安保法案に関する論点整理【衆議院】その2

    安保法案に関する論点整理【衆議院】その2

    国会でいったい何が話し合われているのか、政府はなにをやろうとしているのか、
    野党は何に反対しているのか、法案が通ったら日本はこれからどうなるのか、
    知るための一助となるよう、ここに安保法案の論点を整理し、テーマごとにまとめました。

    ■■我が国の防衛■■

    黒字部分は野党と参考人の発言/赤字部分は政府側答弁緑字部分はサイト作成者の補足解説

    ◆安全保障環境の変化

    政府の主張

    歴代政府の憲法解釈を変更し集団的自衛権の行使を認めた根拠として、「日本を取り巻く安全保障環境の根本的な変容」を挙げている。

    北朝鮮

    • 核実験3回/日本全域を射程におさめ得る弾道ミサイル、ノドンを数百発保有し、配備している。(ノドンミサイル用の発射台は最大50台、移動式で探知困難。一台にミサイル5〜6基再装填可能。最悪250〜300基存在)/奇襲的攻撃能力を含む弾道ミサイル部隊の運用能力が向上している。/ミサイルの長射程化(人工衛星と称するミサ入り発射あり)、高精度化に技術進展/大型長距離弾道ミサイルの可能性あり/潜水艦発射弾道ミサイルSLBMによる打撃能力の多様化。小型核弾頭搭載可能性あり。(米国国防総省)

    • 平成25年4月10日、労働新聞、東京、大阪、横浜、名古屋、京都の地名を挙げた上で、日本の全領土は我々の報復攻撃の対象になることは避けられないと恫喝をしているのです。(6/26、今津)

    • 核施設への空爆に見積では、40万人の米軍兵力の投入、米軍の死傷者は3万人、韓国軍の死傷者45万人、百万人以上の民間人が死傷する、と見積もられていた。北朝鮮への軍事的な選択肢はありえない。間違ってもアメリカにそのような選択肢を取らせてはならない。(6/29、赤嶺)

    • 米国国防総省の報告書「切迫した危機の存在が、北朝鮮国内で現在の国家体制を合理化するのにつかわれている。危険だ危険だとあおって自分たちの国家体制を合理化するのに使っている。軍事的に圧力をかけるやり方は、北朝鮮国内での合理化を後押しするけっかになる。冷静な外交交渉と非軍事に限定した措置によって、核を放棄する方向に導いていくことが重要だ。本格的な武力紛争が起きれば、韓国、沖縄をはじめ、在日米軍基地、米軍に対し兵站支援を行う自衛隊基地は、ただちにミサイル攻撃の標的になる。(6/29、赤嶺)

    • 1993北朝鮮がNPTから脱退した。当時アメリカは核施設の空爆を検討したが、報復攻撃により甚大な被害が発生すると予想され、日本の支援体制も不十分だったので実行しなかった。翌年、カーター元大統領が訪朝して米朝合意の枠組みができた。

    中国

    • 中距離弾道ミサイル、短距離弾道ミサイルが日本を射程におさめている/残存性、即応性の向上。射程延伸、命中精度向上、弾道の機動化、多弾道化。/巡航ミサイル、核兵器やミサイル搭載可能はH6爆撃機/2015年度予算の国防費は、16兆9千億円、日本の国防費の3.4倍。/南シナ海で強引なスピードで埋め立て工事を進め実効支配をすすめている。/習近平主席は「広大な太平洋には中米二つの大国を受け入れる十分な空間がある」

    • 日米安保は抑止力として非常に機能しており、中国は日本への手出しをためらっている。領海侵犯を繰り返す、レーダー照射事件、戦闘機の異常接近、防空識別圏の設定、これをトータルで読むと、東シナ海において日本と摩擦を起こさないために、危機管理のメカニズムを話し合って、尖閣諸島の領有権については、事実上の棚上げにしたい、という中国の狙いがある。東シナ海で中国が戦う相手は、日米。世界的な紛争にエスカレートする可能性がある。そうすると国際資本が中国から逃げ出す。天安門事件の二の舞になる。その危機感はすごい。中国は東シナ海で紛争を起こさないように必死になっている。マスコミが言うように今にも戦争がはじまりそうな状態は一切ない、安定している。(7/1、小川参考人)

