安保法案の論点整理【参議院】その2

    参議院
    「我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会」
    審議内容の論点整理

    ■事態認定

    ◆先制攻撃

    【大塚耕平(民主党)】

    大塚:仮に日本に正当性があっても、武力行使すれば相手国に民間人に被害が出るかもしれない。日本が報復攻撃を受ければ日本にも被害が出るかもしれな い。火事や喧嘩仲裁やフグにたとえて議論するのは不謹慎だ。
    衆議院の審議内容の確認
    1. 密接関連国が先制攻撃をして報復として武力攻撃を受けた場合であっても、日本が密接関連国の後方支援で武力行使をするのか → 政府答弁:新三要件に満たせばそうだ。
    2. 我が国に対する攻撃の意志がない国に対して、新三要件があてはまれば我が国からの攻撃を排除しないのか。 → (安倍、中谷)排除しない(攻撃することもある)。
    3. 我が国に対して直接の武力攻撃をしていない国に対して防衛出動、武力行使をするのは法理上可能か −> (中谷)はい、可能だ。
    4. 我が国に対する攻撃の意志がない国に対して新三要件があてはまれば、我が国から攻撃する可能性を排除しないのか → (中谷)排除しない(攻撃することもある)。
    大塚:他国の先制攻撃を追認することが場合によってはありうる、とすることは驚きだ。 日本という国は、いつから他国の先制攻撃を追認したり、我が国に対して直接武力攻撃をしていない国に対して武力行使をしたり、いわんや我が国に 対する攻撃の意志がない国に対して場合によっては我が国の方から攻撃する可能性を排除しない、国になったのか。これらの3つは先制攻撃に該当するのではないか。 
    中谷:新三要件認定にあたって国際法の法規、判例を順守するのは当然だ。国際法には違法な武力行使を禁じた国連憲章を含んでいる。
    中谷:(武力攻撃事態等とは)武力攻撃が発生した事態、明白な危険が切迫していると認められる事態。予測事態も入っている。
    存立危機事態は、武力攻撃事態よりも範囲が広く、「相手からの攻撃が予測もされない事態でも存立危機に該当する」、ここで武力攻撃すれば先制攻撃にあたる。
    岸田:国際法上、予防攻撃も先制攻撃も認められていない。2005年国連世界サミットで議論された。
    大塚:我が国が新三要件に該当したといって武力攻撃を受けていな国に対して武力行使するのは、国際法違反ではないか。
    安倍:武力行使の要件は、新三要件に該当すること、国際法違反ではないこと(ただし、国際法を遵守することは、法文に明記されていない。それは「当然」だから)。先制攻撃ではなく限定的集団的自衛権の行使だ。相手に我が国を攻撃する意思がない、というのは、意志があることを隠しているかもしれない。 相手の意志は総合判断の要素。

    ◆他に手段がない

    【7/30福島瑞穂(社民党)】

    存立危機事態認定の新三要件の中の第2要件「他に手段がない:これを排除しわが国の存立を全うし国民を守るために他に適当な手段がないこと」が自衛隊の改正法案に明記されていない。

    ◆必要最小限は変わる

    【7/30井上哲士(共産党)】

    井上:「存立危機事態においては、存立危機武力攻撃を排除しつつ、その速やかな終結を図らなければならない。」、この日本が排除する存立危機武力攻撃とは一体何か。
    中谷:いかなる事態が該当するかということについて、個別具体的な状況で全て情報を総合的に判断して決定するわけでございますので、一概にお答えするということは困難だ。
    井上:その事態を速やかに終結させるために他国に対する攻撃を排除するとなれば、海外で行われているこの武力攻撃を排除するためには、自衛隊が武力攻撃を行う現場は、他国の領土、領空、領海、これ含まれるんじゃないか。
    中谷:存立危機事態における我が国による必要最小限度の武力行使は、基本的に公海及びその上空において行われると考えている。領域における武力行使はホルムズ海峡での機雷掃海以外は念頭に置いていない。
    井上:外国に行って戦う場合の必要最小限とは何だろう。存立危機事態を政府は速やかに終結させるということは、つまり戦争に勝っちゃうということでしかないわけで、そのためには最大限の実力行使を恐らくしなければならないんじゃないか。集団的自衛権の行使を容認すれば、必要最小限度という意味が変わるんじゃないですか。
    中谷:確かに、法律上、速やかな終結を図らなければならないと書いてあるが、一方、武力行使の目的を持って武装した部隊を他国の領土、領海、領空へ派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるので憲法上許されない。
    井上:「必要最小限」は法文に明記されていない。
    政府特別補佐人(内閣法制局長官 横畠裕介君):自衛隊法の八十八条第二項「事態に応じ合理的に必要と判断される限度をこえてはならない」。
    井上:海外派兵はできないとはどこにも書いていないけれども、事態に応じ合理的に判断される限度においてと、といことだが、これを判断するのはだれか。
    中谷:政府が状況を鑑みまして判断をする。
    井上:要するに、時の多数派の政府の判断次第だ。自衛権発動の新三要件を満たすと判断すれば、他国領域での武力行為は法理論上可能か。
    中谷:他国の領域における武力行動であっても、自衛権の発動の三要件を満たせば、法律上の理論としては我が国の武力行使は可能だ。
    井上:例外を判断する基準は何か。
    中谷:政府が対処基本方針を閣議決定し、国会承認を求める。
    井上:例外を判断する明確な基準が示される必要がある。

