安保法案の論点整理【参議院】その3

    参議院
    「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」
    審議内容の論点整理

    ■政府の情報隠し

    ◆シビリアンコントロール

    参照リンク:「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)及び平和安全法政関連法案について

    【わかりにくいので解説:法案成立前に、防衛省内で安保法制に基づく具体的施策が検討され、法案成立時期や自衛隊の新たな任務の実施時期までスケジュール予定がたてられていた問題。しかも、その内容を中谷防衛大臣が把握していなかった。シビリアンコントロール(文民統制)がなされていない、といった問題。】
    【いきさつ】
    5月14日に法案の閣議決定。
    5月15日に、中谷防衛大臣から省内の幹部に対し、自衛隊員に周知を行うよう指示。
    5月下旬に文書が作成された。
    5月25日 中谷防衛大臣、統合幕僚長、事務次官の三名による会合で、翌日の会議で法案の説明を行うという説明あり。ただし中谷防衛大臣は資料の中身を確認していない。
    5月26日 統合幕僚監部が開催したTV会議で、陸海空指揮官350名に、この資料(プレゼンテーション)を用いて、法案とガイドラインが説明された。同日、衆議院の本会議で法案の審議が始まった。

    【8/11 小池晃(日本共産党)】

    小池:国会審議の最中に今後の方向性が検討されていたら大問題ではないか。
    中谷:安保法案については国会の審議が第一でございますし、法案が成立したのち、これは検討を始めるべきものでございます。(実際には、閣議決定の翌日に中谷防衛大臣の指示で具体的内容の検討が始められていた)

    【8/19 小池晃(日本共産党)】

    小池:法案の成立前にはやらないといった検討をやっていたのは大問題だ。
    中谷:前回の発言はわたくし中身を確認してないわけでございまして、一般論で発言をしました。シビリアンコントロールにつきましては、法案が閣議決定されたので、正しく、この内容を分析・研究をすることは当然ですし、各実施は自衛隊が行うわけです。

    【記載されたスケジュール】
    平成27年8月に法案成立。
    平成28年2月に法施行。
    平成28年3月から新法制に基づく運用開始(南スーダンPKO、警護、陸上輸送、救出)

    【内容】
    当該資料は統合幕僚監部が、日米防衛のための指針及び平和安全法案について、その内容を丁寧に説明し、あわせて法案成立後に具体化をしていくべき検討課題をあらかじめ整理し、主要部隊の指揮官等に対してそれらを理解してもらうことを目的に、内部部局と調整をしながら作成した。〔新ガイドライン〕にも、あるいは法案にも書かれていないような中身がたくさん盛り込まれている。

    【同盟調整メカニズム】
    強化された同盟内の調整。最大の焦点は「同盟調整メカニズム」及び「共同計画策定メカニズム」。 運用面の調整:軍軍間の調整所への要員の派遣を含む日米間調整の検討。

    【米軍等を防護することが可能となる「我が国防衛に資する活動の例」】
    1. 重要影響事態での輸送、補給等
    2. 情報収集、警戒監視活動
    3. 共同訓練

    【南スーダンPKO派遣】
    法律改正に伴い「他国軍隊要因との宿営地の共同防衛」が実施可能になるとともに「駆けつけ警護」等がUNMISS(南スーダン)派遣施設隊の業務として追加される可能性あり。
    武器使用の権限は、「宿営地の共同防衛は自己保存型」「駆け付け警護は任務遂行型」
    自己保存型の武器使用は、憲法9条の問題にならないため、どのような場面でも行使できる。
    任務遂行型の武器使用は、国家に準じる組織が攻撃対象でない場合に限り行使できる(国家組織に対する武力攻撃は憲法で禁止された武力行使に該当する。相手が国家以外であれば憲法上問題はない)。

    小池:自衛隊の部隊行動基準、武器使用基準《ROE》について、国会ではいっさい意説明がなかった、「お答えすることは控える」だった。が、文書には《ROE》の整備を行うことは必要と書かれている。
    中谷:(統合幕僚監部としては)分析、研究の一環として、自衛隊の武器使用に関して細部事項について具体化し、また関連規則《ROE》の策定等を行うことは当然必要。

