安保法案の論点整理【9/8 参考人意見陳述】

    9月8日 我が国及び国際社会の平和安全法制に関する特別委員会

    参考人の意見(赤字部分)に対し、疑問、反論、感想などの作者のコメント(緑字部分)を付けました。ご参考になれば幸いですが、ご参考にならなくても怒らないでね。。

    【宮家邦彦(参考人 立命館大学客員教授)】

    ●参考議事録:<リンク>聞文読報-文字に起こし、目で聴くブログ

    ◆「外務省員はみんな自衛隊に入って危険地帯を経験すべし」か

    【宮家参考人】

    ある憲法学者は、「外務省員はみんな、自衛隊に入って危険地域を経験すべし」と言った。私も「憲法学者、内閣法制局長官こそ、戦争地域を体験されたらいかがか」と言いたい。

    【作者コメント】

    軍人経験者または軍人精神を身につけた者が外務省行政を司ればいいという意味か?

    参考人は自身が湾岸戦争時にサウジアラビアやバグダットにいた経験から「外務省員とか自衛隊員よりも、はるかに実地の戦争経験がある」と自認。自分を誇りに思うのはかまわないが、その裏返しで、外務省員が軍事面からみた世界情勢を理解していない、と見下すのは狭い考えだ。

    参考人は「政治家や官僚や公務員が実際の紛争現場を体験して、国防の在り方を研究すべきだ」と言いたいのだろうが、これは文民統制(シビリアンコントロール)を否定する考えだ。「文民統制」は「良い」ではなく「必要」だからやっている、その必要性を理解しているか?

    一点、 参考人の意見に賛成。今回の法案では、<リンク>自衛官の自殺やトラウマの予防対策を行うメンタルヘルス企画官を事務官が担当することになっているが、戦争地域体験のある医務官やPKO任務経験者がその役を担うようにしたほうがいい。

    ◆世界の常識

    【宮家参考人】

    安保法案に反対する人たちの主張は、安全保障の本質を理解せず、冷戦後の世界の大きな変化を考慮しない、観念論と机上の空論だ。

    【作者コメント】

    世界の国々(の一部)は、集団的自衛権を行使し、国際紛争解決手段としての武力行使を容認する。そのような国々の常識が日本に通用しないことはもちろんである。日本は、世界の常識に反し、不戦を国是とする憲法を制定した。常識が異なることは異常でも悪でもない、単なる差である。そしてその差には、太平洋戦争の当事者であったことへの反省という理由がある。

    ◆抑止力

    【宮家参考人】

    冷戦時代は安定した時代だった。1950年の朝鮮半島で抑止が失敗したのを除けば、東アジアでは、基本的には抑止が効いた時代だった。

    【作者コメント】

    冷戦時代は、ベトナム戦争と朝鮮戦争(アメリカが直接介入)、アフガニスタン侵攻(ソ連が直接介入)、キューバ危機(米ソの直接戦争の危機)、中東戦争と印パ戦争(国家間)、アンゴラ内線、ソマリア内戦、カンボジア内戦、キプロス紛争(米ソ両国が現地勢力を支援)があって、危険極まりない時代だったと思う。日本はたまたま戦争に関与せず安定していたが、世界では米ソの代理戦争が頻発し核の脅威もあった。「冷戦時代は実に安定した時代だった」の論理(考えの筋道)が理解できない。朝鮮戦争が起こったのに「東アジアで基本的に抑止が効いていた」と言い切る論理が理解できない。「冷戦時代は安定、現在は不安定」という結論を強引に導こうとしているように感じる。

    現在、旧帝国による不健全な民族主義が復活し、これに伴い各地で物理的な脅威も発生し始めている。最大の問題は、この種の国家ないし勢力には抑止がきかない可能性があるということ。

