補正予算案 国会審議の論点整理
    【参議院】その二:社会、外交、安全保障、憲法

    ■社会

    ◆子供の貧困問題

    【1/18 小池晃(日本共産党)】>>速記録

    <貧困率>

    小池:政府の統計でも相対的貧困率が上昇を続けている。

    塩崎:H24年の国民生活基礎調査によれば、相対的貧困率16.1%、子供の貧困率は16.3%で、貧困線は122万円。

    小池:日本は六人に一人が貧困ラインを下回る社会になっている。子供の貧困率はOECD加盟34か国中で最悪。新聞や雑誌で貧困特集がなされて、下流老人、貧困女子、漂流青年、困窮中年、あらゆる年代、階層が貧困に陥ってしまう危険と隣り合わせの暮らしになっている。総理の認識は。

    安倍:日本が貧困かといえば、そんなことはない。国民所得やGDP等でいえば、日本は世界の標準で見てかなり裕福な国になる。

    小池:貧困率、相対的貧困率は世界標準の数字であり、そこで見れば日本は世界有数の貧困大国になっている、という認識から出発しなければならないのではないか。

    塩崎:日本はかなり低い(貧困率が高い)方であることは間違いない。

    <進学率>

    小池:貧困の連鎖の問題がある。子供の貧困と進学率の関係はどうなっているか。

    馳:全国学力・学習状況調査によると、社会経済的背景が高い児童生徒の方が各教科の平均正答率が高い傾向が見られる。大学進学率では、全世帯の子供の現役大学等進学率が73.0%であるのに対し、生活保護世帯の子供は31.7%、児童養護施設の子供は22.6%であるなど、家庭の経済状況によって大学等の進学率に差がある。

    <健康>

    小池:子供の貧困と健康の関係について。2014年、全国11医療機関に入院した小児727件について相対的貧困家庭とそうでない家庭を比較した調査(仏教大学武内一教授)によると、貧困世帯では入院4回以上が1.7倍、経済的な理由で受診を控えている方は4.4倍、気管支ぜんそく基礎疾患している方は1.9倍、ぜんそく発作による入院は約2倍、それからインフルエンザワクチンを接種していない比率は3倍以上高い。子供の貧困は進学にも健康にも重大な影響を与えている。

    <将来効果>

    小池:子供の貧困状態を改善することによる経済、財政への効果の調査結果があるか。

    加藤:昨年12月に日本財団等が公表した資料によると、現在15歳の貧困状態にある子供18万人の進学率が改善した場合は、64歳までの間で生涯所得の合計額が約2.9兆円増加、また、それに伴い税、社会保障の納付が増加することなどから、政府の財政が1.1兆円改善するという研究がある。

    小池:その調査は15歳だけのもの。もっと大きな効果が出てくる。貧困は日本の政治にとって重大な課題だし、これを放置することは日本社会にとって重大な損失だし、これを本気で解決することは、日本の未来を切り開く力を持っている。総理の認識は。

    安倍:子供たちの貧困の連鎖を断ち切っていくことが極めて重要。政府を挙げて全力で取り組んでいく。

    <児童扶養手当>

    児童扶養手当
    第一子引き上げなし
    第二子5000→10000に引き上げ
    第三子以降3000→6000に引き上げ
    臨時福祉給付金H24は10000、H25は6000、H26は3000
    子育て世帯臨時特例給付金H24は10000、H25は3000、H26は廃止

    小池:子供一人の母子世帯で見ると、H24は2万円、H25は15000円、H26は6000もらえる。一方、H26の消費増税負担額は6000〜14000円。消費増税により給付金がなくなって貧困が加速するのではないか。

    安倍:子供が二人以上いる家庭は増額の恩恵を受ける。(第二子以降への)幼児教育の無償化 の段階的拡充など、今後とも多子世帯あるいは一人親家庭への支援を進めていきたい。