    ◆国会承認

    【7/29 松田公太(日本を元気にする会)】


    松田:海外派遣は例外なく国会の事前承認必要とすべきだ。時の総理が「存立危機事態だ」と言っば海外派遣ができてしまう。
    安倍:存立危機事態、重要影響事態の活動は、緊急時の事後承認をみとめている。武力攻撃が突発的発生、間をおかず存立危機事態、極めて短期間に事態が発生した場合には事後承認する。PKOで国会承認をまっていては間に合わない場合もある。
    松田:「原則、例外、可能な限り」という言葉は歯止めになっていない。

    【8/4 福島瑞穂(社民党)】

    中谷:国際平和支援法においては、例外なく国会の事前承認を必要としている。それ以外では、原則事前承認だが、例えば存立危機事態とか重要影響事態というのは、これは我が国の平和と安全の確保に支障を来す可能性がある、これは緊急時、事後承認を認めており、極めて短時間のうちにそういった事態に立ち入った場合には、国会の承認の前にあっても、並行して自衛隊に行動を命じ、まず何よりも国民の命と平和な暮らしを守ることが必要ではないかと考えている。
    福島:今までテロ特措法、イラク特措法など、長い間議論して、ようやく自衛隊を出すかどうかしてきた。今の話で、集団的自衛権の行使は、ベトナム戦争やアフガン侵攻など、泥沼の侵略戦争だ。国会の一切の関与なく戦争をすることになる。これは大問題だ。 国連安保理に報告された集団的自衛権の適用事例には「正しい戦争」はない。 ベトナム戦争は、まさにトンキン湾事件、アメリカの自作自演で始まったことをアメリカ自身が国務省報告書で認めている。ソビエトのハンガリー侵攻、チェコ侵攻、アフガン侵攻、アメリカのベトナム戦争、イラク戦争・・・戦争は人を殺すこと。正しい戦争はない。

    【8/4 水野賢一(無所属クラブ)】

    水野:在外邦人等の保護措置として自衛隊を海外に派遣する場合、なぜ国会承認は必要なしか。
    在外邦人の保護救出オペレーションは、迅速性、短期間、人質として拘束されている場合は自衛隊の活動の秘匿性があるため、法律上国会の関与をつけていない。
    水野:これまでのPKOは国会承認が必要だった。外国に行く場合は地位協定的なものを結んでいた。今回はそれがない。急に行く場合はどうするか。
    外国に派遣された軍隊の構成員に対する裁判権の具体的ふりわけについては原則がない。必要に応じて両国の協議で具体的取扱いが決定される。

    【8/19 荒井広幸(新党改革】

    国際平和支援法案に基づいて我が国が後方支援を行う場合
    国連決議、事態除去のために国際社会が共同対処。国連や安保理から我が国への要請は不要。
    派遣前に例外なく国会承認が必要。

    国際平和協力法の改正(改正PKO法)の場合は
    原則国会承認、例外時に事後承認。停戦監視業務。国会閉会中、衆議院解散時は、例外。事後の国会で不承認の場合は解散。

    実施計画の策定に要する時間

    改正PKO法は閣議決定→実施計画、総理が実施要領作成(地域、機関、業務の種類や実施方法、一時停止その他等、具体的要件を定める)

    作成期間の標準的な目安は一概には言えないが、過去23年の実績を通じて定型化された、実施計画と並行して作成するなど工夫をして、実施計画の閣議決定後すみやかに(即日)完了した。

    派遣決定後、派遣準備に要する時間

    状況の詳細な把握のための調査、関係機関との調整、実施計画等の作成、部隊の編制、装備品の検討、物品の調達、要員の予防接種など行う。準備期間は任務、規模、関係方面との調整によって異なるので一律には言えないが、実績では、陸自部隊派遣では2ヶ月、3カ月、5カ月がある。