    旧帝国ってどこ?不健全な民族主義って具体的にどこの話?「レッテル貼」による思考停止だ。

    そもそも、抑止が効かないなら、日本が安保法制により「抑止力を高める」こともできない、この安保法案の目的は「抑止だ」という政府の主張は意味をなさないのでは。

    ◆悪意のある勢力、国益を求める勢力

    【宮家参考人】

    戦争というのは、悪意のある勢力が物理的な力をもって現状を変更しようとする時に、往々として起きる。

    【作者コメント】

    イスラム国は、まさに「悪意のある勢力が物理的な力をもって現状変更しようとした」といえるが、戦争は相手あってのもので、ISILに対する米国等の武力攻撃が戦争を引き起こしている。その戦争は、国際紛争を解決せず、市民の犠牲や報復テロを生み、世界中に被害を拡大させている。

    イラン革命直後、湾岸地域に力の空白が生まれた。それを埋めようとしたのがイラクのフセイン大統領であったが、当時のイラクを抑止する国はなかった。

    イラク戦争は、アメリカ合衆国が主体となりイギリス、オーストラリア、ポーランド等が加わる有志連合によって、イラク武装解除問題の進展義務違反を理由とする『イラクの自由作戦』の名の下に、イラクへ侵攻したことで始まった軍事介入である。(<リンク>Wikipedia イラク戦争より)
    <リンク>「イラク開戦の動機は石油」前FRB議長、回顧録で暴露。2007年 AFP通信」

    私は様々な書籍やネットの情報を総合的にシロウト判断した結果、イラク戦争はイラクのフセイン大統領が「悪意のある勢力が物理的な力をもって現状変更しようとした」ものではなく、存在しない大量破壊兵器を存在すると強弁して米国が攻撃したものだったと思う。。「悪意はないけれど石油利権欲がある米国とそれに同調する勢力が物理的な力をもって現状変更しようとした」のがイラク戦争だったと思う。

    逆に、最近のシリアやイラクでは、イスラム国が台頭しておりますけれども、これも、国際社会が、シリア内戦に対して、適切な措置をとらなかったことの結果でありましょうし、その国際社会の対応の中には、欧米諸国のシリアの現状を放置する動き、これもあったように思います。 このように、軍事介入というのは、時に事態を悪化させることがありますが、同時に非介入主義というものも、同様に悪影響を及ぼしうるのでございます。

    米国の国益に関係ない不正義に対しては、米国をはじめとする欧米諸国は非介入。シリアや北朝鮮や中国のチベットや新疆ウィグル自治区は米国の国益に無関係なので、米国は「正義の剣」を振るわない。国際社会は正義原則で活動するものではないし、国連も公正公平な機関ではない。日本も、「世界の平和のため」というよりも国益のため、といったほうが正直でいい。

    危機に際して正しい措置をとるのは簡単ではない。抑止に失敗すれば悪意の勢力は勢いを増す。いかに善意の勢力が平和を唱えても、いかに外交努力を重ねても、抑止は破れる時がある。今のウクライナ、南シナ海、シリアっていうのは、その一例。

    国連が承認した集団的自衛権の事例では、「善意の勢力」や「外交努力」より先に、欧米列強が自国の国益、利権を求めて軍事介入した事例が多かったと思う。ウクライナ、南シナ海、シリアのそれぞれの国、それぞれの紛争には歴史的背景があり、紛争に至るやむを得ぬ事情があったと思う。それを十把一からげに「悪意の勢力」というのは思考停止のレッテル貼だ。

    いま国会で、特定の情況の下で、危機的な状況は起こりえる/起こりえない、と議論されているが、危機は何でも起こりうる。あらゆる事態に対応できる法的枠組みを準備しておかなければいけない。

    あらゆる事態に対応する枠組みが、今回の法案では穴だらけだ。海外派兵のあおりで国防が手薄になる。 <リンク>自衛隊は憲法の制約で武力攻撃に反撃できない。自衛隊員が民間人を殺傷すれば<リンク>隊員個人に殺人罪と損害賠償。