    小池:子供一人の家庭はどうでもいいという話か。子供が多ければそれも大変だ。生活保護費も削減されている。

    生活保護(生活扶助基準)
    子一人4580円削減 + 冬季加算削減
    子二人13140円削減 + 冬季加算削減
    子三人15960円削減 + 冬季加算削減

    塩崎:生活扶養基準は、生活保護を受給していない低所得世帯との均衡の取れた最低限度の生活を保障するというもの。

    安倍:限られた財源の中でどう配分するかということで、経済的に厳しい家庭に振り向ける方策として、第二子、第三子に多子加算をしている。一人親世帯に対しては、一人親の就職に有利な資格取得支援あるいは保育所利用の負担軽減など、総合的な支援を実施している。

    小池:生活保護は(生活保護を受給していない中の)低い方に合わせるものだがそれを続ければ貧困大国になる。日本の母子世帯の就業率は世界有数の高さ、もっと働けというのか。働いている一人親家庭と働いていない一人親家庭を比べると、働いている家庭の方が貧困率が高い。異常だ。ヨー ロッパは働けば貧困率は改善する。背景に、低賃金、男女間の賃金格差がある。就労によって自立するという母子支援策の誤りを認めるべきだ。財源がないと言うが、大企業に対する減税、軍事費五兆円超えはなんだ。見直す余地がある。

    >>内閣府 子供の貧困

    ◆大学授業料・奨学金

    【1/18 福島みずほ(社会民主党・護憲連合)】

    福島:国公立大学の授業料は約54万円、私立大学は約86万円。入学金と合わせれば入学時に100万円以上かかる。奨学金は入学後の話なので、母子家庭(年間就労所得181万円)の子供は進学をあきらめるか、借金するか。

    安倍:来年度予算案で大学の授業料減免を国立で約59000人、私立で約45000人にする。大学等の無利子奨学金を474,000人とする。

    福島:授業料が高すぎる。文科省は平成30年には授業料を100万円近くにするつもりか。

    馳:仮定の話だが、大学の運営費交付金を一%ずつ減らし、それを全部授業料で補てんするとしたら、平成30年に授業料は約93万円になる。大学経営には財源が必要だが、できるだけ学生に経済的負担をさせないよう奨学金制度などを拡充していく方向で取り組んでいきたい。

    福島:国際人権規約A規約は、高等教育における無償化をうたっている。国公立大学の入学金・授業料の無償化には4168億円、私立は2兆6808億円かかるが、このような教育支援をやるべきじゃないか。

    馳:国立大学の授業料(54万円)はこの10年間据え置きで、今後もそれは継続すべきと思っている。大学無償化には3兆976億円かかるが、財源をどうするか、受益者負担をどうするか。実情を踏まえた奨学金制度の充実が必要と考えている。

    福島:年収200万以下の人にとって54万円は高い。日本は国際人権規約A規約を批准しているのだから、その方向を目指すべきだ。

    馳:今、学生の50%が奨学金をもらい、返済額は月13000〜14000円。

    福島:平均返済額は300万程度と言われているが、大学院やロースクールに行けば500万、1千万とかかる。日本育英会法改正で有利子枠がどんどん拡大しているのではないか。

    馳:その通り有利子枠が増えているので、有利子から無利子へと変換をすすめている。

    福島:無利子枠は拡大せず、有利子枠が10年間で10倍拡大した。社会人になるとき多額の借金返済が始まるのは問題だ。給付型の奨学金はどれほどあるか。

    馳:文部省に給付型の奨学金はない。財源、水準、渡し方をどうするか検討が必要だ。

    福島:就職後、いろいろな事情で辞職すると、返せないのに延滞料がかさんでいく。一括で返せと言われ自己破産、連帯保証人(親)も自宅売却や退職金で払って下流老人、老人破産がおこる。

    安倍:経済的な理由で返還が困難な者に対しては、毎月の返還額の減額、返済を長期化、返還期限猶予制度により対応してきた。H26から返還期限猶予制度の年数制限を5年から10年に延長するとともに、延滞金の賦課率を10%から5%に引き下げるなど、救済措置の充実を図っている。