    荒井:このように派遣準備には時間がかかる一方、国会は解散中でも3日で召集できる。即日でも決められる。改正PKO法も例外なく国会承認とすべきだ。

    【8/25 福島みずほ(社会民主党)】

    福島:大臣は、7月8日の衆議院の特別委員会で、重要影響事態から存立危機事態に移行する場合もあり得る、と答弁した。重要影響事態から存立事態に移行する場合があるということは、重要影響事態そのものも、極めて危険だということにはならない。
    中谷:「存立危機事態は概念上、重要影響事態に包含をされるものであり、重要影響事態として認定をされた状況が、さらに悪化して、存立危機事態の要件を満たすこともあり得る。存立危機事態は、武力を用いた対処をしなければ、わが国が武力攻撃を受けた場合と同様、深刻かつ重大な被害が及ぶことが明らかな状況で、重要影響 事態から存立危機事態に至った場合は、防衛出動を命じられた自衛隊は、わが国を防衛するために必要な武力の行使ができる。ただし、存立危機事態でのわが国の武力の行使は、あくまでも、そのような深刻、重大な被害を及ぼすことが明らかな武力攻撃を排除することに限られる。
    福島:後方支援をしていて、相手方から攻撃を受ければ中止する、停止する、避難すると言うが、(実際には)そんなことできない。重要影響事態から、存立危機事態に移行し、(現場は武力行使に)突入していく。政府が存立危機事態に当たると認定すれば、そのまま突入できるのだ。国会の事前承認もなく、極めて危険なことだ。まさに日本が(米軍などに)武器弾薬を提供し、かつ給油をする先に何があるのか。『日本は、被害者にも加害者にもなるべきではない』

    【8/26 荒井広幸(新党改革)】

    荒井:PKO法、存立危機事態、重要影響事態法は原則国会事前承認だが例外で事後承認も認めている。PKOは「国会が閉会中、衆議院が解散中は事後承認を認める」。存立危機事態(事態対処法)は「緊急の必要があり事前に国会承認を得るいとまがない場合」。重要影響事態法は「緊急の必要がある場合」。なぜ書きぶりが違うか。
    中谷:いずれも事後承認を認めなければ我が国の平和安全確保に支障をきたす緊急時に事後承認を認める。PKOでは国会の開催を待っていては国際社会の要望にタイムリーに答えられない場合、国会の事後承認を認める。
    荒井:PKO法の場合は具体的だ。それ以外の場合は、「緊急」というばかりで具体性がない、政府にフリーハンドを与えるものだ。日本が直接攻撃される、またはその恐れがあるのであれば個別的自衛権で対処すべきである。
    荒井:事後承認で自衛隊を海外派遣したのち、国会が不承認としたら、海外に派遣した自衛隊は撤退しなければならない。撤退すれば共同対処していた相手国軍(の防衛が手薄になり)が厳しくなる、攻撃される危険性、「逃げるのか」と批判、多大な影響を追う。国会が、正当性はないが撤退を躊躇しかねないリスク(撤退のリスク)があり、国会が追認する機関になりさがる。だから、例外なく事前承認とすべきだ

    ◆法律の規定がない

    【8/25 中西健治(無所属クラブ)】

    中西:集団的自衛権行使の前提となる存立危機事態の認定の要件として「武力攻撃を受けた国の要請または同意」が、必要か。
    中谷:武力攻撃を受けた国の要請または同意については、存立危機事態の定義そのものには含まれていない。要請・同意は国際法上、当然の前提であり、我が国は国際法を順守する。我が国が集団的自衛権を行使するに当たって、武力攻撃を受けた国の要請または同意が存在しないにもかかわらず対処基本方針を閣議決定することはなく、存立危機事態を認定されることはない。
    中西:集団的自衛権の根本的な要件が法案に明記されていないことは問題だ。欠陥法案だ。

    【8/21 中西健治(無所属クラブ)】

    中西:集団的自衛権の行使の前提となる存立危機事態の認定に国連決議は必要か。
    中谷:(国連決議は必要ない)三要件に該当すれば認定する。
    中西:存立危機事態の認定の際、密接な関係にある他国からの「要請」は必要か。
    中谷:要請は必要だ。
    中西:武力行使ではなく存立危機事態の認定にも他国からの要請が必要か、法律のどこに書かれているか。
    中谷:三要件の認定の際は他国からの要請は必要ないが、集団的自衛権の行使には要請が必要。その際、対処基本方針を作成するが、認定の前提となった事実を明記することが法律上義務付けられている。対処方針を作る際は当然国際法に従う。(認定の前提となった事実に「要請」が含まれる、とはどこにも規定されていない)
    中西:密接他国からの要請がなくても、存立危機事態を認定できるか。
    中谷:攻撃を受けた国からの要請・同意は法律で規定するまでもなく、国際法上の明確な要件である。存立危機事態として重ねて規定する必要はない。→理事会に統一見解を要請