    政府は自衛隊の危機回避について、多くの場面で、非現実的な想定をしている:
    <リンク>後方支援だから戦闘地域にはならない。
    <リンク>自衛隊員が敵国に拘束されても捕虜になれないが平和的に解決できる、
    <リンク>原発にミサイルが落ちても東日本大震災の原発事故以下の被害ですむ、
    <リンク>日本国内でISILのテロが起こっても警察が平和裏に対処できる

    なぜもっと「最悪を想定」して、それに対応できる法的枠組みを作らないか説明してほしい。

    ◆イラク特措法により自衛隊が連合国軍に参加

    【宮家参考人】

    イラクに陸上自衛隊本隊が到着する前と後で、連合国暫定当局における日本の待遇は大きく変わった。到着後は、連合国の一員として、危険情報、出席できる会議、待遇が格段に向上した。同盟国扱いになった。信頼できない国の部隊には、重要な情報も待遇も与えないのが世界の常識。安全保障面での相互信頼を高める努力、これがいかに必要か。

    【作者コメント】

    自衛隊は戦闘部隊ではないが、米国の軍人をバグダットに輸送する兵站業務を担ったので、同盟軍の扱いとなり、軍事情報の共有が図られたと考える。このような軍事同盟に入ることが「信頼関係」で、入れないことが「信頼されない」というのは論理のすりかえだ。単に、軍事同盟に入るか入らないか、ゲームのルールを共有するかどうかの話で、国としての信頼関係とは別問題だ。

    連合国暫定当局(CPA)の性格、イラクに大量破壊兵器がなかったこと、イラクに不要かつ重篤な紛争を生じさせたこと、自衛隊活動中にイラク市民の犠牲が増えたこと、など総合的にシロウト判断すれば、日本がイラク戦争の軍事同盟に加わったことは愚策であったと考える。

    https://ja.wikipedia.org/wiki/連合国暫定当局 CPA

    本部はバグダードのフセイン大統領時代の大統領宮殿を使用し、本部と周囲を米軍の管理下に置き、その後、国連多国籍軍管理の管理下におき、CPA解散後、宮殿はアメリカ大使館となった。

    ・・・これは米国によるイラク侵略だと思う。

    当初は、サッダーム・フセイン一族と側近を(大量破壊兵器隠しの)戦犯として追及する一方、 それ以外の政治家は残留させてゆっくり改革していく考えであったが、 ブッシュ政権や国防総省、イラク国内の反対派勢力により、旧フセインの人員は1か月で解任され、 後任に「アメリカ合衆国の外交官」ポール・ブレマーが、CPA代表に就任し、イラク国家運営を指揮した。

    ・・・これは、米国によるイラク侵略、加えて内政干渉だと思う。

    <リンク>イラク戦争後、アメリカはイラクで利権を得ましたか?
    <リンク>石油支配めぐるイラク戦争
    <リンク>バグダード、10年後 イラク石油戦争の挫折

    ポールは、前政権の党員、官公庁職員・警察官・消防士・軍人など、フセイン時代からの公務員をすべて公職追放し、これに続く適切な人材を補充できなかったため、国家機能が失われ、追放された人材が武装勢力に加わり過度な衝突を招いた。各地で武装勢力や宗教勢力が自治組織を運営して勢力を拡大した。CPAの政策は、イラクの「内戦状態」の主要因となったともいえる

    ◆軍国主義は再燃するか

    【宮家参考人】

    戦前の日本が失敗したのは、軍隊に対するシビリアン・コントロールができなかったことが問題。今の日本で、当時のような軍国主義が起きるか?それほど我々は、今の民主主義に自信がないのか。わたしはそうは思わない。

    【作者コメント】

    今現在も、自衛隊が裏でやっている活動を中谷防衛大臣が関知していない事態が起こっている(航空幕僚監部の内部資料に「武力行使」が記載されていることについて、中谷防衛大臣が「そういう例外的なことも分析研究を行っているのではないか」と呑気な答弁 )。