    【8/21小池晃(日本共産党)】

    小泉:戦力不保持を定めた憲法下で自衛隊が『軍』を自認することは、問題ではないか。
    中谷:便宜的な表現であり、問題があると考えていない。
    小泉:(軍軍間の)『調整』などというが、圧倒的な情報量を持っているのは米軍だ。自衛隊が平時から共同司令部の下で、米軍の指揮下に入ることになる。
    中谷:(自衛隊の活動は)わが国の国内法令に従って行われるので、自衛隊が米軍の指揮下に入ることは考えられない。
    小泉:内部文書では、戦争法案が来年2月に施行されることを想定して、来年3月に南スーダンPKO任務を実施するため、今年9月から準備訓練を行うとしています。しかし、南スーダンでは、政府軍と反乱軍との停戦協議は米国などが期限としてきた8月17日になっても最終合意にも至っていない。今回の安保法制で任務が拡大すれば、奇跡(今までPKO活動が無事故で済んだこと)ですむ可能性は非常に薄くなる。派遣される自衛隊員の命が危険にさらされる。
    中谷:(『駆けつけ警護』などについて)研究するが、やるかやらないかは法案が成立してから、決定する。
    小泉:内部文書には、『新法制に基づく運用』と書いてある。今の答弁は事実に反する。

    ◆防衛白書の英訳

    【8/11大塚耕平(民主党)】

    大塚:防衛白書の2013年版と2014年版には、日本語の文章は全く同じだが、英語版では表現が違う部分がある。2013版の英訳には、「日本が攻撃されるまでは何もしない」と書かれていた。これは憲法の精神と一致する。一方、2014版の英訳では、「(「日本が」が削除され)武力攻撃が発生した場合に日本が武力行使する」、となっている。日本語は全く同じなのに、英訳が異なっているのはなぜか。
    中谷:英語版白書2013年版は、憲法9条でも例外的に自衛のために武力行使が許容される、という認識のもとつくられた。2014年版は、昨年7月の閣議決定の結果をもとに訳出した。
    大塚:2014年版の英文には、存立危機事態(における集団的自衛権の制限)の説明が一切ない。
    中谷:新三要件を訳出すると冗長になる、専守防衛の記述の前にこの詳細を説明しているから繰り返さないこととした。
    大塚:存立危機事態の制限について英語版には書かれていない。冗長だからと大事な部分を削除したから、フルスペックの集団的自衛権を行使すると外国に理解された。 →理事会、2014年版英訳の和訳を提出すること

    ◆外国メディアの反応

    【7/28 大塚耕平(民主党)】

    5月18日『ミサイル攻撃があった後は、アメリカの防衛の為に日本は北朝鮮を攻撃する』インターナショナル・ビジネスニュースのタイトル。 CNNは、『日米の新しいガイドラインは、アメリカ及びその他の国を防衛するために、防衛することを日本に許容する』。 アメリカでこの問題に関心のある人たちは、日本の今度の法案が通ると、アメリカが攻撃されたら一緒に戦ってくれるというふうに、そういうふうに素直に受け止めている(アメリカの財界人、財務省官僚が同じく言及)。
    大塚:外国では、米国と他国を防衛するために日本が集団的自衛権を行使する、ととられている。
    政府答弁:国際法上の根拠と憲法解釈は区別して理解すべきである。
    岸田:海外メディアの中には様々な論評がある。日本の立場をしっかり説明する必要がある。新ガイドラインには憲法、法律の範囲内で行うと明記されている。日米両政府は理解している。

    【8/5 大門実紀史(日本共産党)】】

    大門:安倍内閣は、今までの自民党政権が取ってきた憲法上の立場、すなわち集団的自衛権の行使はできないということをできるというふうに百八十度逆転させた。その唯一の根拠が、日本を取り巻く安全保障環境の根本的変化、そして具体例として、日本の近隣、特に中国の脅威が盛んに宣伝されている。確かに、中国と日本の間、あるいは中国と東南アジアの国々との間には、領土領海問題がある。しかし、だからといって、安保法制、戦争法案、集団的自衛権、そういう話なのか。むしろ、そういう対応をする最も危険な軍事対軍事の対応になってしまう、エスカレートしてしまうと、その危険性が一番あるのではないか。