    【8/26 水野賢一(無所属クラブ)】

    水野:集団的自衛権を行使するときは要請が必要だ、これは当然だ、要請もなく自衛隊を海外派遣したら国際法違反で侵略だ。存立危機事態の認定において武力攻撃を受けた密接関係国からの要請が必要か。法文のどこに書かれているか。
    中谷:存立危機事態の認定においては対処基本方針を決定するが、その際、武力攻撃を受けた国の要請または同意が必要であるが、その点について法文上はどこにも書いていない。
    水野:日本が存立危機事態かもしれない事態に陥っているのに他国の要請・同意がなければ認定できない、というのはおかしい。概念が自己矛盾だ。
    中谷:存立危機事態の定義に(他国からの要請同意は)含まれていない。しかし、要請同意がないにもかかわらず対処基本方針を定めることは、ございません、いたしません
    水野:存立危機事態認定の際の判断基準となる三要件には、他国からの要請同意が必要、とは書かれていない。
    中谷:「他国からの要請同意が必要」とは、存立危機事態の定義には明記されていない。認定の前提条件として、国際法に則るというのは当然だから

    【8/26 荒井広幸(新党改革)】

    荒井:存立危機事態発生(ホルムズ海峡での機雷掃海))時、想定される概ねの予算規模は。
    防衛省:過去事例では、H3ペルシャ湾に機雷掃海に自衛隊を派遣した際、隊員510名、掃海艇4隻、母艦4隻、補給艦1隻、現地で活動約3ヶ月活動した事例では、追加費用として当時の価格で13億円がかかった。
    荒井:仮にホルムズの事態が発生した場合その予算はいつ、どこから支出するか。
    財務省:自衛隊の活動に伴って必要となる経費は、当初予算の執行または補正予算、予備費で対応する。
    荒井:防衛省の予備費か、それとも国家財政の予備費か。
    財務省:政府全体としての予備費。
    荒井:もちろん、最初から防衛予算の予備費に計上していたら、好き好んで海外派遣することになっておかしい。補正予算で対応する場合、国会で予算規模、正当性を議論した上で予算計上するか。
    財務省:事案の中身、規模によって違うので一概には言えない。
    荒井:防衛省の予算内でできる場合もあり、その場合、決算まで行為の正当性を評価できない。予算面からは歯止めがきかない。国益にかなうかどうかを事前に国会で審議しておく必要がある。

    【8/25 福山哲郎(民主党)】

    公明党の北側三原則:
    (1) 国際法上の正当性を有すること
    (2) 国民の理解を得られるよう、民主的統制を適切に確保すること
    (3) 自衛隊員の安全確保を最優先すること
    安全確保の措置: 
    安全確保、実施区域の指定、一時休止、撤退
    米軍等行動関連措置法第4条:
    行動関連措置は武力攻撃及び存立危機武力攻撃を排除する目的の範囲内において、事態に応じ、合理的に必要と判断される限度を超えるものではあってはならない。
    福山:総理はこれまで「北側3原則を法律上の要件として明確に定め」「この3原則の方針が法案の中に忠実かつ明確に盛り込まれた」と述べている。〔存立危機事態〕における〔後方支援〕において、「安全配慮、実施区域、一時休止、撤退」は、根拠法である〔米軍等行動関連措置法〕のどこに明記されているか。
    中谷:(法文中に)この実施区域の指定とか、一時休止、中断の明記はない。自衛隊法第4条に、隊員の安全確保についても配慮した上で、必要な後方支援を行うという趣旨が含まれる。
    福山:〔4条〕には安全確保の規定はない。
    中谷:たしかに〔重要影響事態法〕や新法のような安全配慮義務等の規定はないが、これは〔武力の行使〕ではなくて、〔後方支援〕であるから、安全確保は当然のことだ。後方支援は戦闘ではないし、危険を回避して安全を確保した上で実施するものであり、安全な場所で行うことが大前提、隊員の安全確保のための措置は、このような形で担保した。
    (中谷氏、あいまい答弁を延々と繰り返し、委員長の「速記止め警告」を9回受けて休憩に突入。)
    鴻池委員長
    この際、委員長より申し上げます。午前の福山委員の質疑におきまして、中谷国務大臣と議論がかみ合わなかったということはご承知のとおりでありますが、この自衛隊の安全確保ということに関しましては、自衛隊、あるいは関係者以外の国民の多くの皆さまが、きわめて関心深いことであります。ここで、これ以上のかみ合わない議論が続きますと、のちの、これより先の質疑の時間を無駄にすることに相成りますので、ぜひとも、この件に関しましては、委員長預かりにさせていただきたいと思います。そこで、政府におかれましては、福山君の質疑につきまして、充分、検討を加えていただきまして、より善処をしていただくということをお願いをしたいと思います。それができますまで、いま、申し上げましたように、委員長預かりとさせていただきます。