    「開戦は当たりまえ」「開戦しなければ陸軍に反乱がおこる、と天皇に説明」「外交交渉に力を入れたい東条首相に公然とテロやクーデターを主張する」(書籍『「昭和天皇実録」の謎を解く』の「第五章 開戦へと至る心理」より抜粋)
    先の大戦で、陸軍による満州事変や2.26事件、軍の統帥である天皇に対し軍が情報を隠す、事前承認をとらずに既成事実を作り事後承諾をひきだす、反対すれば反乱を起こすと脅す。 これと同じことを軍事力を増したこの先の自衛隊や時の内閣はやりそうな気がする。

    現政権がこれほど民意とかけ離れた仕事をするとわかった以上、日本の民主主義には全く自信がもてないよ。

    安保法案では、限定的な集団的自衛権しか行使しない、できない。どうやって日本を軍国主義化するか理解できない。

    安保法案では、ドンパチやらないだけで、ドンパチに必要な、武器弾薬の輸送、提供、戦闘機への給油、武器防護、救難捜索など兵站業務を自衛隊が担う。日本は米国の後方で軍事行動する。「軍国主義化」ではないが、法案が成立すれば、日本が米国の後方で軍事行動する、それは以前の日本と比較すれば明らかに「軍事化」する、と言える。

    ◆ポジ(ティブ)/ネガ(ティブ)リスト

    【宮家参考人】

    主要国の安全保障法制は、禁止条項を列挙し、それ以外は実施可能とする「ネガティブ・リスト」。シームレスな対応が可能。日本では、実施可能なもののみ列挙して、それ以外はできない。虫食い状態の「ポジティブ・リスト」で、臨機応変の対応のためには法令の修正が多くなってしまう。1955年以降、50年代以降の、国会の答弁の積み重ねがあるので、自衛隊法を「ネガ・リスト」にはできない。

    【作者コメント】

    軍事的紛争地帯におけるあらゆる事態に臨機応変に対応するためには、ネガティブリストによる法制が必要不可欠であるから、主要国はそうしているのではないか。

    自衛隊がポジティブリストでやったら危機的事態に臨機応変に対応できないから、他国以上に危険ではないか。憲法の制約を言い訳に、あらかじめ危険とわかっている任務に自衛隊員を送るのは愚策である。今の法案で自衛隊を海外に送ろうとする人たちは、「憲法改正」の方向に進めるためには、多少の荒療治(自衛隊員の犠牲)はやむを得ない、と考えているのか。

    ◆自衛隊員のリスク

    【宮家参考人】

    自衛隊員は国民の生命と財産を守る、そのためのリスクをとるためのプロフェッショナルであり、訓練を行い、装備と情報をもって仕事をする専門家集団である。消防隊員と自衛隊員、どこが違うか。

    【作者コメント】

    適切な準備や対応をしたうえで、避けられないリスクがあるならば、それは仕方がない。しかし、今の法案は、適切な法整備がされていない中で、自衛隊を紛争地帯の後方に送るというものだ。不十分な安全対策、犠牲者に対する補償の欠落を埋めるための、改正案、修正案の審議にもっと時間をとるべきだ。

    訓練や装備や情報によって人の死が避けられるならばいいが、戦争のプロ集団である米軍でも多数の死者やトラウマ自殺者が出ている。自衛隊員だけ死者を出さずに活動できる、という自信はどこからくるのか?それとも、軍事行動に殺傷はつきものだから、自衛隊員の死亡リスクは当然、ということか?日本が戦後70年、一人の戦死者も出さずに来たのに、ここでその記録を破るのか。

    消防隊員は人を殺し建物を破壊する行為に協力しないが、自衛隊員は人を殺し建物を破壊する行為に協力する。失わずに済む人命を失わせる試みに加担する点が、消防隊員と異なる。誰でも、生きてさえいれば、新しい時代を、子や孫と過ごす時間を持つことができるのに。