    ●テレビで自民党議員「中国が、南シナ海の埋立てを含めてそこを聖域化して、潜水艦からミサイルを発射する動きも出てきている」 → 実際は、中国の潜水艦のミサイルは運用開始されていないから発射する動きなどあるはずがない。

    ●米国の元太平洋軍司令官は「南シナ海を含むアジア地域に軍事的対立、危険性はない。島を軍事的に占拠して支配するには大規模な軍事作戦が必要で、中国がやる可能性は非常に小さい。ここの地域の話は、軍事的対立じゃなくて統治権の及ぶ区域をめぐる紛争であり、軍事対立よりもはるかに、はるかに低い水準の問題だと。どの国も軍事対立へのエスカレートを望んでいない、だから、この地域で紛争が起きつつあるという現実的危険性はない」と言っている。

    ●ウォール・ストリート・ジャーナルのマイケル・オースリン「東アジアにおける最も不穏な流れは、領土問題、北朝鮮問題、どれ一つを取っても、その解決に向けた前進が全くないことと。外交的なイニシアチブが 発揮されないで、より幅広い合意のための基盤となる二国間の問題も解決されていないと。逆に政治家たちが更にナショナリズムをあおり、その政治的立場を硬 化させている(2013年1月)」

    この指摘は、一年半たっても何も変わらないどころか、この安保法制、戦争法案をめぐって、かえってエスカレートしているというふうに思い ます。

    ◆イラク復興支援

    【7/29小池晃(共産党)】

    第一次イラク復興支援隊の活動中、
    4月に2回、宿営地近傍に迫撃砲弾が着弾、発射されたロケット弾が駐屯地内の地面に衝突したのち鉄製の荷物用コンテナを貫通して土壌に当たり宿営地外に抜けており、一つ間違えば甚大な被害。 自衛隊の車両にIED即席爆破装置、ロケット爆弾による攻撃。 こうした緊張状態の中でメンタルヘルスストレスチェックの結果約2割の隊員にストレス傾向が見られた。
    小池:サマワの非戦闘地域でこれだけがおこっていた。自衛隊の海外での活動を拡大する上において、直近の海外の活動の報告は必要不可欠だ。(公開資料において)なぜこの重要な問題を墨塗りにしたか。
    中谷:部隊の編制運用指揮系統は不開示としている。
    小池:ほぼ全ページが墨塗りも多い。存立危機事態の認定に特定秘密が含まれれば情報が秘匿される。政府が 全ての情報を客観的合理的に判断する、となっているが、墨塗りにされて、だれが客観的に判断できるか。
    中谷:必要な情報が公開されるよう努力する。特定秘密が含まれる場合は、秘密が漏えいとならないように工夫する。
    小池:特定秘密部分が肝心。それを出さないでどうやって国民は判断できるのか。

    ◆輸送品の中身

    【7/30 山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    安倍:航空自衛隊は、2004年3月から2008年12月までの間、イラク特措法に基づき、クウェートを拠点としてイラク国内の飛行場との間で、国連、米軍等の要員や事務機器、医療機器、車両、航空機部品、テント等を輸送した。これらの内容は、活動期間中や活動終了後に国会に説明、報告するとともに適切に公表した。
    山本:2009年10月、防衛省のデータによると、2004年3月3日から最後の空輸となった2008年12月12日までの空輸実績では、全体で46000人輸送された。国連の関係者はたった6%ほど、約60%以上が米軍や米軍属だった。
    中谷:御指摘のとおり、総人員が46479人、米軍人が約半数の23727人だった。
    山本:国連関係と言いながら、メーンは米軍の輸送に使っていたんじゃないか。
    安倍:あくまでもイラク特措法に基づく活動をしていた。
    山本:自衛隊がバグダッドまで輸送した兵士たちがその後何をしたのか、詳細まで把握しているか。
    安倍:輸送した米兵については、イラク国内において復興支援又は治安維持のいずれかの活動に従事していたというふうに認識をしております。
    山本:航空自衛隊がバグダッドに米軍兵士らの輸送活動を行った2006年から7月以降、それによって市民、米兵の犠牲者数、どのように変化していったか。
    ○政府参考人(上村司君) 米国国防省の数字では、2003年3月19日から2010年8月31日までのイラクの自由作戦全体の総数では、4424名の犠牲者が出ている。