    中東・イスラム諸国

    • イスラム過激派にとってこれまで日本は全く視線外であった。しかしエジプトでの安倍総理の2億ドル供与発言により一気にイスラム過激派の視野に日本が入ってきた。それで後藤健二さんを殺害する事態に陥った。日本の自衛隊がアメリカ軍の後方支援で中東かどこかに行った場合、日本がイスラム教の国にとっての敵であるという認識を持つ可能性がある。(7/1、鳥越参考人)

    • ISILは、非常に凶悪、残忍かつ勢力も非常に強いところでございます。ISILが中東全域の支配をもくろんでいることであります。北アフリカのボコ・ハラム、ソマリアのアルシャバブ、イエメンのAQAP、そういうところを傘下に置いて、より広い中東を支配しようとしている。日本が、周辺諸国に資金援助をするということ、それから、万一ISILが日本を名指しして本当にあのおどしどおり攻撃をしかけてきたときには、しっかりと身を守る体制をつくって、そして彼らの意図をくじかせるということが最も大事だと思っております。自衛隊が陸上でISILと戦闘するような場面は全く想定いたしません。一番大事なのは、やはりISILに参加する若者が後を絶たないことでありまして、その大きな理由が、彼らが職を持っていない、生活に不安を持っているからであります。日本の資金援助は、周辺諸国において就業機会を若者たちに与えるというところで、さらに増加していくべきだと考えております。(7/13、岡本公述人)

    テロ

    • 2003年にイラク戦争。2004年にマドリッド列車爆破事件で191名死亡。2005年ロンドン同時多発、列車とバスの爆破。スペインとイギリスで自爆テロ。これはアメリカが仕掛けたイラク戦争への報復として。イスラム原理主義のテロリストは、新幹線、原発を標的とする可能性がある。特に新幹線はセキュリティが無いに等しい。誰かが爆弾を持ち込んで爆破したら千人を超える犠牲者がでる。イスラム教過激派は世界でアメリカと対立して紛争、戦争、テロを起こしている。その中に日本が集団的自衛権でつっこんでいくことの危険性を考えたい。(7/1、鳥越参考人)

    • 世界のテロ発生件数の推移。2003年、イラク戦争、アフガニスタンの戦争もあり、2003年が1262件。2014年のデータですが、16818件。十倍以上になっている。他国の紛争の後ろからちょっとでも行ったら、みんな、日本人も日本もテロに狙われる率が高くなるんじゃないか(7/8、辻本)

    サイバー

    • アメリカは、自国がサイバー攻撃を受けた場合、相手国に武力行使を含むあらゆる措置を講じる権利があるといっている。アメリカがコンピューターウィルスなどのサイバー攻撃を受けた場合も、日本が集団的自衛権を行使する可能性があるか。(6/26、井坂)→一般論として、サイバー攻撃が武力攻撃の一環として行われた場合に自衛権を発動して対処することが可能であると説明してきているが、他国に対する武力攻撃が行われてその一環としてサイバー攻撃が行われた場合、かつ新三要件を満たすならば、我が国として武力攻撃が可能だ。(中谷)

    問題点

    • 外国からの武力攻撃の危険が迫った場合どうするのかという漠然とした脅威論で一般国民を説得しておりますけれども、その想定する事態は、これまでの国際関係から考えて極めて不自然、不合理な内容であります。(7/6、石河、参考人質疑)

    • 与党の皆さんは『安保法制が通れば日本はより安全になる』とおっしゃるけど、そんな保証は全くない。仮に安全保障環境が以前より危険だと言うなら、日本の限られた防衛力を地球全体に拡大するのは愚の骨頂。サッカーで自陣のゴールが危ないのに選手を敵サイドに分散させるチームがありますか?(6/11、田村)