    ◆集団的自衛権に関する議論

    【宮家参考人】

    安保を批判的に論じる人ほど軍事問題、安全保障の問題について知識が充分でない。

    【作者コメント】

    日本は平和憲法の下、自衛権以外の武力の行使、国際紛争の武力による解決を禁止してきたから、軍事研究、武力による国際紛争解決の手段について、必死に研究する必要はなかった。だから、知識が十分でないのは当然だ。平和的活動面では知識も経験も十分だと思う。

    「武力行使との一体化」が争点となるのは、日本だけ、日本以外では通用しない議論。「違憲・合憲の最終的判断を下すのは最高裁」であり、憲法学者、法制局長官にはその権限はない。

    「武力行使との一体化」議論では「武力」の定義もなく、「一体化」の定義もなく、言葉だけが独り歩きしている。「武力」である米軍の空母、潜水艦、戦闘機、戦闘車両等を自衛隊が防護し、弾薬を輸送、供給、戦闘機に給油し、そのようなメインテナンスを受けた米軍の戦闘部隊が戦場に行って戦闘行為をする。米軍と自衛隊が一つのチームとして軍事行動するから、「軍事行動との一体化」であり「軍事力を用いた紛争対応に日本が参加する」と言えばわかりやすい。 しかし、この表現を認めれば、憲法違反である。

    「軍事力を用いた紛争解決」になるならば軍事力もいいかな、(ヤマトもガンダムもマクロスも戦っているし・・)とも思うけれど、現実の世界では、軍事力が紛争解決どころかエスカレート、泥沼化するケースが少なくないことを思えば、解決から遠のく「紛争対応」としか言えない。

    ◆先制攻撃

    【宮家参考人】

    法案に批判的な憲法学者らは、「日本への武力行使への着手に至る前の武力行使(先制攻撃)は、たとえ国際法上、集団的自衛権の行使として正当化されるとしても、日本国憲法に反する」と説明している。これは20世紀の戦争概念で今は通用しない。21世紀の戦争概念は、宇宙にも、サイバーにも広がっている。

    【作者コメント】

    宇宙やサイバーの戦争と、日本からの先制攻撃の必要性の関連が論理的に理解できない。
    集団的自衛権で先制攻撃が認められる、って、さらっと言ってるけど、これはミスリードだ。

    第51条〔自衛権〕
    国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、 個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。

    これを素直に読めば、自衛権の行使は「武力攻撃が発生した場合」に限られ、つまり先制攻撃は認められない。 しかし、「自衛のための固有の権利は武力攻撃が発生した場合に限られたものではない、自衛権は重大だから条文を限定的に解釈すべきだ」という、ご都合主義の先制攻撃肯定論もある。 結局、国際法上、集団的自衛権で先制攻撃が認められるかどうかの定説はない。(リンク:先制的自衛権

    ◆日米安保条約

    【宮家参考人】

    日本が外国から武力攻撃を受けた時に、アメリカは日米安保条約によって日本を守る。これが集団的自衛権だ。米国に守ってもらう根拠となる概念(集団的自衛権)を否定的イメージでとらえるのはおかしい。

    【作者コメント】

    <リンク>米国は日本を守らないと言っている。

    日本は日米安保に従って、米軍に基地のための土地や基地維持のための資金、様々なサービスを提供している。これは、有事の際に防衛してもらうための「保険料」であった。しかし、最近、東アジア有事が起こりそうな気配になったら、「米国は日本を防衛すべきでない、防衛してほしかったら協力しろ(保険料値上げ、後方支援で支払え)」と。そういう保険会社があれば、詐欺といわれるよ。

    国が守れなくなっているのか?