    輸送内訳

    民間人犠牲者

    攻撃された救急車
    イラクでの犠牲者数をカウントしているNGO、イラク・ボディー・カウントのデータ:
    2007年の民間人の犠牲死亡者数24000人にも上っている。自衛隊のクウェートへの輸送が始まったのは2006年の7月以後の約一年間、開戦直後の空爆が激しかった頃を別にすると最もイラク市民の犠牲が多かった時期であり、米軍兵士の犠牲も一番多かった時期だった。2007年一年間での爆撃回数は1447回、テロとの闘いと言って先進国が始めた戦争によって、子供、女性、お年寄り、多くの市民が犠牲になった。
    「空自イラク派遣は憲法9条に違反」 名古屋高裁判断
    (判決文より抜粋) 「イラク国内での戦闘は、実質的には03年3月当初のイラク攻撃の延長で、多国籍軍対武装勢力の国際的な戦闘だ」「(活動場所であるバグダットは)まさに国際的な武力紛争の一環として行われている人を殺傷し物を破壊する行為が現に行われている地域」として、イラク復興支援特別措置法の「戦闘地域」に該当する」「現代戦において輸送等の補給活動も戦闘行為の重要な要素だ」「(空自の活動のうち)少なくとも多国籍軍の武装兵員を戦闘地域であるバグダッドに空輸するものは、他国による武力行使と一体化した行動で、自らも武力の行使を行ったとの評価を受けざるを得ない」「武力行使を禁じたイラク特措法に違反し、憲法9条に違反する活動を含んでいる」
    ただし、原告側が請求した「一人一万円の損害賠償」は認められなかった(この事実をもって、政府側は自分自分たちが「全面勝訴」と言っている)。
    山本:アメリカが批准しているジュネーブ条約では、民間人に対する攻撃、殺人、傷害は禁止、病人の保護、文民病院の攻撃禁止が定められている。米軍は、ジュネーブ条約など国際人道法、国際人権法違反の常習犯だ。2004年4月、米軍はイラクのファルージャという都市を包囲、猛攻撃を行ったが、翌月、国連の特別報告官が、ファルージャの攻撃で死亡したのは90%が一般市民だった、国連は一刻も早く人権侵害行為に関して独立した調査を行うべきであるという声明も出している。
    2004年の11月から米軍の大規模攻撃に参加した米兵の話:
    訓練で、『武器を持つ人間を見たら殺せ、双眼鏡を持つ人も殺せ、携帯電話を持つ人は殺せ、何も持たず敵対行為がなかったとしても、走っている人、逃げる人は何か画策しているとみなし、殺せ、白旗を掲げ命令に従ったとしても、わなとみなし、殺せ』と指示された。戦地で米兵たちは、ブルドーザーと戦車を使って家屋を一つ一つひき潰し、人間は撃ち尽くしたから、犬や猫や鶏など動くものは何でも撃った。動物もいなくなったから死体も撃った。
    山本:ファルージャだけじゃない、バグダッドでもラマディでも米軍は組織的にこれをやった。総理はアメリカに民間人の殺りくを当時やめろと言ったか。この先、やめろと言えるか、引き揚げられか。
    安倍:イラクのサダム・フセイン大統領は、化学兵器、大量破壊兵器がないことを証明する機会を与えたにもかかわらず、それを実施しなかった。多国籍軍のイラク攻撃は、国連安保理決議によって正当化される。

    ◆イラク市民の犠牲

    【7/29小池晃(共産党)】

    アフガン戦争で犠牲になった民間人の数。2007年〜2014末までで21,415人、今年(2015年)だけで978人。今も市民の犠牲は続いている。報復戦争が憎しみを呼び、新たなテロが拡散した。
    米国国務省の資料:
    全世界におけるテロ犠牲者数
    2000年4,422名。発生件数1,814件。
    2014年43,512名。発生件数16,818年
    アフガン、パキスタン、イラク、ナイジェリア、シリアなど。
    小泉:テロ死者数はアフガン報復戦争以来10倍になっている。報復戦争は憎しみを生んでテロを生む。
    安倍:テロに対して国際社会は協力して戦っていこうとしている。アフガニスタンをテロリストがばっこする国から平和な国に変えようとしている。9.11に端を発するテロに対抗することは国際社会の共通認識。アフガンのテロを放置していたらテロの被害がもっと多かっただろう。
    小泉:アフガン報復戦争に、米国は個別的自衛権、NATOは集団的自衛権を行使。日本はテロ特措法で始めて海外での洋上給油活動を行った。仮に同じ事態が生じたら日本はどうするか。
    中谷:仮に同じ事態が発生し、国連が決議した場合は、我が国も対応しなければならない。
    小泉:今度の法案により、米軍戦闘機に対する給油・整備もできる、武器使用権限も拡大する。法案が成立すれば米国はアフガン戦争への支援を切れ目なく求めてくる。憲法違反の戦争法案は廃案だ。