    • 米国に軍事協力をすれば、日本の安全保障にも参加してくれると希望的観測を抱く人もいるようだけど、それは甘い。米国は自分の国のためにしか軍隊を動かしません。どこの国もそうです。さらに米国は本格的な軍事行動に連邦議会の承認が必要で、大統領制下では議会が政府の言うことを聞くとは限らない。日本の国会承認とは全く違うものです。(6/11、田村)

    • あくまで我が国防衛だから合憲なんだとする政府の説明。ホルムズ海峡の機雷掃海もどうしても集団的自衛権でやりたい、また燃料不足でも、また冷蔵庫が空になっても武力が行使できる、またサイバー攻撃でも武力行使ができると、拡大解釈の余地がどこまでもどこまでも広がりつつある。限定容認と言いつつ、新三要件が歯どめとして機能しそうにないことが今回の安保法制に内在する根本的な問題である。状況を見て総合的な判断をする、と言って、時の政権に、安倍総理じゃないですよ、その後もそうです、時の政権にフリーハンドを与える、こういうものになっていることが問題だ。(6/22、柿沢)

    ◆積極的平和主義

    • 政府といたしましては、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、・・・国際社会が国連の安保理決議等に基づいて一致団結して対応するようなときに、我が国が当該決議に基づいて正当な武力行使を行う他国軍隊に対して支援活動を行うことが必要な場合があると認識しております。そのような観点から、・・・国際社会の一員として、補給、輸送といった協力支援活動を行うことを可能とするための一般法として、国際平和支援法を新たに整備することにいたしました。・・・対外的に明確なメッセージを発するということで、国全体の、そして国民のリスクを下げる、これは国際社会と連携しつつ、世界の平和と安定のために積極的に貢献するということを目指しているわけでございます。(6/29、中谷)

    • 今日、安全保障環境が大変厳しくなる中にあって、どの国も、米国ですら、みずからの国を一国のみでは守ることができない、これが国際社会の常識となっています。こうした国際情勢の変化の中で、まず、我が国として、どのように我が国をしっかり守っていくのか、切れ目のない対応をどのように整備していくのか、これをしっかり考えなければなりません。あわせて、国際社会の一員として、しっかりと国際社会の平和や安定に貢献していこう、こういった内容をこの一連の法制の中に盛り込んでおります。国際社会に貢献するということ、これは積極的平和主義の取り組みとして大変重要なことですが、こうした取り組みを行うことによって平和な国際環境をつくり、そのことがひいては我が国の平和や安全を守っていくと考えます。(6/29、岸田)

    • 国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、例えば、国際社会の平和及び安全が脅かされて、国際社会が国連の安保理決議等に基づいて一致団結して対応するようなときに、我が国が当該決議に基づいて正当な武力行使を行う他国軍隊に対して支援活動を行うことが必要な場合があると認識しております。(6/29、中谷)

    • 日米新ガイドラインの目的に「アジア太平洋地域及びこれを超えた地域が安定」「日米同盟なグローバルな性質」を強調すると書かれている。安倍総理は米国議会の演説「国際協調主義に基づく積極的平和主義は日本の将来を導く旗印になる」と述べた。日本の平和主義の制約について言及がない。(6/29、小沢)

    • 積極的平和主義という名のもとに、直接日本とは関係ない紛争にも自衛隊がかかわって、武力行使を可能にしようという話が出てきておりますが、先ほど来いろいろ議論がありましたように、重要影響事態という概念はまことに曖昧模糊としておりまして、日本が、結局のところ、自国の安全とは関係ない問題にかかわっていって、従来の憲法九条の枠を踏み出すという危険が極めて大きいということで、そもそも日本の安全にとってなぜ集団的自衛権かという根本的な問いに全く答えられていないというところに不満を持っております。(7/13、山口公述人)