    福島:奨学金返済者同士が結婚すると借金600万円。子供を産むなどできなくなる。

    【1/19 斎藤嘉隆(民主党・新緑風会)】

    斉藤:大学院生の70%がアルバイトをしている。半数以上が週10時間以上。高い学費のためにアルバイトをして学業に専念できない、本末転倒だ。OECD34カ国中、33カ国が給付制奨学金または大学授業料無料。授業料が有料(高額)かつ給付制奨学金がないのは日本だけ。多くの国で、授業料無料に加え給付制奨学金がある。日本はおかしい。当初予算で給付型奨学金を導入する考えはあるか。

    馳:課題は三点:財源、支給基準、渡し方。検討中である。

    斉藤:当初予算で所得連動型のシステム開発に23億円計上されている。月3万円を6千人に給付できる額だ。システム開発に23億使うより、一部だけでも段階的に給付制奨学金を導入した方がいい。高齢者への臨時給付金に計上されている3600億円あれば、国公立大学の全学生の年間授業料を無料にし、私立大学の授業料減免も大きく拡大できる。2016年当初予算の私立大学の授業料減免予算増額は1億円だけ。臨時給付金の3600億円を未来への投資に使うべきだ。

    ◆保育士の処遇改善

    【1/19 斎藤嘉隆(民主党・新緑風会)】

    斉藤:保育、介護離職ゼロは緊急課題。そのための人材確保が課題だ。40万人が保育の仕事に従事する一方、70万人が資格持ちながら働いていない。理由は給与水準が低いから。


    (OECD各国の小学校教諭の給与に対する幼稚園教諭・保育士の給与の割合)

    斉藤:OECD34カ国の多くは、小学校と幼稚園教諭の給与が同じだ。日本は幼稚園・保育士の給与が突出して低い。日本の小学校教諭の給与は初任給ではOECD平均よりも低い。その低い小学校教諭のさらに6割程度しか保育士はもらえない。

    安倍:すでに人事院勧告に従った処遇改善を行い、当初予算で3%相当処遇を改善し、さらに補正予算で措置する。

    斉藤:保育士の給与の実態はどうか。

    塩崎:保育、介護の処遇に問題があると認識している。

    斉藤:介護職員の年収アップが課題だ。施策は。

    塩崎:介護職の年収が他と比較してかなり下回っていると認識している。H27から介護職員処遇12000円加算した。8月時点で7割の事業所が加算上乗せを行っている。

    斉藤:昨年4月に介護報酬がカットされた。職員の処遇改善分1.5%相当は事業所の自助努力で給料を上げている。事業者にとっては4.5%マイナス。職員の手取収入は増えているが、ベースアップではない一時的な加算給付なので、職員が仕事を続ける動機づけ、離職者が復職する動機づけにはなっていない。介護報酬カットによって圧迫され、介護事業者が倒産している。

    塩崎:商工リサーチの調査では、倒産件数は増えているが、介護事業者数は増加している。

    >>老人ホーム倒産急増 安倍政権「介護報酬カット」が大失敗
    >>2015年1-11月「老人福祉・介護事業」の倒産状況

    ◆介護離職

    【1/19 薬師寺みちよ(無所属クラブ)】

    薬師寺:昨年の医療介護総合法案の議論では、「なるべく住み慣れた自宅で自立できること」が目的だったはずだが、今回、施設増強に方向転換しているのでは。

    安倍:特養施設入所希望者が多い。地方には十分施設があるが、東京都内では施設が不足している。そういう希望に応える施設在宅サービスの整備料を支援する。

    薬師寺:施設を作れば介護離職減少につながる根拠は何か。

    安倍:介護離職者の離職理由の一つに、認知症になった親の介護がある。特養を増やすことで離職を減らす効果がある。

    薬師寺:介護職員が不足している。箱モノを作っても中身が伴わないのではないか。

    塩崎:介護福祉士を目指す学生が減少し、定員の半数程度しかいない。5年間勤務で返済免除する奨学金制度(12000人分)の拡充、再就職準備金貸付制度では2年間働けば返済猶予、事業者のコンテスト、表彰、職員のための保育施設、介護ロボット、介護人材レベルによる事業者への加算制度などの施策を行う。