    【7/29 山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    中東、アフガニスタンでのアメリカ等の爆撃や地上作戦に巻き込まれた市民、女性、子供たちの殺傷は明らかに戦争犯罪だ。国際法上の正当性、あるわけがない。このようなアメリカ軍等の行為に日本の自衛隊が参加、協力すること、あってはならない。自衛隊員の皆さんの危険が高まることも重大な問題だが、日本の自衛隊が非戦闘員の市民、女性、子供たちに対し過って発砲し、加害者側、戦争犯罪者側になることは絶対にあってはならない。

    【8/25 山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    山本:民間人の殺害、軍事施設以外への攻撃、捕虜への拷問などの禁止、これは完全な国際法違反だ。それらを禁止したものがジュネーブ諸条約、国際人道法などであり、日本はこれらの条約を批准している。
    安倍:自衛隊が活動するにあたって、国際法を遵守し、国際法上、違法な行為に対する支援を行わないことは当然だ。ある国がジュネーブ諸条約を初めとする国際人道法に違反する行為を行っている場合、我が国が支援や協力を行うことはない。
    山本:2006年3月15日、イラク中部のイシャキ村で起きた一家惨殺事件。手錠をかけられ無抵抗な状態で家にいた11人を米軍は銃殺。地元テレビでも報道され、BBC、CNNなど欧米メディアも伝えた。米兵達はファイズさんらを殺害後、家を爆破した上、家畜までも殺していった。これは戦争犯罪だ。国際法違反だ。
    安倍:その事案を知らないので論議を差し控えたい。
    山本:ファルージャ総攻撃(2004.11.7-12.25)では、米軍は街を完全に包囲、報道陣は街からシャットアウト。兵糧攻めの状態の中、40名を超えるイラク人、医療関係者が医薬品を持ってバクダットから駆けつけ、ファルージャ総合病院を目指したが、17名の医療関係者は米軍に射殺された。完全包囲されたファルージャの街に激しい空爆、砲撃。総合病院は米軍に占拠され、市内にあった2つの診療所は米軍が空爆した。消火活動をしていた消防士、警官までも米兵は攻撃した。2004年の最初のファルージャ攻撃では、700人以上が殺害され、2回目の11月、ファルージャ総攻撃では、行方不明者は3000人に及び、6000人もの住民が殺された。中には、白旗を握りしめたままで発見された少年の遺体もあったそうだ。これ、米軍が行ったまぎれもない国際法違反、戦争犯罪ではないか。
    安倍:中身について検証する材料をもっていないので、コメントは差し控える。
    山本:米軍による爆撃は日本でも、広島、長崎、東京大空襲、そして、日本中が空爆、爆撃をされた。それによって、50万人以上の方がなくなった。そのほとんどが一般市民だ。これは戦争犯罪、国際法違反ではないか。
    岸田:国際司法裁判所等においても、そうした議論が行われていると承知している。
    山本:この先、米軍が戦争犯罪を行った場合、総理が我が国の最高責任者として、米軍の行動を止めるか。自衛隊、撤退させられるか。
    安倍:自衛隊が活動するにあたって、国際法を遵守し、国際人道法に違反する支援を行わないのは、当然のこと。
    山本:アメリカ、イギリスは大量破壊兵器や化学兵器をもっていると疑ってイラクに入っていったが、結局それは何も見つからなかった。700回、500箇所を捜索したのに出てこなかった。白燐弾、劣化ウラン弾、クラスター爆弾、大量破壊兵器で、化学兵器で、自分たちがそれで、イラクに住む人々を傷つけた。これ、国連憲章違反だ。検証が必要だ。第三者検証委員会の設立を求める。検証ができていないなら、自衛隊の活動を拡大させるわけにはいかない。今回のルール改正、戦争法案では、自衛隊に死者がでるだけでなく、後方支援という名の一体化で、米軍とともに、加害者側になる可能性大だ。