    福山:総理は、この〔米軍等行動関連措置法〕に安全確保の規定がないことを知っていたか?
    安倍:知っていた。
    福山:〔ガイドライン〕に基づく〔後方支援〕活動は、実は4種類も5種類もある。(安全確保)規定がないことを知っていたとしたら、総理の安全確保の答弁が齟齬をきたす。
    参照:日米防衛指針、新ガイドラインの骨子
    福山:国民は、総理が「すべての方針が法案の中に忠実に、かつ明確に盛り込まれたものと考えています。」という総理の言葉を聞いて、「ああ、すべての安全保障法案には安全確保の措置がとられたんだ」と認識した。総理が、安全確保の規定が法案にないことを知っていて、こういう答弁をするのは、国民に対して、だます、誤解を与える、事実と違うことを述べた、と考えられる。
    安倍:〔米軍等行動関連措置法第4条〕の「限度を超えるものであってはならない」は、隊員の安全確保についても配慮した上で必要な支援を行う趣旨を含むものであると、与党において合意がなされた、と我々は解釈している。〔北側3原則〕の趣旨がこの中に入っていると、我々は理解している。
    福山:総理は何度も、安全が確保されないかぎり、自衛隊による後方支援を行うことはないと言ってきている。自衛官の生命や身体に係わる問題であり、答弁でごまかすのではなく、法律に明確に規定すべきだ。 福山:〔米軍等行動関連措置法〕には、実施区域も安全確保も配慮義務も一時休止、中断も規定がない。なおかつ、〔存立危機事態〕においては、現に戦闘行為が行われている場所でも〔後方支援〕は可能だと統一見解が出ている。現に戦闘行為が行われる場所でも実施が可能なのに、自衛官に対する安全配慮規定がまったくないのは問題だ。

    【8/25 水岡俊一(民主党】

    水岡:自衛隊法95条第1項は「自衛隊の武器などを職務上警護する自衛官が、その武器の防護に必要だとする相当の理由がある場合、合理的な限度での武器使用できる」となっている。自衛隊法95条第2項は、「自衛隊の武器」のところに「米軍等の部隊の武器」が入る。1項は自衛隊の装備をまもるため、2項は米軍等の武器を守るため。この最終判断はだれがやるか。
    中谷:95条1項を命令するのは防衛大臣。武器の使用権限は個々の自衛官が主体となってやる。95条2項の米軍武器等防護では、当然、部隊の指揮官の命令に従う。
    水岡:武器等防護では指揮官の命令に従うと条文に書かれているか。
    中谷:書かれていない。自衛官は、57条(上官の命令に服従する義務) に従い、上官の命令に忠実に従う。上官の命令によって武器を使用することができるのは当然だ。(命令があってもなくても使用できる)。
    水岡:法案に書かれているかいないかは重要だ。89条2項(自衛官が武器を使用するには、当該部隊指揮官の命令によらなければならない)は準用するか。
    中谷:準用しない。
    水岡:自衛官が個人で判断するということか。
    中谷:自衛官は組織の性格上部隊として活動するのが当然。警護を行う場合は部隊として武器等警護にあたるので、上官の命令に従う57条に従って活動するのは当然だ。
    水岡:89条2項を準用しない、95条にも書いていない、しかし解釈で部隊の指揮官の命令によらなければならない、という論理は通用しない。