    薬師寺:60%以上の国民が自宅療養を希望している。この希望はどう反映されているか。

    安倍:訪問介護、訪問看護のサービスに上積みしている。

    薬師寺:自ら家事を行い社会で活動する自立支援が立ち遅れていた。

    塩崎:要支援を地域に戻すなど、要介護度が上がらないように支援していく。

    薬師寺:施設を作って預けてしまえば働ける(介護離職が減る)という短絡的なことではだめだ。

    ◆議員定数削減

    【1/7 前川清成(民主党・新緑風会)】

    前川:2012.11.14、当時の野田総理は、消費税を引き上げる以上、国会議員も身を切るべきだ、2013年の通常国会で議員定数を大幅削減すると約束するなら、という約束で衆議院を解散した。既に3年が経過した。総理はいつまでに約束を果たすか。

    安倍:(衆議院での答弁と同じ)

    衆議院◆議員定数削減

    ◆選択的夫婦別姓

    【1/7 井上哲士(日本共産党)】

    井上:選択的夫婦別姓について、最高裁判決は不当にも夫婦同姓の強制は合憲としたが、制度のあり方については「国会で論ぜられ、判断されるべき事柄」と述べ議論を促した。個人の尊厳に基づき、国民・女性の願いに応えた民法改正が求められている。

    ■外交

    ◆慰安婦問題

    【1/7 大野元裕(民主党・新緑風会)】

    大野:日韓合意の法的位置づけ、請求権財産権は。

    安倍:財産請求権は1965年の日韓請求権・経済協力協定により法的かつ最終的に解決済という立場に変更はない。

    大野:安倍政権の閣僚は過去に、政治的にも人道的にも解決済みと発言し続けてきた。

    安倍:過去に様々な見解があったが、今回の合意によって最終的かつ不可逆的に解決した。

    大野:日本のみが税金から基金に拠出するのは、この基金の支出に対して我が国が発言権をもつか。

    安倍:(答弁なし)韓国政府が財団を設立し、日本政府予算で資金を一括拠出し、日韓両政府が協力して事業を行う。

    大野:10億円基金拠出は慰安婦像の撤去または移動が条件か。

    安倍:(答弁なし)韓国側は、日本政府が日本大使館前の少女像に対し公館の安寧・威厳の維持の立場から懸念していることを認知し、韓国政府としても適切に解決されるよう努力する、という内容だ。

    大野:総理は「子や孫の世代に謝罪する宿命を背負わせるわけにはいかない」と述べた。韓国政府は日本政府と議会にではなく日本国民に謝罪を求めていたのか。今回の合意がなければ日本政府ではなく日本国民が謝罪する責任を負い続けると考えるか。

    安倍:(答弁なし)

    ◆日印(日本とインド)原子力協力協定

    【1/7 井上哲士(日本共産党)】

    井上:総理は、インドとの間で原発の輸出を可能とする原子力協定締結へ原則合意した。インドは核保有国で、核不拡散条約にも不参加。インドとの協定締結は、核兵器開発に手を貸すことになりかねず、被爆国日本がインドの核保有を認めたと国際社会にメッセージを与えることになる。日印原子力協定は中止すべきだ。

    安倍:(衆議院と同じ答弁)インドに限らず原子力にかかわる国際協力では、福島の教訓を国際社会と共有し、安全神話に陥ることなく、世界で最も厳しいレベルの安全性を追求する方針である。