    ■法的根拠

    ◆憲法九条

    【8/5 主濱了(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    主濱:日本は先の大戦で、日本人310万人、アジアでは2000万人と、多くの犠牲を払った。この反省のもと、平和憲法が制定された。まさに戦後日本の進むべき方向を示したのが今の日本国憲法だ。少なくとも憲法第九条の、「国権の発動たる戦争と武力の行使は国際紛争を解決する手段としては永久にこれを放棄する」 この規定は是が非でも守らなければならない。
    中谷:憲法九条に表現されている平和主義の理念は、私も今後とも守られるべきだと考えている。
    主濱:日本で許容されている「専守防衛」は、武力攻撃をしてきた勢力を自国の領域において阻止する受動的な防衛であるから、まさに日本国憲法の精神にのっとった防衛政策である。しかし日本への攻撃がないにもかかわらず、米国への攻撃に反撃することは集団的自衛権の行使にあたり、憲法違反である。
    中谷:新三要件の下で許容されるものは、集団的自衛権の行使も含め、自衛の措置の武力行使に限られる。この考えの下で行われる今回の法整備は、専守防衛の基本方針にいささかも変更もない。集団的自衛権は国際的に認められる権利だ。我が国では自国の防衛のための必要最小限の措置で憲法の範囲内だ。
    主濱:これまでの我が国の防衛力は、自国防衛のための必要最小限に限られた。今後は、攻撃用の装備、長距離爆撃機、攻撃型航空母艦、大陸間弾道弾などを装備するのか。
    中谷:今回の法律によって装備が増えたり、防衛費増大が必要になることはない。あくまでも我が国の防衛や国際社会の要請に基づいて必要な範囲で行っていく。
    ◆◆◆NHKニュース(8/31)防衛省概算要求 過去最大5兆911億円
    「ことし4月に決定した新たな日米防衛協力の指針=ガイドラインで、宇宙空間やサイバー攻撃への対処が盛り込まれたことなどを受けて、日米が連携して宇宙空間の状況を把握するのに必要な監視システムの構築に向けた設計費用や、サイバー攻撃への対処のための専門部隊を増員する費用なども盛り込んでいます。」 とのこと。「など」の部分に実際何が含まれるのか・・・。「防衛費増大は必要じゃない」けれど増やす、という日本語もアリなのか・・・?

    ◆昭和47年見解

    【わかりにくいので解説:横畠内閣法制局長官が考え出した、現憲法下でも集団的自衛権の行使が容認される理論、いわゆる、昭和47年見解における「あてはめ論」は、国会中継を聞いても、議事録を読んでも、実はさっぱりわからない。ので、ここに議事録を記載することはしない。しかし、様々見聞しているうち、総合的、客観的に理解できたような気もするので、その解説を「安保法案の論点整理の私的考察ブログに書いた。】

    【8/19 中西健治(無所属クラブ】

    参照リンク:参議院議員 中西健治 国会活動報告

    中西:政府は、集団的自衛権に関する昭和47年政府見解を出したのと同じ日に、同じ参議院決算委員会宛てに、同じ水口議員の質疑に対して、「自衛行動の範囲について」という政府見解を提出している。そのなかで、「憲法第9条が許容している自衛行動の範囲について…その時の国際情勢、武力攻撃の手段・態様により千差万別であり、限られた与件のみを仮設して論ずることは適当ではないと思われる。」という見解を示している。この「限られた与件のみを仮設して」が「我が国に対する武力攻撃が生じた場合に限られる」という限定的な事実認識と矛盾するのではないか。
    中谷:私の考えでは、自衛権の発動の3要件を満たせば、憲法上の理論としては、そのような行動をとることが許されないわけではないと解している。 →理事会に政府見解を要求。