    • 私自身は、存立危機事態というものが想定されるような現実的なものが発生するのかどうかという点は相当疑問だというふうに思っているんですが、やはり危ないと思っているのは、結局、存立危機事態なんだよというふうに決めつけられて、どんどん日本が世界じゅうに出ていくというんですかね、積極的平和主義とかなんとかいいながら、気がついたらホルムズ海峡にいたりとか、いろいろなところに出ていっちゃっているという、それが一つの、まあ、使われてしまうといいますか、そこは相当危惧されるというふうに思っているんですね。(7/8、落合参考人)

    ◆今、できないこと

    • 日本のため公海上で警戒監視任務に当たっている米艦が武力攻撃を受けたとき、日本がこれを守ることができない。

    • 我が国近隣で紛争が発生し取り残された多数の邦人を米国の船舶が輸送している際に攻撃されたとき、日本人を守ることができない。

    • PKO参加中に自衛隊の近傍で我が国NGOが武装集団に襲われた場合、自衛隊はかけつけ救援できない。

    • 現状、ザイールで展開中のPKO。医療NGOも来ていて、そのNGOの車両が盗まれた。NGOからPKOに救援依頼があったが自衛隊は駆けつけ警護はできない。それでも自衛官は現場で何とか知恵を絞ってやっている。自衛隊がそばにいるのに邦人を救出できない、というのは人道的にも道義的にも厳しい。今回の法整備をすることで現場の自衛官のリスクを減らすことになる。駆けつけ警護の任務遂行、安全確保のために武器使用ができる。武器使用基準を法的に裏付けがあると、現場は非常にやりやすい。(7/1、折木)

    • 朝鮮半島有事:我が国に対する武力行使は発生していないものの、我が国を防衛している米軍艦艇が攻撃されることはありうる。現行では我が国は何もできない。我が国の存立危機にあたる明白な危険は生じうる。このような事態に対応できるようにしなければならない。(高村、6/11)

    専門家の意見

    • ホルムズ海峡に機雷が敷設され我が国の船舶の航海が阻害された場合、自衛隊が領土領海を超えて公海上で機雷掃海するのは個別的自衛権で説明がつく。(6/4、小林)

    • 日本人母子が調整動乱でアメリカ船舶で逃げてきたものを保護する行為は、個別的自衛権で説明がつく。(6/4、小林)

    ◆抑止力

    政府の主張

    日本自身が万全の備えをし、日米安保を強化することで、日本に対し戦争をしかけようとするたくらみをくじく力、すなわち抑止力が強化される。日本が戦争に巻き込まれるリスクはなくなっていく。(内閣ホームページ) 

    問題点

    • 敵国が日米の力を信じない、あるいは、それでもなおかつやるんだという覚悟をもっていれば抑止力は成立しない。このような抑止力は逆に緊張を高める要因にもなる。間違って撃っちゃったらそれが拡大する可能性もある。(7/1、裄V参考人)

    • 抑止力のジレンマ:抑止力を強化すれば相手国が不安感を覚えさらに相手国の武力が強化される。

    • 安全保障のジレンマ:軍備増強や同盟締結など自国の安全を高めようと意図した国家の行動が、別の国家に類似の措置を促し、実際には双方とも衝突を欲していないにも関わらず、結果的に衝突に繋がる緊張の増加を生み出してしまう状況。

    • 冷戦時代は米ソの力の均衡が保たれていたというが、1962年キューバ危機のように米ソが全面核戦争寸前までいったこともある。米ソの直接戦争はなかったが第三国への軍事介入がくりかえされ、ベトナム戦争やアフガニスタン侵攻など、米ソ以外の地で血みどろの戦争が繰り広げられた。力の均衡で平和が保たれていたというのは現実を見ない議論だ。(6/29、赤嶺)

    • 世界最大の軍事力を持っているアメリカでさえ、国内外のアメリカ国民の安全保持ができていない状態。むしろ、軍事力を持っていない、海外に軍事力を出さない日本の方が平和である。(7/8、石河参考人)

    • 今アメリカが行っている世界における軍事戦略、これが決して抑止力になっていない、むしろ、戦闘行為を起こす原因になっている場合が多い。(7/8、石河参考人)