    ■シミュレーション

    ◆原発へのミサイル着弾

    【7/29 山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    山本:政府自身は、九州電力株式会社川内原子力発電所に対する他国等からの弾道ミサイルによる武力攻撃を想定しているか。
    答弁:我が国の安全に対する重大かつ差し迫った脅威となっていると認識している。政府としては、国民の生命・財産を守るため、平素より、弾道ミサイル発射を含む様々な事態を想定し、関係機関が連携して各種のシミュレーションや訓練を行っている。
    (訓練をやっている、というのは事実ではない。やっているふりだけ。)
    田中俊一君政府特別補佐人:弾道ミサイルによって放射能が放出されるという事態は想定していない。放射性セシウム137の放出量は、川内1、2号機の場合には約5.6テラベクレル、この値は福島第一原発事故で放出された量の約千分の一以下だ。
    山本:弾道ミサイルが着弾したとして、原子力施設を破壊されて、福島の東電原発の千分の一の放出量で済むと思うか。思えない。どうしてそれをしっかりと計算しないのか。
    安倍:武力攻撃事態は、その手段、規模の大小、攻撃パターンが異なることから、これにより実際に発生する被害も様々であり、一概にお答えすることは難しい。
    山本:もしも弾道ミサイルが飛んできて破壊された場合、何キロ圏までの計画を作成するべきか。
    大庭政府参考人:弾道ミサイルなどの武力攻撃により原子力災害が発生した場合については、あらかじめ地域を定めて避難等の措置を講ずるものとするものではなく、事態の推移等を正確に把握して、それに応じて避難等の対象範囲を決定することとしている。
    安倍:武力攻撃による原子力災害への対処については、国民保護基本方針に基づいて、原発からおおむね五キロ圏内は直ちに避難、原発からおおむね30キロ圏内はまずは屋内退避といった対応を取ることが基本だ。他方、武力攻撃によって5キロ圏、30キロ圏といった範囲を超える大規模な放射性物質の放出が起きた場合には、そうした状況に応じて臨機応変に対処を行う。この原発への弾道ミサイル攻撃については、武力攻撃事態は、武力攻撃の手 段、その規模の大小、攻撃パターンなどによって様々な想定があり得ることから、国民保護措置の実施に関する基本的な方針を閣議決定した国民保護基本方針においては、着上陸侵攻、ゲリラや特殊部隊による攻撃、そして弾道ミサイル攻撃及び航空攻撃の四つの類型を想定しているが、特定の量的な被害は記していない。

    ◆戦争に参加か否か

    【7/28 福山哲郎(民主党)】

    福山:A国とB国が紛争ないし戦争状態だ。ただし我が国に対する攻撃はない。我が国と密接な関係にあるB国から要請を受けて、日本は存立危機事態の場合に武力行使ができる。B国の要請を受けて日本が武力行使をしに行くということは、戦争に参加をすることではないか。
    安倍:三要件に当てはまるものに限り集団的自衛権の行使を行う。A国とB国の紛争のもとそのものに対して我々が撃滅に行くということではない。
    (安倍総理は「戦争に参加をすることではないか」との質問に対し、約10分にわたり論点ずらしの答弁を続け、結局質問には回答しなかった。)
    「戦争に参加をすることではないか」の質問に対し:
    横畠:戦争は国際法上禁止されている。我が国は戦争をするのではなく、自衛の措置としての実力の行使をするものである。他国を防衛するための武力行使を認めるものではない。個別的自衛権を行使する場合と同様に戦争をするものではない。
    福山:戦争というのは全部自衛の戦争じゃないか。
    横畠:国連憲章上、武力行使が正当化される事由としては、安保理決議に基づく場合、個別的、集団的自衛権の行使の三通りがある。
    福山:武力行使はすると明確にされています。しかし、それを戦争と言わないところにこの安倍政権の欺瞞性がある。戦争に参加することになるのに、自衛隊のリスクは高まらないと言ったり、専守防衛は変わらないと言ったり、今も戦争に参加するということを認めないところに、国民はもう安倍政権のこの姿勢について気が付いている。だから理解が深まれば深まるほど反対が増えるんだ。
    この後、下記3つの議論に、民主党議員は、約1時間を費やし、結局何も明確にすることができなかった。政府答弁があらかじめ予測できる質問を続けるのは不毛だ。
    ◎磯崎補佐官の「法的安定性は関係ない」の発言について・・・不毛な議論なので省略。
    ◎昭和47年見解、砂川判決について・・・議論の蒸し返しなので省略。
    ◎集団的自衛権について・・・議論の蒸し返しなので省略。

    ◆火消しのたとえ話

    【7/28 小川敏夫(民主党)】

    小川:総理はフジテレビで、たとえ話「アメリカの母屋に火をつけられて離れに火が移ってその火が日本に来そうだ。日本は火を消しに行く、これが集団的自衛権の例だ。」と説明した。 武力行使は戦争に行く、戦いに行く、殺される、殺す、ということだ。武力行使の法案の説明で、建物の火を消火するという説明をするのはおかしい。消防士は人を殺さない。消防士を殺しに来る人もいない。消防士と武力の行使を同じに論じるのはおかしい。
    安倍:たとえ話で概念整理をした。