    ■安保環境

    ◆尖閣諸島

    【7/29 大野元裕(民主党】

    大野:今回の法制で、尖閣諸島と離島、島嶼部におけるグレーンゾーン対応はどうかわるか。
    中谷:今回の法制で、切れ目ない対応が可能となる。日米同盟が完全に機能、世界に発信することで抑止力が高まる。尖閣諸島に関しては、治安出動の迅速化、対応能力向上、情報共有、各種訓練の強化に関わる閣議決定を行った。尖閣諸島に関して、今回の安保法の中で新たな法整備が必要とは考えていない。

    ◆サイバー攻撃

    【8/4 福島瑞穂(社民党】

    政府:武力攻撃の一環として行われたサイバー攻撃に対して武力を行使して対応することも法理としては考えられますけれども、これまでサイバー攻撃に対して自衛権が行使をされた事例、これはございません。国際的な議論も見据えつつ、更に検討を要するものと考えております。

    ◆国民の危険性

    【8/25 水岡俊一(民主党】

    水岡:もしこの法案が成立したら、国民の安全の危険度は増すか。
    山谷国家公安委員長:平和安全法制により紛争を未然に予防する力、つまり抑止力が高まる。
    水岡:防衛のことでなく国民の安全のことを聞いている。抑止力でテロが収まるか。
    山谷:国内治安維持を行う警察が警備態勢の強化、対処能力の向上、関係機関の連携に取り組んでいる。
    水岡:8月17日、タイで爆弾テロ、19人死亡、115人がケガをした。22日、オランダ、アムステルダムからパリに向かう国際列車がテロ。アフガンのカブールでテロ、12人死亡、60人ケガ。この1週間を見ても世界的にテロの危険度が増している。日本でその心配はないか。山谷:情報収集、対処能力の向上、今後とも警察の責務を果たしていく。
    山谷:国内外情報収集している。今後も警察の責務をしっかり果たしていく。
    水岡:イラク戦争に参戦したスペインとイギリスの例。スペインは2004年3月11日、マドリッドで電車の爆破テロ、191人死亡、2000人ケガ。イギリスは2005年7月にロンドン地下鉄爆破テロ、56人が死亡、700人ケガ。これらはイラク戦争に参戦した国に対する報復であった。日本が集団的自衛権を行使すれば日本国内でテロが起きる可能性が高まると考えないか。日本はオリンピックを迎えようとしてる。世界の注目が集まる日本においてテロの脅威が更に高まるのではないか。
    安倍:テロの脅威に対しては、各国と情報共有し、情報を収集分析しながら対処する。水際で入国させない、確保するなど対策をとる。テロの温床となっている貧困、暴力を撲滅するために日本は貢献している。我が国が集団的自衛権を行使する場合は、存立危機事態であるから、当然、武力行使をしてそれを排除する。
    水岡:タイ、バンコクの爆弾テロでは、米国からタイに、10人前後のテロリストの可能性のある人物が入国しているという情報があったにもかかわらず何もできなかった。日本にはそういった対応をする部署があるか。
    安倍:我が国では水際で阻止し、国内で確保する対応が可能だ。いちいちについてはインテリジェンスにかかわるので答弁を控える。
    水岡:もしテロの危険度が高まっているという情報があるならば国民に知らせることが大事だ。外務省は日本の国際テロ対策をホームページで紹介してあり、そのページの日付けはH27.7.15 更新であった。その中の概要には、H23.9.1、今から4年前の状況を掲載している。国民に対して現況を示していない。
    岸田:外務省は各国の危険情報を更新している。情報の内容によっては細かい対応が必要なスポット情報として明らかにし、関係国の邦人に伝達するという対応をとっている。情報の伝達では、より現実的、スピーディーに伝えなければならないので、SNSシステムを導入している。
    水岡:H23.9.1 のHPには、「国際組織アルカイダ・・・」「ウサマビンラディン・・」の記載がある。こういうレベルだ。大臣の答弁と外務省の行動には、あまりにも差がある。
    岸田:ご指摘のHPの部分については確認する。現実の対応は絶えず更新している。
    水岡:実行してほしい。