    専門家の意見

    • 76年の防衛大綱:米ソの大規模な戦争は核抑止力があって起こりにくい、あるとすれば極東ソ連軍の奇襲のような限定小規模な侵略であって、それに独力で対処するため、陸上自衛隊18万、海上自衛隊約60隻、航空自衛隊439機の体制で日本防衛をやっていた。アメリカの極東における最大拠点である日本を守ることがアメリカの世界戦略とも一致していた。(7/1、裄V参考人)

    • 外交と抑止力をいかにしてうまく組み合わせるかということが重要である。十分な外交交渉がない中で軍事力だけを強化すれば、相手の不信感を呼んで軍拡競争になる。ところが、十分な外交交渉あるいは外交による平和の努力をした上で、背後に十分な力があれば、それは日本の影響力が高まるということにもなるかもしれないわけですね。(7/8、細谷参考人)

    • 抑止力は経済でもできますし、もちろん外交でもできる。日本の国内にあるアメリカの施設は、やはり日本に対して安全をもたらすよりも危険をもたらす可能性の高い施設である。(7/8、石河参考人)

    • 一国単位で抑止力を持とうとすれば、膨大な国防費が必要になりまる。重要なのは、いかにして日本が強大な軍事力を持つかということではなくて、軍事費をふやさずとも、安全保障協力を深めることで戦争の可能性を防ぐ。その安全保障協力をするためには、一定程度の、日本がアメリカと安全保障協力をし、また、日本はオーストラリアなどの諸国とも安全保障協力をすることによって、つまり一国単位の抑止ということではなくて、この安全保障協力をすること自体が、この地域での紛争が起こる可能性というのを恐らく低減していくんだろうと思います。(7/8、細谷参考人)

    ◆徴兵制

    • 「徴兵制は意に反する苦役」は世界的には通用しない。1.政府は徴兵制を憲法違反と解釈し続けている。2.現代は徴兵制をほぼ無用にしている。無用論、不要論、非現実論。ドイツ、イタリアも兵役制。3.防衛大学校の学生は増え続けている。(6/22、西参考人)

    • 憲法第十三条、第十八条などの規定の趣旨から見て、憲法上許容されるものではないと解釈する。(6/19、菅)【18条「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない。又、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」13条「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」】

    • 新安保法を「合憲」と主張する憲法学者三名がすべて、徴兵制は憲法違反とする政府の解釈は間違いだ、徴兵制はできると言っている。「政府の徴兵制に関する解釈はおよそ世界的に通用しない解釈と言わなければならない(西修)」、「意に反する苦役だから徴兵制はできないという議論は私は反対であります(百地章)」、「徴兵の制度と奴隷制、強制労働を同一視する国は存在しない、徴兵制の導入を違憲とする理由はない(長尾一紘)」と言っている。(6/19、辻本)

    • 日本の国において、徴兵制は憲法違反だと言ってはばからない人がいますが、そんな議論は世界じゅうどこにもないのだろうと私は思っています。国を守ることが意に反した奴隷的な苦役だというような国は、私は、国家の名に値をしないのだろうと思っています。徴兵制が憲法違反であるということには、私は、意に反した奴隷的な苦役だとは思いませんので、そのような議論にはどうしても賛成しかねるというふうに思っております。(石破、平成14年5月23日、衆議院憲法調査会小委員会)

    • 自民党の改憲草案には、「国は、国民と協力して、領土、領海、領空を保全し」と書かれている。自民党は、国民に協力しろと言っている。今できないと言っているけれども、今回と同じような手法で、徴兵制についても、時代環境が変わった、自衛隊員が足らぬ、安全保障環境が危ないといって、環境変化によって徴兵制を、一部限定的徴兵制とかを編み出してやろうとするのではないか。(6/19、辻本)

    ◆日本の防衛

    先の大戦

    • 先の大戦:三百十万人の国民が亡くなり、二百十兆円の税金をかえて、ああいう戦争が起こって、その反省に立って、戦後憲法ができて、すべての制度がその戦争の反省に立って我々はスタートしている。