    【宮家参考人】

    7月の衆議院の特別委員会で、岡本行夫氏 は、「国際安全保障環境の変化を見れば、法制局が、直接的な国土防衛以外の行為は〔すべてクロ〕と判断してきたことが、果たして、海外で日本人の生命と財産を守るために適切だったのか、考え直す時期だ」と述べた。私も同感だ。

    【作者コメント】

    法制局は憲法の枠内で仕事をし、憲法が海外派兵を禁止しているのだから、これまでの法制局の判断は適切だったと思う。

    戦後70年、この憲法に従い、日本の政府の行為によって海外の誰一人として殺していないし、自衛隊員に戦死者もいない。戦後70年の波乱に満ちた危険極まりない国際情勢のもとでも、日本はこの憲法下で平和を維持してきた。 私は、海外で日本人の生命と財産を守る上で法制局や歴代政府の判断は適切だったと思うが、もし考え直すべき問題があるなら、具体的に示してほしい。

    憲法があるから国家があるのではありません。国家を守るために憲法があるのだ。戦争の形態が根本的に変化した21世紀。憲法学者はなお、まだ古い憲法の解釈に固執をする。しかし、もしそれで逆に国が守れなくなってるんだとすれば、それはいかがなものか。

    憲法に固執すれば国が守れなくなる「とすれば」、という条件文は、筋が通っていない。私は「憲法に固執しても国は守れる」と思うし、今まで守ってきた実績もある。憲法学者が現行憲法を研究するのは当然。憲法改正の規定もあるので、必要ならば立法権のある国会で議論し、手続きにのっとって作業すればいい。

    立法府がつくる法律を、行政府は執行する。それが憲法や法律に反するか否かの判断は、最高裁の仕事であります。

    最高裁は「訴訟事案に対してしか判断を示さない」「高度に政治的なことは判断しない」、憲法の監視役としては不十分だ。憲法裁判所を作れ、という議論もある。どうして作らないのか。安保法案の根拠とされる砂川事件では、米軍駐留に対し地方裁判所がごく素直に違憲判決を出したのに、<リンク>最高裁判長長官が政権や米軍と癒着し(司法権の独立の侵害)、「外国の軍隊は戦力にあたらない」と合憲判断を出したうえ、「日米安全保障条約のように高度な政治性をもつ条約については、一見してきわめて明白に違憲無効と認められない限り、その内容について違憲かどうかの法的判断を下すことはできない」(統治行為論採用)という最高裁の職場放棄の態度を明確にした。

    本当に現行法制だけで21世紀の国際安全保障環境の下にある日本を守れると思っているのか。現行法では対応できない種類の危機が生まれつつある。それでも「この法案は不要だ」と考えるか。

    私は逆に、この安保法案が通れば、国が守れなくなると考えている。<リンク>中谷大臣は、自衛隊のリソースを増やさずに、海外に派兵すると答弁している。ならば必然的に、自国防衛が手薄になる。「国を守れる防衛のための法案」を作ってよ。

    今の法案は、日本の戦争参加の機会を増やし、報復による日本本土への攻撃を誘発し、質量ともに戦争状態を増やすものだ。法案改正後、すぐに戦争が起こるとは考えていないが、5年後、10年後、世界で軍事衝突が起こったとき、その最前線に陣取る米国のすぐ後ろに日本がいる、という状況は、平和憲法をもつ日本としては超はずかしい、ありえないことだ。

    世界は危機に満ち溢れているが、日本が武力を保持せず使用しない、という立場を貫いていれば、それが抑止力になる、少なくとも報復攻撃を受けずに済む。ISILの場合でも、日本国内では<リンク>報復テロ攻撃は発生していない。ISILによる後藤さん、湯川さんの殺害は、<リンク>安倍総理の「ISILと闘う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」発言がが原因であった。

    「武力行使をしない国」は20世紀の戦争概念にもなかった。世界のどこにもそんな概念はない。それは世界では非常識で日本は特別なんだ。日本はその非常識をあえて選び戦後70年を生きてきたんだ。

    参議院は良識の府だ と信じています。党利党略ではなく、机上の空論ではなく、現実の世界の実態に即した、本音の政策議論をぜひ、お願いしたいと思います。

    同感です。

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