    ■米国のニーズ

    ◆アーミテージ・ナイ・レポート

    【8/19山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)】

    山本:中谷大臣は、7月31日の本委員会、福島みずほ委員の、今まで周辺事態法でできないとされ ていた弾薬の提供がなぜできるのかという質問に対し、現行法制定時には米軍からのニーズがなかったので、弾薬の提供と戦闘作戦行動のために発進準備中の航 空機への給油、整備については除いていたが、その後、日米の防衛協力ガイドラインの見直しの中で、米側から、アメリカ側からこれらを含む幅広い後方支援への期待が示されたと答弁した。今回の安保法制の立法事実として、米軍のニーズ、要請があるか。
    中谷:先の日米防衛協力ガイドラインの協議において、米側からこれらを含む幅広い後方支援への期待が示された。また、南スーダンで活動中の陸自部隊からも、想定外の状況によって弾薬を他国軍に融通する必要がある場合も想定されると報告を受けた。あらかじめ法的に措置をしておく必要があると考えたわけでございます。
    山本:弾薬の提供、輸送と戦闘作戦行動のために発進準備中の航空機への給油、整備については、これまで武力行使と一体となった後方支援ということで憲法違反だった。しかし米国のリクエストで、今回、憲法解釈を変えた。実は米国のリクエストはもっとスケールが大きくて綿密だ。
    2000年以降、日米安全保障研究会米側委員代表のアーミテージ元国務副長官とナイ・ハーバード大学教授がアーミテージ・ナイ・レポートを作成し、日本の安全保障に対するアプローチについて提言した。2000年10月に第一次、2007年2月に第二次、そして2012年の8月に第三次が公表されたアーミテージ・ナイ・レポートは、それぞれ日本の安全保障政策に大きな影響を与えた。
    参照:リチャード・アーミテージ 
    山本:二枚目のパネルは、その第三次アーミテージ・ナイ・レポートの中の日本への提言9項目、そして、その他注目すべき記述を抜粋したものです。これを見ると、今回の憲法違反の閣議決定から憲法違反の安保法制まで、ほとんど全てアメリカ側のリクエストによるものだということがよく分かる。
    「10. 集団的自衛権の禁止は同盟にとって障害だ」の本文
    日本の利害の保護を必要とする最も深刻な条件の下で、我々の軍隊は日本の集団的防衛を法的に禁じられている。日本の集団的防衛の禁止に関する改変は、その矛盾をはっきりと示すことになるだろう。政策の変更は、統一した指揮ではなく、軍事的により積極的な日本を、もしくは日本の集団的自衛権禁止を変更することを求めるべきである。集団的自衛の禁止は同盟の障害である。3.11は、我々2つの軍が必要な時にいかに軍事力を最大限に活用できるかを証明した。平和時、緊張、危機、及び戦争時の防衛範囲を通して完全な協力で対応することを我々の軍に許可することは責任ある権限行動であろう。
    参照: CSIS「第3次アーミテージレポート」全文翻訳掲載の中の「集団的自衛権」を検索
    山本:

    提言1:原発再稼働 → 実行済
    提言3:TPP 交渉参加 → 実行済
    提言8:国家機密の保全 → 特定秘密保護法で実行済
    提言12:防衛産業技術の輸出 → 防衛装備移転三原則で実現済

    提言の中の、2. シーレーン保護、5.インド、オーストラリア、フィリピン、台湾等との連携、6.日本の領域を超えた情報・監視・偵察活動、平時、緊張、危機、戦時の米軍 と自衛隊の全面協力、7.日本単独で掃海艇をホルムズ海峡に派遣、米国との共同による南シナ海における監視活動、9.国連平和維持活動(PKO)の法的権限の範囲拡大、11.共同訓練、兵器の共同開発。これらはほとんど全て今回のこの安保法制に盛り込まれた。

    2015年4月、新しい日米防衛協力ガイドラインを承認したときの日米共同発表文書には、「日本が国際協調主義に基づく積極的平和主義の政策を継続する中で、米国は、日本の最近の重要な成果を歓迎し、支持する。これらの成果には、切れ目のない安全保障法制整備の ための2014年7月1日の日本政府の閣議決定、国家安全保障会議の設置、防衛装備移転三原則、特定秘密保護法、サイバーセキュリティ基本法、新宇宙基本 計画及び開発協力大綱が含まれる」と書いてある。