    • 村山談話「我が国は、遠くない過去の一時期、国策を誤り、戦争への道を歩んで国民を存亡の危機に陥れ、植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた。」

    日米安保

    • アメリカの軍隊、基地が日本を守る、このように言われておりますけれども、実態は、アメリカの世界戦略の中に日本が組み込まれて軍隊が配備されている、そして、アメリカの軍隊、軍事施設、軍事予算の削減の補填として日本の自衛隊が使われている、このように認識しております。(7/8、石河参考人)

    • 日本の米軍基地は、1)出撃機能。基地があり、兵隊がいて、飛行機があり船がある。2)補給兵站(ロジスティック)機能。3)情報、インテリジェンス機能。この三拍子そろった「本社」並みの機能をもつ。横浜鶴見の燃料像施設はアメリカ国防省管内で二番目、長崎県佐世保は三番目、加えて青森県八戸に7万バレル貯蔵。在日米軍の第七艦隊はアフリカ喜望三峰まで、地球の半分ぐらいをカバーする。日本のアメリカに対する貢献、日米同盟への貢献は非常に大きく、まさしく対等の日米同盟だ。(7/1、小川参考人)

    • 日本国だけで今の安全保障体制を維持するためには、四倍を超える我々の、皆様方の貴重な税金を使わなければならないという試算も出ているところであります。だから、日米同盟を基軸とした同盟関係をしっかりとして、そして、先ほど岡本さんが言ったように、みんなで守り合おう、そうやって自国を守る、そして同時に国際的な責任を果たしていくということが大切だ(7/13、今津)

    • この地域には世界じゅうの大きな兵力を有する国家が集まっております。世界トップファイブの兵力国のうち、三つまでがこの地域におります。そして、日本は、その中で、防衛費をGDPの対比でいえば世界で百番目以下という非常に低い負担で、しかも、どこの国からも侵略されるおそれをなしにこれまでやってきているわけであります。これは、日本が集団的自衛権を放棄したからではなくて、アメリカとの日米安保条約によって、米軍が、仮にも日本に侵略の動きを見せる国があれば、それに対してみずからの報復意思というものを示すということで保たれてきている平和でございます。(7/13、岡本公述人)

    • アメリカは年に1,2回公務員給与が遅配したりするが、アメリカは第二次大戦後は世界最大の富を積んだものが、戦争垂れ流しで、戦費破産状態、だから日本に世界の警察を手伝ってほしい。日本は戦費破産の二の舞をこうむることになる。だから愚かな政策だ。(6/22、小林参考人)

    我が国防衛

    • 私は、結局、平和を維持するには、不断の努力によって極力敵を少なくすることしか平和を維持することはできないということが歴史から学んだ大原則であって、外交努力で危険を排除していけるものと考えております。また、武力によらない紛争解決機構を充実させることも平和憲法を掲げる日本の重要な役割であり、日本が国際社会において名誉ある地位を占めるためには、武力によらない平和を実現することこそが唯一の道であると確信しています。(7/6、石河参考人)

    • 我が国伝統の専守防衛には、ODA、国連の財政支援、PKO(警察支援)、災害派遣(消防支援)があるが、日本の自衛隊は引き金を引かないという信用で、危険を招かないという実績がある。今度それを取り払ってしまうと、引き金を引く軍隊としての扱いを受ける。我々のこの専守防衛の伝統プラスその他の国際支援を重ねていくことこそが、緊急に大変であるならば、我が国をより安全にする手法であると私は考える。(6/22、小林参考人)