    ■その他

    ◆10本の法案

    【7/29 水野賢一(無所属クラブ)】

    10本の法律を束ねて出したが、採決は1回。普通10本も法案があれば賛否は分かれる。ひとくくり採決は乱暴だ。丁寧な審議はできない。議論が深まらない背景には、法案を束ねたことがあるのではないか。
    安倍:10本の改正法の目的は我が国と国際社会の平和と安全。10本は相互に関連している。大きな体系で総合的に判断してもらうのが適当。
    水野:総合的にしか判断できないからおかしくなる。個別に審議したい。

    ◆経済的徴兵制

    【8/3 山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    山本:昨年5月26日、文部科学省の学生への経済的支援の在り方に関する検討会議事録。当時、経済同友会の専務理事で、現在、奨学金を担当する独立行政法人日本学生支援機構の運営評議会委員でもある前原金一さんの発言: (百数十万人いる無職の者をいかに就職させるか、という議論の中で)「警察庁とか消防庁とか防衛省などに頼んで、1年とか2年のインターンシップをやってもらえば、就職はかなりよくなる。」「防衛省は2年コースを作ってもいいと言っている」 奨学金を延滞している人の人数等情報を教えてほしい。
    参考人(遠藤勝裕君):平成26年度末の延滞者の年齢別件数は、25歳未満、60200件(17.2%)。25歳以上35歳未満が214751件(61.4%)。35歳以上45歳未満が57176件(16.3%)。45歳以上が 17848件(5.1%)。51.1%が本人の低所得によるもの、そして15.1%が本人が失業中、無職。5%が本人が病気。それから、もう一つ大きな理由として17%が親の支援、親の経済的困窮に対して返還者が支援をする。
    中谷:(防衛省の2年コース)これは企業が新規採用者を二年間、自衛隊に実習生として派遣するというプログラムのイメージで、社会人のことだ。 →前原氏の参考人召集を理事会で検討。
    山本:2014年の7月1日、集団的自衛権行使容認の閣議決定をした直後に、全国の高校三年生に一斉に自衛隊からダイレクトメールが郵送されてきた。これは、防衛省が法令に基づいて全国の市町村から情報提供を受け、全国の高校三年生の個人情報を名前、生年月日、性別、住所の四情報を収集して行ったという話。これ、非常に不気味だ。18歳に該当する人たち120万人近くいる。 経済的格差を利用して兵員を確保すること、経済的徴兵制。問題は、日本の奨学金制度にあると思う。各省庁見てみても、給付型の奨学金があるのは防衛省だけ。利息が付く、延滞金が付く、サラ金と一緒だ。無利子で奨学金を出すことにお力を貸していただきたい。
    国務大臣(下村博文) まず有利子奨学金をできるだけ無利子奨学金にしてまいりたいと思います。そして、平成29年から所得連動返還型奨学金制度の導入について今検討しているところでございます。年収300万以下であれば返還しなくてもいいというような形を取ることによって、全ての意欲と能力のある若者がチャンス、可能性が広がっていくような、そういう奨学金制度を充実を更にしてまいりたいと思います。

    【8/26 辰巳孝太郎(日本共産党) ,山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    辰巳:一般企業を通じた戦争人員の確保策もある。これは、 防衛省の作った『長期 自衛隊インターンシップ・プログラム』、企業と提携した人材確保育成プログラムのイメージだ。これはいつ、なんの目的で、どの範囲で提案したものか?
    中谷:平成25年7月に経済同友会において前原氏(経済同友会メンバー、民間企業)側に(防衛省の一官僚が前原氏の会社まで出かけて行って)示した。
    辰巳:内容は「企業側で新規採用者を2年間、自衛隊に実習生として派遣をする。一任期限定の任期制士として受け入れる。自衛隊は自衛官として勤務させて一定の資格も取得させる。2年間後、企業に戻って社員として勤務する。自衛隊での受け入れ期間中の給与等は官側の負担とする」と書かれている。なぜ体育会系人材を毎年一定確保することが企業側にとってのメリットだと、防衛省は考えたのか、仮にこの2年間の任期制士の期間中に有事が起こった際、これは防衛出動という事になるのか?
    中谷:防衛出動は正式自衛隊員にならなければできない、この場合は研修プログラムで召集の対象にはならない。
    辰巳:レクチャーの段階では「任期制自衛官は既に召集されており、有事の際は当然、防衛出動の対象になる」と聞いたが。
    中谷:このプログラムについては、その後、検討を行ってないし、検討も行う予定もない。

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