することが可能になる。日本が提供した弾薬を使って米軍が人を殺傷することになるわけです。これが武力行使との一体化でなくて何なのか。これが許されるというんだったら、一体化の議論など全く意味は持たないということになってしまいます。(7/13、赤嶺)

    捜索救難活動

    政府の主張

    • 捜索救難活動は人道的な活動である。遭難者が見つかった、救助にもう当たっているなどの救助活動を行っている現場が、戦闘現場であっても(になっても)救助を継続できる。

    米軍の規定

    • パイロットその他の航空機搭乗員は高度な訓練を受けていて簡単に育てられないから、回収してきてまた戦ってもらう。階級やスキルが高ければ高いほど多くの情報を持っていて、敵の捕虜になって尋問を受けることで失われるものも大きいから、捕虜にならないように回収に行く。捜索救難活動は米軍の士気の維持に不可欠な任務。かつ戦闘現場を移動するので大きな危険を伴う活動である。

      問題点

      • 自衛隊には装甲付の救急車両がない。医者の資格を持つ要員は部隊に一人いるかいないか。衛生兵が包帯、テープなどの貧弱な用具を使って医療活動をすることになる。

      • 自衛隊がなぜ、米軍のパイロットを救出するために、戦闘現場に軽装備で戦死のリスクまで冒して行くのか。米軍自身の活動をなぜ自衛隊にさせるのか。



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