    山本:この第三次アーミテージ・ナイ・レポートで示された日本への提言が、新ガイドラインや安保法制で実現することになったと考えているか。
    岸田:平和安全法制は、あくまでも我が国の国民の命や暮らしを守るためにどうあるべきなのか、これは自主的な取組である。新ガイ ドラインは、日米の防衛協力について一般的な枠組み、政策的な方向性を示したものであると認識をしている。
    中谷:防衛省・自衛隊は、幅広く世界のいろんな方々からの考え方も含めまして情報収集、また研究、分析をしている。このレポートで指摘をされた点が結果として重なっている部分もあるが、あくまでも我が国の主体的な取組として検討、研究をして作ったものだ。
    山本:何から何 まで全てアメリカのリクエストどおりに行っている。米国の要請、ニーズには、憲法を踏みにじってでも、国民の生活を破壊してでも、真摯に全力で取り組むとはどういうことか。完全コントロールされて、独立国家と呼べるか、誰の国なんだ、この国は。その一方で、アメリカは、同盟国であるはずの日本政府の各部署、大企業などを盗聴し、ファイブ・アイズと呼ばれるイギリス、カナダ、ニュージーランド、オーストラリアなどとその盗聴内容をシェアしていた。もう間抜けとしか言いようがないお話、先月出てまいりました。
    (びっくりしたから解説:「ウィキリークス」は2015年8月31日、米国家安全保障局(NSA)が日本政府中枢や大手企業など35カ所を標的に盗聴を行っていたことを示す内部文書を入手したと公表した。盗聴の内容は、英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド(ファイブアイズ)に提供可能と記載されていたという。日本政府は「これが事実ならアメリカに遺憾の意を伝える」としたが、米国務省は「日本からの抗議はない」と答えている。
    参照 アメリカNSA、日本を盗聴しファイブアイズに提供か

    ◆米国の防衛予算

    【8/19山本太郎(生活の党と山本太郎となかまたち)

    米国のスターズ・アンド・ストライプス(星条旗)新聞、2015年5月13日

    2016年のアメリカ防衛予算は、日本政府が後押しをする、同盟国防衛のための新法案を可決するという前提で組まれている。そのため、アメリカは軍関係者を4万人削減した。

    フォーリン・ポリシー(米国の権威ある外交政策研究季刊誌)誌、7月16日

    日本の軍事面での役割が拡大することはペンタゴンとアメリカの防衛産業にとって良いニュースとなった。金が掛からない上に金ももうけられる。日本政府は多くの最新の装置を買うことができる。それはアメリカの防衛産業にとって良いことである。日本政府は、ロッキード・マーチン社製のF35、BAEシステムズ社製の海兵隊用の水陸両用車両、ノースロップ・グラマン社製のグローバルホークの購入計画を持っているとともに、ロッキード社製の二隻のイージスレーダーを備えた駆逐艦とミサイル防衛システムの開発を行っている。

    ◆ISIL(イスラム国)

    【8/19福島瑞穂(社民党)】

    福島:米国がISIL(イスラム国)掃討作戦に要している費用は。
    岸田:2014年8月7日に開始され、2015年7月31日までに米国が対ISIL作戦に使った費用は、合計35億ドル。一日当たりの平均費用980万ドル(一日当たり約12億円)だ。
    福島:年間4000億円。戦場で殺し殺され、莫大な人命が失われる。 福島:ISILへの空爆等に対する支援活動は条文上できるか。
    中谷:国際平和支援法の三つの要件を満たし、かつ国連決議があれば、一般論としては実施し得る。
    国際平和支援法:

    目的
     1.国際社会の平和及び安全を脅かす事態であって、
     2.その脅威を除去するために国際社会が国連憲章の目的に従い共同して対処する活動を行い、
     3.我が国が国際社会の一員としてこれに主体的かつ積極的に寄与する必要があるもの。

    要件:
    1.支援対象国の要請し、勧告し、又は活動を認める決議がある。
    2.1の他、当該事態に関連して国連加盟国の取り組みを求める決議がある。

    参照:「平和安全法政」11法案の概要
    (わかりにくいので解説:中谷氏の言う三つの要件は、国際平和支援法では「要件」ではなく「目的」に記載されている。国連決議とは、「国連として共同対処するぞ」決議ではなく、「支援して!」「Let'支援しよう」という一部加盟国提案に関する決議と思われる。)
    福島:もしこの法案が成立したら、掃討作戦、後方支援、消耗品の弾薬を提供するといって、莫大なお金が掛かる。誰がその抑制をするのか、誰が判断するのか。
    中谷:我が国は当然財政的な状況等もございますので、実施する場合においても財政当局と調整を行って必要に応じて最適な対応を取る。

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