    >>◆日印(日本とインド)原子力協力協定

    【1/7 大野元裕(民主党・新緑風会)】

    大野:日印原子力協力原則合意に関し、インドが核実験を行う場合は日本からの協力を停止すると報告した。しかし日印共同声明には協力停止措置は盛り込まれていない。原子力平和利用に関してインドとの二国間協定を締結した米仏はIAEAによる厳しい条件付きであり、これは日本が求めた核実験禁止条件よりはるかに厳しい。総理はなぜ他国よりゆるやかな条件でインドに原子力協力を国会に報告したか。外務省に確認したところ「協力停止措置に関する報道はあるが、政府要人がそのことについて話したことはない」という政府の立場を述べた。外務省が否定する以上、インドに対し協力停止措置を明言したか疑わしい。インドが核実験を再開する場合の日本の協力停止が合意文書に明記されず、首脳会談概要でも触れられず、外務省が否定する日本側の制裁措置をいかに担保するか。

    岸田:インドが核実験を行った場合は日本からの協力を停止することを安倍総理からインド首相に明確に述べた。インド側は日本の立場を了解したうえで今回の原則合意に至った。インドが米仏と結んだ協定以上(より厳しい)をめざした。インドの「約束と行動」政策を共同記者発表で明らかにした。協定の具体的文言は引き続き調整中。

    ■安全保障

    ◆安保法

    【1/7 井上哲士(日本共産党)】

    井上:安倍政権は、多くの憲法・法律の専門家が憲法違反と指摘した安保法制を昨年9月、強行採決した。沖縄では、県民の度重なる審判を無視し、行政不服審査制度を悪用して辺野古の工事を再開するなど、憲法に定める地方自治の本旨を踏みにじった。さらに、野党議員による臨時国会召集要求を握りつぶし、憲法53条に明確に違反した。立憲主義、民主主義否定を重ねることは許されない。

    安倍:平和安全法制は野党三党の幅広い同意を得て成立した。世界の多くの国から支持と評価が寄せられている。廃止は考えていない。引き続き丁寧な説明を続ける。 (臨時国会召集要求に対しては衆議院審議と同じ答弁)

    >>◆憲法53条 臨時国会召集

    【1/7 大野元裕(民主党・新緑風会)】

    大野:政府は、集団的自衛権の具体的事例が明確でないなかで、外国に対し安保法制をどう説明したか。

    安倍:国連PKOへの幅広い参加が可能、新三要件による限定された行使容認であること、必要に応じ具体例を説明し、多くの国から理解と支持を得た。

    【1/19 仁比聡平(日本共産党)】

    仁比:安倍政権は9/19安保法制を強行採決した。しかし「戦争法廃止、立憲主義を取り戻せ」という国民多数の声をどう受け止めるか。

    安倍:国民の平和のために必要な法制だ。十分な(200時間超)審議時間を費やしたし、野党三党からも賛成があった、多くの外国からも支持があったことなどから、これが戦争法案でないことは明らかである。このような説明努力を今後も続ける。

    ◆南シナ海での日米共同監視活動

    【1/7 井上哲士(日本共産党)】

    井上:安倍総理は海外出張報告で「世界の平和と繁栄のために貢献」と述べたが、その中身は、新・日米ガイドラインと戦争法の具体化および原発の輸出推進など軍事による貢献だ。11月の日米首脳会談で南シナ海での自衛隊活動について、「オバマ大統領が、共同の警戒監視活動への参加を求めた」と報じられているが、情勢次第で警戒監視活動への参加もありうるということか。

    安倍:米国が実施している南シナ海での「航行の自由作戦」を「支持する」と米国に伝えたが、「航行の自由作戦」に自衛隊が参加することはない。自衛隊が南シナ海における常時継続的な警戒活動を実施する計画はない。南シナ海情勢が我が国の安全保障に与える影響、航行の自由、法の支配が貫徹されるよう様々な選択肢を念頭に置きながら十分な検討を行っていく。