    • 日本の領域を守ることは、基本的には個別的自衛権によって対処すべき課題であります。

    • (安倍総理のインターネットでの演説)一般の家庭でも戸締まりをしっかりしていれば泥棒や強盗が入らない。また、その地域や町内会でお互いに協力し合って、隣の家に泥棒が入ったのがわかったらすぐに警察に通報する、そういう助け合いがちゃんとできている町内は犯罪が少ない。これが抑止力なんですね。しかし、門の外まで出張っていって悪者退治に加わることは、自宅の安全に資する行為ではないと私は考えます。また、近隣の人々と協力し合うことは、地域の安全にとって極めて重要であります。日本が協力し合う近隣とは、もちろんアメリカを中心とするわけでしょうが、韓国や中国を抜きに町内会は構成できないはずであります。自衛力を整備しつつ、隣家との利害の違いは認識した上で、隣家との共存のために話し合いをすることこそ、自宅の安全を高める道ではないのでしょうか。

    • 安倍首相のインターネットでの演説(7/13、一般の家庭でも戸締まりをしっかり・・・)は、集団的自衛権の行使の理由を説明するものではなく、全く逆に、専守防衛と地域的協力が必要な理由を説明するものでありました。(7/13、山口公述人)

    戦後日本が他国の戦争に巻き込まれずに済んだ理由

    日米安保条約のもと、日本が憲法九条により集団的自衛権の行使を禁止していたからでありました。一九六〇年代末のベトナム戦争への対応として、韓国は、米韓相互防衛条約のもと、アメリカにベトナムへの出兵を求められ、韓国軍はベトナムで殺し、殺されるという悲惨な経験をしました。集団的自衛権の行使を否定していた日本は、ベトナムへの派兵など全く考慮する必要もなかったわけであります。

    二十世紀後半に非常に大きな効果を発揮した日本的平和路線が二十一世紀にも有効かどうか、今問われております。学者の言うとおりにすれば国が平和になるなどとおごったことを言うつもりはない。逆に、政治家の言うとおりにして国が愚かな戦争に突入した経験もあるわけである。戦後日本を振り返れば、政治家と学者が異なった観点から議論をし、それらの議論が正反合の関係で日本的平和国家の路線をつくり出したという成功体験があることをかみしめるべきだ。(7/13、山口公述人)

    戦後日本の安全保障政策の展開 − 1960年、安保騒動。

    岸信介首相は、憲法九条を改正して国軍を持つことを宿願とし、安保条約の改定を図った。空前の規模の抗議活動が起こり、数十万の市民が国会や首相官邸を取り巻いた。人々は、岸首相が体現する戦前回帰、戦後民主主義の否定という価値観に反発して、未曽有の運動を起こしました。 安保条約自体は衆議院の可決により承認されたが、岸首相は退陣を余儀なくされた。

    岸首相の後を襲った池田勇人首相は、憲法改正を事実上棚上げし、経済成長によって国民を統合する道を選択した。この路線は、以後の自民党政権にも継承された。安全保障政策においても、憲法九条を前提とし、これと自衛隊や日米安保条約を整合的に関係づける論理が構築された。 それが専守防衛という日本的平和国家路線。憲法九条のもとで、日本は自国を守るためだけに必要最小限の自衛力を持つという原理が確立した。海外派兵はしない、集団的自衛権を行使しないという原則は、そこから必然的に導き出されるものであった。(7/13、山口公述人)

    ◆国際貢献

    • 国際貢献をどうするか、は憲法の枠内で何ができるかを考えるべきで、環境変化に軍事的に答えなければいけないから憲法の中で何でもやっていいわけではない。必要なら憲法改正が王道だ。(6/22、阪田)

    • 国際的な平和と安定にどう貢献していくか。恒久法にすると、迅速に対応できる。法を根拠とした訓練、備えができる。国際社会の中で早く手を挙げることができ、その際、自衛隊が得意なミッションを早めに選択できる(より安全な地域を確保できる)。ただし歯止め、発動要件の整備が必要。(7/1、伊勢崎参考人)

    • (機雷掃海について)国際貢献の観点から遺棄機雷を除去しに行くときは、他国に先駆けていってもいい。事実上の停戦になった段階で、遺棄機雷を掃海に行く、我が国の掃海艇の能力を生かし、国際貢献になり、責任も果たす。これは現行法でできることだ。(7/1、長島)



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