    ◆日本製武器の売り込み

    【1/7 井上哲士(日本共産党)】

    井上:安倍総理はオバマ大統領に、武器輸出やODA(政府開発援助)により関係国を支援する考えを示し、オーストラリアの次期潜水艦の共同開発の計画提案、インド、インドネシアへの飛行艇の輸出、ベトナム、フィリピンへの武器輸出協定の協議など日本製武器の売り込みを行った。紛争地域の当事者に武器を輸出することは、平和の貢献ではなく、逆に地域の緊張を高めるだけだ。

    安倍:防衛装備の海外移転は、これまでの平和国家としての基本理念を継続する。防衛装備移転三原則の下、海外移転が許されるのは、平和貢献、国際協力の積極的推進、安全保障の観点から積極的意義がある場合に限定される。武器輸出を国家戦略として推進する考えはない。

    井上:2015年10月1日に防衛装備庁が発足した。経団連は「安保関連法の成立で自衛隊の国際的な役割の拡大が見込まれる」、武器輸出を「国家戦略として推進すべきである」と提言した。紛争を助長する武器輸出は憲法9条を持つ日本の国家戦略に反する。総理は、武器輸出を国家戦略として推進するつもりか。

    安倍:(答弁なし)

    ◆水陸両用部隊(佐世保)

    【1/19 仁比聡平(日本共産党)】

    >>参照:国会議事録

    仁比:自衛隊の河野統幕長は2014年12月、米軍トップ(ダンフォード海兵隊司令官)と会談した。河野統幕長は米側に、水陸機動旅団の創設や日米共同訓練に更に積極的に参加する意欲を表明し、米側は、オスプレイMV22、水陸両用車AAV7への協力は惜しまないと述べた。

    中谷:相手方との関係もあり、会談の記録を明らかにすることはできない。島嶼部防衛のために水陸両用作戦能力の着実な整備が重要であり、佐世保地区に陸自の水陸両用部隊を配備する計画を有している。

    仁比:佐世保は明治以来、強大な海軍基地とされ、米海軍と海上自衛隊の基地と艦船がひしめき合っている。防衛省の崎辺地区施設整備構想(案)では、崎辺町の西側と東側をどうするつもりか。

    中谷:西側では、西方方面普通科連隊を母体とする水陸機動連隊のうちの一つを佐世保市崎辺西地区の相浦駐屯地に新編をする予定。水陸機動連隊を海上自衛隊の艦艇 に搭載して輸送するため、搭載が容易な港湾等の近傍に配備することで迅速に南西地域に展開する。

    東地区には、大型護衛艦等の艦艇が係留可能な大規模な岸壁等を整備する予定。

    仁比:防衛省の資料によると、DDH(ヘリ空母)、大型護衛艦や「おおすみ」型輸送艦が係留可能な大規模な岸壁をL字形 に整備すると。22トンもある水陸両用車が海で訓練をし、オスプレイも着艦できるヘリ空母で出撃する陸海一体の新たな基地をこの佐世保港のど真ん中に造るという恐るべき新基地建設だ。軍事的緊張の拡大と悪循環をもたらす危険な道だ。

    海上自衛隊の香田洋二元自衛艦隊司令官が国会で、水陸両用作戦能力は海外派兵につながるという ことで、つい十年前まではタブーだったと国会で述べた。つまり、憲法九条の下で禁止されている海外派兵につながる 水陸両用部隊の基地を造るということではないか。

    中谷:現下の安全保障環境を踏まえ、島に対する攻撃への対応に万全を期するために、水陸両用作戦能力の着実な整備が必要であり、これはもう既に防衛大綱に記せられている。

    仁比:島嶼防衛、専守防衛と言うが、これまでの専守防衛の意味も一内閣の閣議決定で百八十度転換して、戦争法を強行したのが安倍政権だ。ごまかしは通用しない。

    ◆オスプレイの佐賀空港配備問題

    【1/19 仁比聡平(日本共産党)】

    仁比:現時点において地元の了解は得られていない。その理由は、佐賀空港の成り立ちの根本に照らして、軍事基地化はあり得ないから。佐賀空港建設に関する公害防止協定書には県の考えとして「県は佐賀空港を自衛隊と共用する考えを持っていない。」と明記されている。

    中谷:防衛省は佐賀空港へのオスプレイの配備に当たり、あくまでも民間空港としての発展や機能を損なわないことを前提に検討を進めている。騒音、安全といった地元の懸念に対して、引き続き丁寧な説明に努め理解を得ていきたい。

    仁比:米軍でも自衛隊でも軍事基地化はさせない、という協定の重みを知ろうともせず、防衛省は佐賀空港配備を持ち出した。オスプレイ配備は白紙撤回しかない。

    >>佐賀空港へのオスプレイ予算計上見送り

    ◆尖閣諸島防衛

    【1/7 大野元裕(民主党・新緑風会)】

    大野:昨年成立した安保法制は尖閣諸島の領土領海等の防衛に対応しない。政府は尖閣等には法律ではなく運用で対処できると述べたが、年末には武装した中国船が我が国領海に立ち入った。民主党は領域警備法を国会に提出したが、政府与党は三度もこれを廃案にした。今国会で領域警備法を制定する必要性がある。

    中谷:武力攻撃に至らない侵害に対しては、海上警備行動・治安出動にかかる手続きの迅速化、関係機関の対応能力の向上・連携強化、訓練充実などを推進している。現時点で新たな法整備が必要だとは考えていない。

    ◆特定秘密保護法

    【1/7 大野元裕(民主党・新緑風会)】

    大野:特定秘密保護法、国会として監視検証するべき点がある。特定秘密管理簿のうち本院の情報監視審査会において複数の委員が特定秘密の指定について疑義があるとした案件について、政府は提出に難色をしめした。国家安全保障会議および警察庁指定の特定秘密各一件は、与党多数で否決され、審査会で提示要求すらできなかった。政府与党による隠ぺいの疑いがある。特定秘密の指定の客観性を保証すべきだ。

    安倍:国会の情報監視審査会については政府としてはコメントを控える。審査会の調査に誠実に対応してきた。

    >>特定秘密提示要求を否決 参院の監視機能疑問
    >>特定秘密の提示要求を与党が否決。

    ■憲法

    ◆自民党の憲法改正草案

    【1/19 福島みずほ(社会民主党・護憲連合)】

    福島:自民党が発表した日本国憲法改正草案の緊急事態宣言条項について尋ねる。

    第9章『緊急事態』99条1項
    『内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができる』
    『内閣総理大臣は財政上必要な支出、その他の処分を行ない、地方自治体の長に対して、必要な指示をすることができる』

    福島:国会は唯一の立法機関。しかし、内閣が法律と同じ効力を持つ政令を出すのであれば、立法権を国会から奪うことになる。

    安倍:大規模な災害が発生したような緊急時に国家と国民がどのような役割を果たしていくべきかを憲法にどう位置付けるかは重要な課題だ。

    福島:事後に国会の承認を求めるとなっているが、国会が承認しなかった場合、政令の効力はどうなるか。(自民党の改憲草案には)、国会の承認が得られなかった場合の効力について規定がない。きわめて問題だ。

    安倍:自民党の憲法改正草案の個々の内容について、政府として答えることは差し控えたい。

    福島:五年前の東日本震災、原発震災では、憲法に緊急事態条項がなかったための問題があったか。

    安倍:あのときは、地方選挙を延期するという措置がなされたが、では国会議員選挙の場合はどうするかという議論になった。

    福島:内閣限りで法律と同じ効力を持つことができるのであれば、これはナチス・ドイツの国家授権法と全く一緒だ。

    福島:常に公益及び公の秩序に国民は反してはならないとされている。公益、公の秩序とは何か。辺野古の新基地建設は公益か。

    安倍:(回答なし)



      inserted by FC2 system